
コロナショックで一服したとはいえ、コンサル市場が継続的な成長と急速な変化を続けています。しかしながら一時のコンサルとは似ても似つかぬ、SI下請け、現場常駐、質の低い社員、不公平な昇進など、”ブラック企業”ぶりに辟易としているコンサルタントも増えています。2019年に日本中を熱狂させたラグビーニュージーランド代表よりも”オールブラックス”という称号が似合いかねない、そのブラックな実態と、転職適性を論じます。
2nd Tier コンサルファームの職場環境は、ブラックどころか、オールブラックス?
別にドヤ顔で”上手いこと言うたった”と勝ち誇るわけではないが、当セミナーにキャリア相談に訪れるP社、D社、B社といったいわゆる総合系、ともすれば3rd Tierのコンサルファームは、ほぼ共通の課題と、ファーム特有の課題を抱えている。
以下では名前は有名だが、実質3rd Tier扱いされている大規模ファームの実態と、そこからオファーをもらった時、ないし転職志望するときの妥当性判断に、ご参考いただければ幸いだ。
早速、その典型的特徴を紹介しよう。
1.常駐型SI下請け案件が多い~上流の戦略ではなく、下流のエクセキューション
グループ内に戦略を担当するファームがあり棲みわけができていたり、SI出身でSIerの下請け案件からコンサルファーム化してきた経緯があったり。
また戦略案件は取れないから、量と期間で売り上げを上げる「常駐モデル」がビジネスの大半になったり、売り上げをつくりやすい大規模システム導入プロジェクトのセールスが多かったりと、コンサルとは言うものの大手企業の戦略系案件などほぼないことが多い。
代わりに、クライアント先で既に決められた戦略のエクセキューション要員として常駐する、「高級派遣社員化」していることが多い。これが嫌で上位ファームへの転職を志望する人が多いのである。
2.専門性が身につかない~なんでも安価でスコープ無視して売り上げ追求する三流ファームの実態
安価なケースでも、実は何のノウハウがないプロジェクトでも、スコープを区切らずひたすら請け負うので、まさに「上位ファームがやらない仕事を引き受ける何でも屋」みたいになっているファームも存在する。
また急な拡大局面で、ファーム自体が組織化がなされていないことも多く、マッキンゼーなど大手トップティアファームとことなり、専門性を磨ける組織構造になっていない。
(何がやりたいのかを知るために様々なプロジェクトを経験するのがコンサルの醍醐味だが、やりたくないのが確定しているつまらないケースに常駐で長らく送り込まれると、貴重な20代、30代前半を過ごすうえで長期的なキャリアダメージが大きい。)
3.上司・同僚の質が低い~組織の急拡大に伴う、採用ハードルの低下が招く質の低下→優秀な人から抜けていく
常駐案件の急増とRPA導入ブームでビジネス自体は急成長しており、コンサルタントの稼働率は9割を超えていることが多い。結果的に多くのコンサルティングファームが、採用ハードルを引き下げて大量採用を続けている。
実際のところ、新卒でもいわゆる”良い大学”であれば大した準備せず、ケース面接もボコボコでも、本人が驚くくらいあっさりと内定をもらえたりする。
結果的に古巣社員で採用が厳しかったころに入った人々と質の差が開いており、できる人が、嫌気がさして辞めていく事態につながっている。
4.中途半端に高めの給与~コンサル転職後の昇給は数百万、だけどそれでいいのか問題
これがトリッキーなのだが、給料は中途半端に瞬間風速高いのだが、長期的には損していることも多いという点である。
中途半端というのは、20代後半で800、30で1000万声、30半ばから後半で1500万。これがDやPといった”グループの中での比較的上位ファーム”であれば、2000近くになる人も少数いる。
しかし”瞬間風速”というのは、コンサルは走り続けるモデルなので長期間持続不可能なことと、40代、50代でコンサルをずっとやり続ける人などほぼいないので、長くは続けられないということだ。
そうなってくると、商社などに行って仕事は暇なのに安定的に2000万強長らく入ってくる方が、生涯賃金はよっぽど高いことも、覚えておきたい事実である。
5.研修など人材投資が低く、新卒優遇
また中途の大量採用と大量離脱が続く中、日本の伝統的風土もあり新卒が優遇される傾向にある。
マッキンゼーやベインなどトップティアファームの人々が”うちの会社は転職した自分にも、人材投資、研修、教育機会が半端ない”と会社にこの点感謝している人が多いのに対し、ここで取り扱っているファームに中途転職した人々は、基本的にOJTという名のほったらかしだと嘆息することも多い。
総じて中途は「人手不足の中、質を下げてでも入ってもらった、どうせすぐ出ていくんでしょ」呼ばわりされている人も、少なくないのである。
それでもコンサル転職したい人のために、後悔・失敗しないためのTips
これだけ「オールブラックス」の「ハカ場」ぶり(やったね!)を説明しても、それでもコンサルへの思いを断ち切れない方もいらっしゃることだろう。
MBBはもちろん、ATカーニーやベルガー、ADLにも落とされてしまった。それでもコンサルを経験したい―そんなときに、数多くの人にコンサル経験の機会を与えてくれるのだから、コンサルで得られるものと在籍する期間に納得している人は、数年経験してメリットが多い人もいることだろう。
それでは、本コラムで紹介したコンサルファームではない、と断っておいた上で、いわゆるTop Tier 戦略ファームでない多くの会社の中から、以下の3社を選ぶ相対的メリットを最後に書き記そう。
デロイト
デロイトはグローバルファームであり、日本での歴史も長い。また現場でのSI下請け常駐プロジェクトばかりではなく、より上流のコンサル案件もあるし、グローバル案件もある方だ。
近年ではトーマツベンチャーサポートなど、グループ会社で若手がリーダーシップを発揮し、大企業とスタートアップをつなぐファームとして存在感を発揮してきた。
またすぐに辞めてしまうが、優秀な人材が多いことでも定評のあるファームである。
PWC
グローバル展開なので海外案件が比較的豊富。巨大企業であり案件の幅も広く、トレーニング機会も多く、自分が志望するケースに手を上げる機会が多い(アサインされるかどうかは別問題だが)。
クライアントも幅広く、日本を代表する大企業が多い。またStrategy & の価格帯に合わない戦略案件はPWCが拾うことになるので、戦略プロジェクトも経験できる。
巨大組織なので社内政治の激しさと、それで優秀な上司が失脚することでも有名だが、そんな社内政治のダイナミズムも、政治的センスを磨きたい人にとってはよいOJTになるだろう。
ベイカレント
珍しくドメスティック内資企業であり、基本は常駐インプリメンテーション案件だが、上層部はマッキンゼーやベインからのコンサルタントをお金を積んで招聘しており、一部トップティアの人材と働く機会もある(ただ、MBBの中でトップティアなら多少お金積まれても転出しないので、その事情は押して図るべし。)。
セールス部隊とコンサル実行部隊が分かれているので、営業苦手で”現場でのエクセキューションに特化”がしたいのなら、グローバルヘッドクォーターへの上納金がなくローカル本社で動けることも含め、メリットがあるのである。
以上、トップティアとTier2ではない大規模コンサルファームに転職志望されるときの、失敗しないための実態把握と、それを踏まえた上での、「これら実態を理解して納得したうえで入るならタイプによってはお勧めしたい」”相対メリット”をまとめさせていただいた。
コンサル転職時に、少しでもご参考いただければ、幸いである。