
プライベートエクイティファンドには、ハーバードやウォートンMBA、前職はゴールドマン戦略投資部かIBDないしマッキンゼーで、昇進は動機で一番早かったです、みたいな候補が沢山履歴書を送ってきます。しかしながら面接であまりにも残念な質問を連発し、悲惨な心象を残してしまう「本来優秀なはずなのに実力を発揮できない、残念なPE転職志望者」も。それ聞いてどうするの、という質問や、全く自分のアピールに繋がらない質問、相手が気持ちよく語れない質問や、相手に興味を沸かせない質問は、なんのプラスにもなりません。
プライベートエクイティ面接でこれだけは絶対ダメ!なNG質問集
プライベートエクイティ転職をしたい読者なら、「プライベートエクイティ特有の面接のコツ」などがあるなら聞きたいはずである。
筆者の体験でいうと、特に即興力の試される「なにか他に聞きたいことはありますか?」という問いへの回答が重要と考える。あなたが「得点」できないのはよいとしても、即興がゆえに「失点」する可能性が極めて高いからだ。
そこで本コラムでは、プライベートエクイティ内部者として幾多の採用面接をしてきた筆者が、「NG即興質問集」とそれがNGである理由につき、ここにまとめる。
NG質問その1:「(面接官に対し)なぜ、プライベートエクイティに入社されたのですか?」
NG理由:「なにか私に聞きたいことないですか?」とたずねられ、その面接官の人生の功績や軌跡を気持ちよく語ってもらい、それに乗じて自分に対しても「気持ちよく」思ってもらおう、という魂胆でこの質問をしたくなる気持ちはわからないでもない。
しかし、これは積る話で貴重な時間の割かれる大きなトピックであるうえ、「大きなお世話」と感じる面接官もいる。そもそもこの時間は、あなたを面接する時間なのだ。従って、よほど自然にその会話に流れない限り、この質問は控えたい。
NG質問その2:「新しく入社する社員になにを期待されますか?」
NG理由:プライベートエクイティには、そもそもやる作業はあまりない。メインの仕事は「株式の長期保有」だし、ファンドの成功に必要な究極の能力は「案件発掘力」と「資金調達力」につきる。
そもそも未経験転職者にこれらは期待できないと分かっているため、採用側としては、転職組が社内で自発的に経験を積み、できるだけ早くこの2つができるように育つことを願う。逆にそうならない限り、あなたは「いつでもコストの安いジュニアとリプレースできるモニタリング担当者」として位置付けられる。
面接前からこの本質を理解し、プライベートエクイティ入社後は自発的に成長する主体性と行動力があれば、この質問はしないだろう。かかる背景から、この質問はNGだ。
NG質問その3:「もうじき次号ファンドの調達は開始されますか?だとしたら、サイズはどれくらいになりそうですか?」
NG理由:ファンドレイズのタイミングは、過去のレイズの公表時期から容易に算出できるので面接前から自分の頭に叩き込もう。
プライベートエクイティ投資は基本10年がファンド期間で、ファンド設立後最初の5年が投資期間である。なので、一度集めたコミット額は、ファンド設立から5年以内にキャピタルコールをかけて投資しなければならない。そしてその5年が経過するかその前年頃に、次号ファンドの調達が開始される。
調達目標額も、実際クローズするまで回答しづらい質問だし、回答できたとしてもそこからインテリジェントな会話に繋がる可能性は、あなたが未経験者であるほど、低い。
ファンドサイズは、前号ファンドのパフォーマンス、前号ファンドポートフォリオのExit状況、外部マクロ環境、個別LP側の事情、競業他社の活動状況、などさまざまな要因によって左右される。また、コミットは複数回にわたって半年程のスパンで確定契約書類をまき続け、これをマルチクロージング方式という。
すべてのコミットメント契約がクローズして、初めて今回の新ファンドの総額はいくら、といえるのだ。なので、そのあとに続く質問や会話の用意がないなら、次号ファンドサイズの質問は控えたい。
なお、2019年2月7日付日経新聞朝刊「国内ファンド、買収攻勢」という記事では、主要国内プライベートエクイティの調達目標額が記載されている。これを参照すると、基本的に各社は前号ファンドより50%~100%大きめのファンドサイズをレイズして対外的にモメンタムを示す、という不文律を踏襲しているのがうかがえる。参考にしてもらいたい。
NG質問その4:「プライベートエクイティにこられて、やっぱり仕事は前職より楽になりましたか?」
NG理由:誰も、お見合いで「私は玉の輿に乗れますか?」と聞いてくる花嫁を娶ろうとおもわない。こうして文字にすると誰でもNGなのが見て取れると思うが、この類の質問は意外に多い。楽な仕事に興味がある、と言っているのに等しいので、これはNGだ。
良い質問の例
良い面接質問は、あなたの「当事者意識」がひしひしと感じられる質問内容だ。
自分が実際にプライベートエクイティに入社したら、既存のポートフォリオをみてどう感じているだろう。自分はどの産業セクターでソーシングチャンスがあると考え、それに対し会社はどうサポートしてくれるのだろうか。自分の所属するプライベートエクイティファンドが競合他社を圧倒するには、これから何をどうすれば良いのだろう、といった具合の当事者意識だ。
だからこそ、「昨年実行されたXYZのMBO案件は、プロダクトを巡る市場の先行きが不安視されるだけに驚きました。老舗としての看板以外で、価値あるアセットや伸びしろがあったのですか?」
「日本のプライベートエクイティは、これまで投資機会は少子高齢化による事業承継と系列解体によるスピンアウトにあるといってきましたが、後者は一部を除きあまり実現できてないように感じます。今後も海外LPは、系列解体ストーリーは投資アングルとして訴求してKKR以外でも信じてくれるものなのでしょうか?」
「テクノロジー革新スピードが目覚ましく、日本のプライベートエクイティもコスト削減でEBITDA捻出するに加え、ITによるアルファの捻出も課題ではないか、そうしないとこれからはファンド期間中ユニコーンベンチャーにディスラプトされる場合もあり得ると思ったのですが、貴社はいかがお考えでしょうか。」
こういった当事者意識溢れる質問なら、面接官を刺激し、あなたがすでに社員であるかのような自然な空気を醸し出す。その当事者間らしい空気こそ、面接官にあなたと仕事をしたいと思わせる。