遠距離キャリア!?~志望動機の達成にコンサルを選ぶと、凄い遠回りになるリスク

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コンサル志望の方の裾が、非常に広がってきました。以前は経営者志望、投資ファンド志望者が多かった戦略コンサル志望者プールですが、いまでは非効率な医療システムを変えたい、非効率な研究開発体制を変えたい等々、あらゆる分野の組織改革・戦略策定を学ぶためのコンサル志望者が急増しています。今回は、日本を技術立国にしたいと考える方からのご相談です。技術立国に向け、研究者としてか、コンサルタントとしてか、どうアプローチすべきか、というメーカーでの技術職かコンサル志望の東工大の方からのご質問にお答えします。

◆Question (東京工業大学大学院 理工学研究科 KTさんより質問)

現在、理工系の大学院で原子核工学専攻に所属しております。

私の専攻の人は多くの人がメーカーに進みます。私自身も科学技術立国 の日本が発展して欲しいと考えております。その意味で今までメーカーを志望しておりました。

しかし科学技術立国になるためにはビジネスの仕組みも必要と考えて戦略コンサルタントを志すようになりました。

しかし最終の目的である日本を科学技術立国にしたいという夢に違いはありません。

以上のように考えた時にはたして技術の道に進むべきなのかそれともコンサルタントになるべきなのかどちらの方が日本に貢献出来るのか知りたいです。

◆Answer:需要がないところに投資(研究開発投資)してしまう問題の解消は、技術立国の重要な基本

問題意識溢れるご相談、ありがとうございます。技術立国とは、技術で生産性を高めてそれを輸出し、経済成長を成し遂げる国という意味でしょうか。

まず日本の科学技術政策の問題点として、需要がない、研究者の趣味のような投資があまりにも多いことが挙げられます。研究開発投資が巨額に上るものの、その効率性が疑問視されているのです。

たとえば特許の数は確かに多いですが、それが収益に繋がっていないケースがあまりにも多く見受けられます。しかも同じことが、私が知るだけでも20年くらい連続でいわれています。

これは市場の需要とは隔離された、いつぞやのガラパゴス携帯の例もその一つかと思いますが、せっかくの高度な技術力がお金に繋がっていないのです。

「需要がないところに巨額の投資をしてしまう問題」は、R&D投資額がサプライサイド強化に結び付かないという意味で、研究者の所得を増やして終わっていることを意味します。

(お金にならなくても研究開発予算が潤沢に張り付けられるので、会社の業績や国のGDPではなく、研究者の自由度を重視すれば、このやり方のほうが研究者的にはハッピーではあるのですが)

「遠距離キャリア」な志望動機~メーカーの一研究員として出来ることの限界

では、技術開発を経済成長、つまり需要を背景とした生産増大につなげるにはどうしたらよいでしょうか。

この目的のためには、冒頭でおっしゃられた一科学技術者として取り組まれるより、「研究開発投資の効率化を促進する仕組み」をつくるアプローチのほうが、マクロ経済へのインパクトは当然、大きいことでしょう。

この意味で、相談者様がお持ちのような問題意識であれば、一研究者としてメーカーに入るのも、数年間その実態と問題点を知るためという目的意識であればよいとは思います。

しかし継続的に一メーカーの研究職という立場で長年勤続してしまうと、国単位での研究開発投資生産性向上という目的には、かなりの「遠距離キャリア」であるのは否めないところです。

自分の適性次第で、進むべき道は異なる~科学技術・医療分野で研究者がコンサルを目指す事例が急増中

上記問題意識の解決に繋がるキャリアパスは、多種多様であり、必ずしもコンサルかメーカー研究職かの二択ではありません。

技術力の資金化という意味ではメーカーの研究室で偉大な発明目指して研究に励む道もあれば、政府で科学技術振興政策を推進するというパブリックポリシーの道もあれは、ベンチャーキャピタルで有望な技術を有する日本企業をビジネスとして成り立たせ、海外に打って出るというインキュベーションの道もあれば、アーサーディーリトルなど知的財産戦略に強いとされるコンサルティングファームでクライアント企業の特許の棚卸→評価→収益化などの戦略を補佐するという道もあるでしょう。

ただしこれらは向き不向きの世界ですので、自分がどの分野ないし組織であれば、他の人に比べて比較優位があるのかを考えることが大切です。いくら得意でも、さらに得意な人がたくさんいたら、自分の付加価値はないのです。

逆に自分がたいして得意でなくても、他の人がもっと下手であれば、ご自身の社会的付加価値が大きくなるのです(もちろん、それを自分が楽しめていることが、自己実現キャリアかどうかの判定には重要な要素となりますが。)

自分に向いている仕事を理解する「自己認識の深さ」が重要~自分よりも得意な人が数多くいる分野を仕事にしてはならない

くれぐれも、ご自身はどのような強みがあり、何にフィットがあるのかを深く考えたうえで自分で決断しましょう。

ビジネスや組織の戦略など商売要素を配した純粋な基礎研究に没頭したいタイプの方は研究者がその特性を生かせると思います。

逆にビジネスとして回る仕組みを作って有望な技術をサポートしたい、というのであればコンサルティングの方が向いています。

また自分でお金を張って、人脈を駆使してポートフォリオ企業の技術力で稼ぎたいというのであれば、テックファンドへの道を目指すのも考えられます。

なお医療分野などは単なる金融バックグラウンドの人では製品の理解がおぼつかないため、医薬分野でのドクターを持っている人たちがヘルスケアファンドなどを立ち上げ、活発にビジネスを展開していますので、これもご参考頂ければ、と思います。

御相談者様のような研究開発畑の方が、経営マインドと経済貢献マインドを強く持って「仕組みづくり」を目指されるキャリアビジョンを、心から応援したいと思います。

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