
投資銀行への志望動機、強みの説明の好例をまとめました。京大生の本格ボクサーによる、モルガンスタンレーへの自己アピールです
京都大学 法学部 氏名:KS
第1志望;モルガンスタンレー証券
①何故この業界か?
投資銀行という業界、中でも、債券業務こそが、最も自分の強みを生かすことが出来る分野なのではないか、と考えているからです。
具体的には、債券業務というものは、24時間体制でのリスク管理が必要となりますし、また巨額・長期の取り引きを行うため、大きなリスクを伴う業務だと考えております。
そうであれば、そこでは、『体力』『精神力』『忍耐力』『頭の持久力』『迅速かつ正確な事務処理の能力』と言うものが、必要不可欠なものとなってくると思うのです。
他方、私は在学中にボクシングのプロライセンスを取得し、1年間休学をして、プロとして活動しておりました。
また引退後、司法試験の勉強にシフトし、一年間、ひたすら勉強に打ち込みました。その結果、択一式試験において上位5%の成績で合格をすることが出来ました。
このように、私は、ボクシングによって、『体力』・『精神力』・『忍耐力』、また、司法試験によって、『頭の持久力』『迅速かつ正確な事務処理能力』といったものを人一倍、磨いてきました。
以上より、債券業務こそが、私が学生時代に磨いてきた強みを、最も生かすことが出来る業務であり、企業価値の向上のために、私が大きな一助となることが出来る分野なのではないかと考えています。
解説
彼は志望動機を聞かれただけなのに、巧みに自分の強みの説明に話の中心をシフトしている。
その内容は抽象的なポイントはオーソドックスだが、具体例が非常に強く。他の候補者を大きくアウトパフォームしている。面接のテクニックのレベルではなく、自分の実績を普通に話せばどこからでも内定を貰うであろうStrong buy candidateのお出ましである。
多くの志望者が「迅速な処理能力」「持久力」等をその言葉だけでアピールしてくるのに対し、同じコンセプトを打ち出すにしても、その具体例で大きな差がついているのである。
かつ、業務内容を鑑みて必要な能力を論じ、それを自分が持ち合わせている旨を具体的に説得力をもって説明できている。
②なぜ当社か?
② 御社で、キャリアを積むことに、大きな魅力を感じるからです。
御社は、世界の金融市場においてトップクラスに位置する企業であり、そこでは、常に、優秀な社員相互間での切磋琢磨や、真に厳しいクライアントの目があると思うのです。
そういった厳しい環境の中で、経験をつむことは、最もスピーディーに、自分のキャリアを積むことが出来ると思いますし、また、自分の提供する付加価値の成果が真に問われる場であると思います。
私は、そのような厳しい環境で、仕事に励むことに大きなやりがい・魅力を感じます。
以上より、御社において、業務活動に携わることを強く志望いたします。
解説
ここで述べられていることは極めて平凡であるが、その圧倒的実績とユニークさからstrong buyのついている彼は、多少つまらない応答があったところで大したマイナスにはならない。
自分の強みと弱み
強み
1、 精神力の強さ
既述の通り、私は、ボクシングのプロとして活動し、またその後、司法試験の勉強に打ち込みました。ボクシングでは、毎日、厳しい練習をこなし、自主的な10キロのロードワークも欠かすことは出来ません。
更には、スパーリングの恐怖というものも計り知れません。
また、司法試験の勉強は、1日平均13時間を越えますし、試験では失敗は許されません。
そういった環境の中で、精神力の強さと言うものは特に磨き上げられたと感じております。
2、 正確かつ迅速な事務処理能力
司法試験の中でも、特に択一式試験では、210分のテストの中で、膨大な文章を読み、それを的確かつ迅速に処理できなければ、合格することは出来ません。
そういった試験において、上位5%に入る成績で合格を果たせたことは、自分の強みとして迅速かつ正確な事務処理能力が、しっかり身についていたことによるものだと考えております。
3、 頭の持久力
既述の通り、司法試験の勉強においては、1日13時間以上の勉強を必要といたします。
それ故、この1年間で知的持久力と言うものは、相当鍛え上げられたと思っております。
4、 体力
これは、ボクシング・司法試験に共通して、最低限必要なものですし、常にそういった場に身をおいてきたため、体力というものには絶対の自信を持っております。
5、 積極性
私は、ボクシングや司法試験といった、各分野で最もストイックと思われるフィールドに、身を投じてきました。それは、大きな積極性・行動力の現れだと思います。
そして、以上のような、自分の強みは、投資銀行業務において、大きく役立つものになると確信しております。
弱み
ひとつのことを成し遂げたときに、自信過剰になってしまう事。
私は、択一試験に合格したとき、ボクシングで勝利を収めたときに、自信過剰になってしまうという事がありました。その結果、その後の試験や次の試合では、いい結果を残せませんでした。
ただ、現在は、そういった経験から、何事も、詰めこそが大事であると言うことを学び、日々そういった詰めの甘さが出ないように心がけております。
あなたを雇えばどんなメリットがありますか?
『結論から申しますと、御社の企業価値向上のために、私は大きな一助となることが出来るのではないかと考えています。
具体的には、企業価値を高めていくためには、一人一人が優秀であり、かつチームとしても優秀であることが必要となってくると思います。
私が学生時代に磨いてきたスキル、及び、チームにとよく馴染み、仕事を楽しめる、持ち前の明るさをもってすれば、個人としても、チームの一員としても、御社の企業価値の向上のために、大きな助けとなりうるのではないかと考えています。』
解説
ボクシングネタ、司法試験ネタばかりで食傷気味になりそうなところ、司法試験に受かるということが何を意味するのかを、志望先で求められる能力に繋げて説明できている。
また、明るいチームワーカーであることを伝えているのも、重要なポイントである。
総評
さて、彼は司法試験の一次試験をトップ5%で通っていることと、プロボクシングに通っていることから、既に他の候補者を大きく引き離している。実際見かけもよく、はつらつとした彼は、外資セミナーに来なくても楽勝で複数の内定を獲得したことであろう。
正確さ、持久力、体力、積極性など、投資銀行やコンサルで求められる能力のアピールポイントは極めてオーソドックスであり、誰でもこれらのポイントに訴求しようとしてくる。
しかし他の東大生/京大生がかなわないのは、これら何を話すにしても、具体例を司法試験やプロボクシングという「困難さと実力を際立たせる実績」の中から繰り出すことができることである。
ここまでくれば、貴方を雇う理由は何か、や弱みは何か、等の質問でいまいちなことを言っていてもノープロブレム。たまに面接指導者が「これを言ったら一発アウト」みたいな馬鹿なことを言う人がいるが、面接は総合的で、アナクロ的で、感情的で、直感的な好き嫌いが大いに働く世界である。面接は決して0と1の世界ではない。
彼は総合的に、明らかに「この人を雇えば役に立つ上、他のトップクラスの学生に対し抜きん出ており、部下にして可愛げがあるであろう」という要素を申し分なく満たしている。