ゴールドマン・サックス証券志望者、頭いいのに面接が残念な面接パターンとは?

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ゴールドマン・サックス証券への東大院生の志望動機、強み、弱みの事例を紹介し、解説します。

1 なぜこの会社を志望していますか?

候補者回答

世界の投資銀行の中でもトップであり、社員の方が自信に満ちている、その環境で自分を鍛えたいと思ったからです。

自信を感じさせたのは、大学キャンパス内で開かれたパネルディスカッションや、御社で行われたオープンデーでのお話でした。

グローバルな競争を日々重ねて、勝利している御社の特徴だと考えました。

強いだけでなく、勝利を素直に喜ぶことができる、御社の文化に憧れます。

解説: 薄いことを言ってしまっている

あまっちょろい、表層的でつまらない話をしている。これだけ見ていると、会社の宣伝に素直にだまされる、数いる純粋な子羊、という感じである。

勝利を共に喜ぶ文化に憧れる、というのも、白々しい印象を与えてしまっている。

2 その会社に活かせる、あなたの強みは何ですか?具体的にお答え下さい

候補者回答

精密な先見性と強い知的好奇心、そして高効率の学習姿勢です。

 現在、私は生物学を研究しています。しかし、大学入学までは生物を学んだことはなく、電子工学のエンジニアになろうと考えていました。

しかし、「ドリー」のクローン技術やゲノム科学が発達して、知的資源が今後大量に投入されていく生物学が必ず発展する、面白くなる、と予測し、教養課程の後、生物学科に進学しました

 進学後も、漫然とした勉強ではありませんでした。生物学を主専攻で学ぶのと並行して、夏季休暇を返上してバイオインフォマティクスを副専攻で学びました。

バイオインフォマティクスは、生物学分野にコンピュータ科学の成果を応用する学際的分野です。

そして、生命が誕生して以来40億年の歴史がいま初めて理解できるようになったことに興奮しました。

解説:Fast Learner アピールはよいが、ゴールドマンサックスの仕事への連関性が欲しい

ゴールドマンサックスで重視されるFast Learner, 知定期好奇心をアピール出来てはいるが、ゴールドマンサックスの仕事に繋がるポイントまでは説明できていない。

ここまで聞くと、バイオインフォマティクスの分野に進まれた方が輝かれるのでは、という印象を抱いてしまう。

できればこの先見性の話を、「将来どのような分野に需要が強まり、マーケットが大きくなるかを考えるのが好きですので、この意味で世の中の資金が将来集まる分野への先見性が必要であるIBDに、、」などとつなげても良かった。(まだこれでも無理があるが。。)

3 あなたの弱みは何ですか?

候補者回答

アカデミズムの外に出たことがありません。アルバイトをしたことも、インターンシップに参加したこともありません。

「学業・研究に専念すべき、それが自分がなせる最高のコミットメントである」と考えてきたからです。

学費は奨学金を充てています。それ以外の生活費は、親からの仕送りでまかなっています。

解説: 正直に弱みを開示していない感が出てしまっている

「学業・研究に専念すべき、それが自分がなせる最高のコミットメントである」と考えてきたからです。」は結構なことなのだが、質問の意図である「自分の弱みを深く認識しているか=Self Awarenessの深さ」「正直に自己開示するか」というポイントを外して、当たり障りのない、弱みでもなんでもないことを話して終わっている。

4 いままでの人生で、最も大きな達成事項は何ですか?

候補者回答

20○○年○月○日、「○オスを決める遺伝子」を発見しました。得られたDNA配列をモニタで見て、思わず「出た!」と叫びました。

理化学研究所と東大を往復し、性遺伝子の世界的権威と日々議論を重ね、睡眠時間は実験操作待ちの2時間のみ。

半年以上20回を超す失敗にめげず、既存研究が見落としていたレバレッジポイントを開拓するため、日々挑戦を止めませんでした。来年の国際学会で、世界の注目の的となるのは間違いありません。

解説: この素晴らしい実績のストーリーから、他の面接質問への回答も組み立てたかった

睡眠時間不足でも頑張り、没頭して打ち込むさまは、ゴールドマンでの仕事をこなせるハードワーカーぶりをイメージさせてくれる。

この実績は素晴らしいのみならず、候補者の志望業界に直結する強みのアピールになるので、このストーリーから諸々の面接回答を組み立てたいところである。

5 いままでの人生で、最も難しかった決断は何ですか?

候補者回答

「これまでに学んだことの無かった生物学の道に進む」という決断です。

 高校時代、理科は物理と化学を学びました。大学に入り、生物学のプレゼンスが高まっているのを感じ、生物学に対する無知は大きな損失になると感じました。

最大のリスクは、専門課程に進学して、講義のレベルに追いつくことができるのか、という点でした。

 進学後は全力で勉強しました。努力したポイントは3点あります。
1. 履修可能な講義は全て受講しました集中講義も夏期休暇を返上して参加しました。
2. 講義は一言一句もらさないように必死で取り、その日のうちに復習しました。90分の講義でA4白紙6枚分になりました。
3. 1500ページの教科書(英語原著)を読破しました。

 以上を経て、大学院入学試験にも合格しました。現在は大学院で、ゲノム進化学の最先端の研究に参画しています。

解説: 先見の明と、Fast Leanerっぷりを効果的にアピールできている

彼は意識していないと思うのだが、ここでも先見の明と、Fast Learnerという、ゴールドマンでの仕事で成功するために必要な2大資質を効果的にアピールできている。

しかし片手落ちなのは、ゴールドマンが最も重視する「チームワークカルチャー」に関して全く触れられておらず、バックグラウンドからも「一人で研究するのが向いているタイプ」と思われかねないところだろう。

6 10年後は何をしていますか?

候補者回答

米国の行政大学院に留学します。そして、望ましい国家像とその達成の方略を構築したいと考えます。

 私が生涯で達成しようとしていることは日本の建国です

既に存在する国家を「建国」するという点に疑問をお持ちになるかもしれません。

それでも、私の意識では、あくまでゼロからの出発になると考えています。すなわち、政治と経済のシステム全体を、新たに形成しなくてはならないのです。

 御社で経済の根幹を集中的に身に付けた後、その視点を踏まえて政治を把握するために、もういちどアカデミックな場に戻ります

実際の政治の舞台では、近視眼的な政争ばかりが展開され、私が目標としている完全に新しい日本像に近づくことはできないからです。

解説:10年後のビジョンが、これまで話してきたことと大いに乖離

就活シーズンになると突然「日本を変える」とか言い出す人が多いのだが、さすがにこれは違和感を感じる。

まずもって、今までのゲノムの研究はどこへ行ったのか。

突然「建国」の話が出てきて、政治と経済のシステムの新たな形成(しかしおそらくその中身を聞いても、何もでてこないと想像される)など、突拍子もなく大風呂敷を広げられた気分になってしまう。

またとっととアカデミックな場に戻る人に、はたしてゴールドマンの投資銀行部門は進んでオファーを出したいだろうか?

若さと覇気は買いたいところだが、応募先へのフィットのアピールという意味では、あまり戦略性のない回答であった。(ちなみに政治家以上に、外資金融は社内ポリティクスも凄いですからね。)

7 他にどのような会社/業界を志望していますか?

候補者回答

 日本の経済の根幹に関わる仕事がしたい、そのための努力は苦にならない、という基準から、経営コンサルティング業界を考えています。

解説:職業選択の基準を伝えるという、この質問への回答にはなっている

投資銀行志望者がコンサルも志望するというのは、過去20年くらいずっと続いている傾向であり(最近はテックやスタートアップも増えているが)、この回答は極めて一般的である。

ただ、「経済の根幹に携わる」という基準で選んでいて、努力は惜しまないという人物像は、他の質問への回答と合わせ、一貫して伝わってきている。

8 あなたを弊社が、雇わなければならない理由は何ですか?

候補者回答

私が強いコミットメント意識をもち、常に自身の向上のために努力することを止めないうえ、自身の目標達成のために細かな作業を少しも厭わないからです。

解説:細かさ、コミットメントの強さ、向上心は平凡だが好まれる特性

抽象的にさらりと書かれており、しかもポイント的には平凡なのだが、ゴールドマン好みの無難なポイントを書いている。

しかしいかんせん、みな同じようなことを言ってくるので、どれほど事実・真実に基づいた具体的説明をできるかに成否はかかっている。

9 最後に何か、質問はありますか?(会社にどのような質問をしていますか?)

候補者回答

「キャリアパス各段階の人数構成の概要についてお尋ねします」

解説:最後にしょうもないことを聴いて、自分の面接を不利に終える人は多い

彼は、比較的どうでもいい質問で加点に失敗している。

なぜこれを聴いているのか、なぜこれが彼にとって最も重要な質問なのか、これを聴くことで応募先の企業の本質や自分の重視する基準に照らしたイメージ合わせができるのかなど、あらゆる観点に照らして、どうでもいい質問をしてしまっている。

総評:IQ的には優秀そうだが、金融やゴールドマンサックスのフィットという意味では疑問符が付く

この方は、社会経済の仕組みを学ぶためにゴールドマンに行きたいのであって、別に投資業務で稼いだり、金融業そのものに強い関心があるわけでも、そこでキャリアを形成したいわけでもないのが節々に滲み出ている。

別に正直にそう考えるのは自由なのだが、結果的に何故ゴールドマンなのか、などの問いへの回答が、表層的で適当なものになってしまっている。

またゴールドマンが重視するチームワーカーかどうかも心もとない内容であり、短期的な面接という意味ではイシューも多い。

しかし長期的にフィットのない会社はやめておいたほうが双方のためという意味では、正直に自分をぶつけるのも、悪くないだろう。(By ペコパ風)

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