
就職活動では、内定者がどんな志望動機を語ってきたのか、気になりますよね?ただコンサル志望動機では、多くの人が同じような内容を言ってしまうもの。なかでも意志の強さ、論理的思考能力、向上心、リーダーシップ云々は、具体例が本当にすごいか、平凡でも学んだ教訓が深くなければ、上滑りして失敗しがちです。ちなみに以下の回答者の方のように、特定の業種での詳しい知識もあまりアピールしてもしかたないことが多いです(実務でクライアントの知識を超えるレベルなわけはないので)。
コンサル志望動機の「残念3大パターン」!論理性・向上心・リーダーシップに要注意
1 なぜこの会社を志望していますか?
候補者回答
私は理系として技術研究に取り組んできましたが,研究を進めるうちに研究成果を世の中に広める部分にデスバレーが存在することを肌で感じ取りました.そこで,そのデスバレーを超えるという仕事の必要性を感じ,携わりたいと思いました.
そのようなことを行っている業種を調べたところ,コンサルタントという業種が浮かび上がりました.このため,コンサルタントという業種を選択しました.
また,私のコンサルタント志望理由が上記のようなものであることから,実際に働きたい会社は技術系のコンサルタンティングに強い会社です.
更に私の大学における専攻である通信の知識を生かすために,通信業界に強い会社が希望です.これらの点から会社を考えたところ,通信系の技術に強い御社が第一志望となりました。
解説
どちらかといえばADLが喜びそうな志望動機だ。通信に強いとか言うが、本当か。あまり聞いたことないのだが。。そもそも通信会社は巨大クライアントであり、ほぼどこのトップファームもコンサルタントが食い込んでいるのが現実である。またより重要なのは、コンサルは個人商売みたいなところがあるので、特定のクライアントをつかんでいるシニアが移籍するかどうかでそのファームへ入ってくるプロジェクトの性質も大きく変わってきたりするのが現実である。
なおこの方は、”研究成果を世の中に広めるためにコンサル”とも読み取れる、”ほんまかソレ?”という勘違いを起こしてしまっている。このように業務内容と合致しない”志望動機”を語る人が非常に多いので、注意しよう。
2 その会社に活かせる、あなたの強みは何ですか?具体的にお答え下さい
候補者回答
意志の強さ,向上心,論理的思考力および通信に対する知識です。
意志の強さについてですが,私は大学入学時に何か一つ成し遂げようと思い,大学における成績を大学院の推薦をもらえるレベルにするということを目標として掲げました。私の大学は一般的な理系よりも授業数が多く,更に忙しいのですが,初志貫徹の精神の元に意志の強さを生かしてこの目標を達成しました。
また向上心についてですが,私は上記のように専門科目の成績を良く保ちながらも,幅広い知識を得るために専門とは関係の無い経済学の勉強をしました。これについても資格の取得という目標を掲げながら行い,成功しました.このように私には自ら勉学に励むという向上心があると思います。
論理的思考についてですが,私は理系として数学のような論理的思考をこなしてきました。
また,去年の研究室においては実際に技術が使えるかどうか,どうすれば最も効率よく作れるかなどについて活発に議論をしました.この議論の過程で論理的に詰めていくという思考が磨かれたと思っています。
通信に対する知識ですが,これは私が通信関係を大学で専攻しているため,通常の人よりもあると思います。
さらに,通信系では世界的に有名な研究室であり,さまざまな研究やバックグラウンドを見てきたため,私と同様に通信関係を大学で専攻している人よりも知識やバックグラウンドがあると思います。
解説
彼は平凡な話を長々とやってしまった。深堀すると凄いのかもしれないが、文面上は”論理性・向上心、、、”云々といった”お決まりの強み”を挙げている時点で退屈なところに、具体例も総花的な印象で、印象があまりのこらない。3つ浅い事例を挙げるくらいなら、1つでも掘り下げて”あなたの映像が浮かぶような志望動機”を語りたいところだった。
ユニークさを感じるのは「通信系では世界的に有名な研究室」の部分なので、ここを集中的にフォーカスしたほうがよかった。総じて「石の強さ」「向上心」「論理思考」などとたっぷり風呂敷を広げ、その中からまた「推薦状レベル」「大変な授業」「数学」「通信」とこれまたたっぷりぶちあげるより、一つ貴方を強く印象付ける、また実際凄そうなオーラを放っている「世界レベルの通信研究室」で押すのが得策であろう。 (この手の、自分のどこがユニークで興味深い経験か、というフォーカスを外して本来の力を発揮できない人が多いので、読者諸君は是非自身を振りかえってみてほしい。)
3 あなたの弱みは何ですか?
候補者回答
仕事に集中してしまい,ついつい時間を忘れて取り組んでしまうため,よく睡眠時間を削ってしまうことです。
解説
彼はしらじらしい、多くの人が言ってしまうことを言っている。この”頑張りすぎて寝不足に、、、”系はソレを聞いた瞬間、”あーそうなのね、この程度の回答しちゃう人なのね、、、、”感が漂うリスクがあると知っておこう。この回答は本サイトで紹介しているトップティアの人と比べ、特に得点を稼げることを言っていないのがお分かり頂けるであろう。
4 いままでの人生で、最も大きな達成事項は何ですか?
候補者回答
卒業研究の完成です.私の卒業研究は無線LANに関する研究でしたが,既存の規格には存在しないシステムであるため,そのままでは実現不可能でした。
しかし,必ずやり遂げてみせるという気持ちの下に連日考え抜き,先輩と議論しながら新たな規格を策定しました.そしてそれを利用することで学校に連泊しつつも新システムの完成にこぎつけることが出来ました。
解説
彼はここで自分の強さを印象付けている。やっとこさ具体的に自分が何かに打ち込み、頑張って成果を出すイメージを醸し出すことに成功している。私が彼なら、「無線LAN革新男」としてのイメージを前面に押し出して、強みを言うにも、弱みを言うにも、達成事項を言うにも、志望動機を言うにも、この分野と「世界的な研究室」のキーワード二本立てで話をつくっていくだろう。(ただし、それ一本で押し通しすぎて”無線LAN一本の、他に言うことない人”という印象を与えないよう、バランス感覚に気を付けながら)
5 いままでの人生で、最も難しかった決断は何ですか?
候補者回答
大学院に進学して,より専門の知識をつけるか就職して実務の中で自分を成長させるかの決断です。
結局私は初志貫徹という観点から,情報通信系の知識や技術を身につけたいという気持ちで入学したにも拘らず,学部を卒業するだけでは情報通信系に一通り触れたと言うことはできないという結論に至り,大学院に進学することを決めました。
解説
うーん、なんだか”徹頭徹尾、凡庸な回答”をして損してる方だなぁと。今までの人生で一番難しかった決断が、大学院の進学やったなんて。。貴方は無線LANの新システム完成に至る困難な部分から話を作ったほうがよっぽどよかった気がする。別に大学院進学系の話が悪い、というわけでもないのだが、この事例が物語るようにどうも一般的で、薄っぺらい話に終わりがちである。
6 10年後は何をしていますか?
候補者回答
コンサルタントとして技術を生かした戦略策定を得意分野として仕事に取り組んでいると思います。
なぜなら私が最もしたい仕事がそれであるため,社会人としてのスタートや途中の道はどうなるかわかりませんが,10年後までにはコンサルタントとして上記のような仕事についていると思われるためです。
解説
10年後の事なんて分かるわけないし、それは(まともな)面接官も学生さん側も双方暗黙の了解なところがあるけど”お決まりで聞いている”ので、複数の具体事例を挙げながらも共通する”仕事のコンセプト””コンセプトレベルでのビジョン”が、仮説でもいいので説得力ある思考の痕跡と共に伝わるように話すのが基本である。
7 他にどのような会社/業界を志望していますか?
候補者回答
通信業界の経営企画部門や商品企画部門,あるいは投資銀行の投資銀行部門です。
なぜならこれらの業種はコンサルタントの次くらいに技術を生かした戦略策定という仕事に近い仕事ができると思うためです。
解説
他の業界を聞かれて、”いや、うちの業界への志望動機と、全然違うやん!!”と突っ込まれてしまう人はかなり多いのだが、彼も大いに勘違いをしている。投資銀行部門で技術を生かすのなんて、いつの話だろう。(ま、バイスプレジデントくらいになって通信カバレッジで営業するようになったら、少しは話のわかるバンカーだね、となるかもしれないが。)
当分技術もへったくれもない、書類作成/データ集め/プレゼンのミス直し、といった超地道な作業が続くので覚悟なされたい。
8 あなたを弊社が、雇わなければならない理由は何ですか?
候補者回答
私は上記の私の強みで述べたような特徴を持ち,かつ協調性を持ってプロジェクト全体の進行に好影響を及ぼすことができると思われるため,私を雇うことで御社のプロジェクト遂行スピードとプロジェクトの結果としての質が向上し,より多数の案件をこなすことができるようになると思われます。
このように私を雇うことでより利益を高めることができるはずなので,御社は企業の存在意義である利益を出すという観点から私を雇うべきであると考えられます。
9 最後に何か、質問はありますか?(会社にどのような質問をしていますか?)
候補者回答
御社の売りは実行であると説明会でお聞きしたのですが,御社の強みが通信業界ということから考えますと,実際にコードや技術を見たりしながら進める仕事というものもあるのでしょうか?
またそのような仕事ではある程度専門知識が必要となると考えられますが,社内で次のプロジェクトに向けた勉強会のようなものを行ったりすることはあるのでしょうか?
私は自分の強みの一つが通信分野を専攻した院卒ということであると思っておりますが,通信業界における知識や人脈を生かすために,希望すれば優先的に通信業界のプロジェクトにアサインしていただけるということはあるのでしょうか?
解説
彼はいい話をしている。仮にこれが実際は聞きたい質問でなかったとしても、通信業界における知識、人脈、コードや技術を見れるという能力を巧みにアピールできている。こういう「なんか雇いたくなる」質問を諸君もベンチマークしてほしい。
投資銀行/戦略コンサルに提出しているエントリーシートに提出した書類から、一つエッセイを選び添付してください。
候補者回答
私は財務的,戦略的に企業の事業をサポートする事業戦略に取り組むことの出来る業種に就職したいと考えています。
これは,理系として研究に携わっているうちに,研究成果を基にした事業を,戦略的にバックアップすることで世の中に研究成果を広めるという仕事に強く興味を持ったためです。
このような仕事を行うことのできる業種は主に投資銀行や戦略コンサルタントです。ただ,投資銀行は資金面で実際に行動を起こすため,コンサルタントと異なり,実行が伴う仕事だと考えられます。そこで私は投資銀行という業種に就職したいと考えています。
投資銀行部門を持つ企業は多数存在しますが,私は大きな仕事をこなしており,かつ企業に活気があって業績を伸ばしている企業を志望したいと思っています。そこで,御社のように新鮮で活気があり,業績を伸ばしている会社を第一に志望しています。
解説
彼は薄っぺらい、平凡な話をしている。
よく「コンサルは口だけだが、投資銀行は実行が伴う」というのもなぜか面接者が押し並べて言ってくる志望動機だ。研究成果を基にした事業を投資銀行でバックアップ?? あまり想像できないが。。
さしずめ優れた技術を持っている企業の上場、資金調達をイメージしているのかもしれないが、その技術が将来成功するかどうかの目利きなど当然投資銀行にはできないし、求められてもいない。技術の目利きとは世界の知的財産のエキスパートにコンサル料を払いまくっても、まだ失敗ばかりの困難な仕事なのである。
またどこの投資銀行を指しているのかわからないが、大きな仕事をして、活気があって、、、というのもきわめて平凡な人物像を想像させてしまう。
ただこのレベルの話をする人があまりに多いので、他山の石とされてほしい。
講評
彼が残念だったのは、おそらく貴方が一番輝いたであろう通信における貴方の強みでかなり遠慮がちにさらりと流していることだ。
たとえばトップティアで押した再生医療の候補者が、“医療分野では強みを発揮できます”程度のぼんやりした記述であれば、その実力を示すことは難しかったはずだ。
あなたも、相手がわからないことを承知で“相手の教訓になる知的に面白い話を、自分の方が強いフィールドでのディスカッションにもっていけるよう、その会話の具体的材料を自分から提示したほうがより有利に貴方の強みを印象付けることができたであろう。
他の懸念事項は、コンサルを志望する際に「通信やりたい、通信やりたい」というのを前に押し出し過ぎると、少し現実離れしている気がする。
ベインも“通信に強い”とか言うだろうが、実際通信関連のケースばかりあるわけではない。技術をマーケットに広げるプロジェクトばかりアサインされるわけでもないのである。「そんならドコモの、知的財産販売チームでもいけ!」という突っ込みが聞き手の頭に浮かばないよう、ぜひ「ジェネラルコンサルタント色」も程よく出してほしいと感じた。 (ただ、彼は総合的には優れたcandidateである。)