
現在、金融機関、特に銀行からのコンサル転職志望者が急増しています。都銀・地銀ともに長居すると社内のぬるま湯でしかいきれない人材に転落しますが、コンサル転職後のカルチャーショックにも柔軟に対応できることが重要です。以下は、大手米系コンサルティングファームへ、メガバンク勤務を経て転職されたStrong Career講師からの体験談です。日系ドメドメ企業からコンサル転職したら、どのような発見・学び・衝撃があるのか?コンサル転職後の実態に迫ります。
コンサル転職の衝撃①:お客の実態~成果より、”コンサル雇ってみたかった。”
ある業務改善プロジェクトで、大企業グループの子会社の一フロント部門を対象としたものがあった。業務改善のアウトプットは、例えば定量的には「工数XX人月削減」「残業時間XX時間削減」といった形のものが期待される。
しかし、冷徹に数字の面から語った場合、上記の削減効果を金額換算したときに、プロジェクトフィーを回収することはまず無理なように思われた。にもかかわらず発注する側の論理とはいったい、何なのか。
私見ながら、クライアントの経営企画側からすると、「コンサル入れました!」というお墨付きが欲しい場合があるように思われる。フロント部門では数万円単位の費用節減に励んでいるなか、経営企画部門には千万単位のプロジェクト予算がついたりする、ということが起きる。大企業にありがちな「お財布が違う」という現象かもしれないが、改めて驚かざるを得なかった。
特に戦略コンサルが景気の上昇局面でも下降局面でもそこそこ仕事をもらえていると言われる背景には、この経営企画部門の「MやBも雇って手は尽くしたんやで」と言いたいニーズというものが、潜んでいるような気がしてならない。
コンサル転職の衝撃②:ファクトとロジックが大切~”仰る意味が分かりません”
As isはXの状態。To beはYの状態。XとYの差分が課題。課題に対するアプローチはあれやこれや。。という課題解決のプロセスはとてもクリアーカットで、組織の困りごとをシステマティックに解いていく。戦略コンサルのやり方は、これまで自分が属したどの組織でも見たことがなく、とても新鮮なものだった。
これは、議論の大前提「ファクトとロジックで語れ(以上!!!)」が共有されている組織だからこそ成り立つのではないかと、今になって思う。感想は不要。だらだら喋ろうものなら「根拠はなんですか」「主旨はなんですか」と、新卒コンサルタントに突き上げられるのは必至だ。
ちなみにこの血も涙もないアプローチをプライベートに持込むと、サイコパス扱いされかねないが、そのような戦略コンサル在籍者・出身者は少なくないように思う。私も元彼女に面と向かって「サイコパス!」と言われた一人だ。某Bで働いたことのある友人は、奥さんの飛行機事故に対する不安に対して、航空会社別の事故率のチャートを突きつけて、大いに不興を買ったりしていた。
また、先日、某Bの出身者達との飲み会で大いに盛り上がったネタで、「仰る意味が分かりません」というのがある。戦略コンサルに居た人はすぐに「仰る意味が分かりません」という言葉を発してしまうというもので、これを伝統的日系企業で使うと非常に危険だという話である。ソフトな推論が許される環境で生きてきた人に、いきなり「仰る意味が分かりません」というと、ストレート過ぎて傷つくようで、何か別な言い方を考えないといけない(でも思いつかないんだよねー)という話で、大変酒が進んだ。
さて、仮説検証については大変ドライな印象を持たれたかもしれないが、クライアントとのやりとりは、極めてウェットな世界である。以下にその事例を述べる。
コンサル転職の衝撃③:内実は供述調書?仮説の裏付けは、インタビュー
若手に期待される役割として、Excelをガシガシ回す定量分析能力が真っ先にイメージされるかもしれないが、案外その限りではない。実は、ソフトスキルも非常に重要で、最も印象的だったのが、インタビューに関するスキルである。
検証仮説の裏付けは、数字によるファクトがあればそれに越したことはないが、ヒアリングによる定性的な言質だったりすることも少なくない。あるパートナーは、プロジェクトでのインタビュー記録を冗談で「供述調書」と呼んでいた。
プロジェクトによっては、仮説の裏付けのかなりの部分をインタビューに依存する場合もある。あるコンサルタントは、インタビュースキルさえ高ければ大体のプロジェクトはこなせる、とまで言っていた。インタビューで引き出せる定性的かつ深い情報は、プロジェクト全体にも大きく影響し得るのだ。
インタビューの対象者は、組織の経営職階だけとは限らない。組織の実態を知るためには、末端の平社員まで、上席者が立ち会わない環境で話を聞く必要があったりする。そのため、インタビューの本数は時に数十本となり、これを仕切るのは若手のコンサルタントになりがちだ。
私も一応、若手ということでマネジメントを含むクライアントに対するインタビューを多数行ったが、これは大変奥が深いというのが正直な感想だ。
まず、業務改善のため雇われているコンサルタント、という時点で下手をするとクライアント企業の社員からすると、敵対モードでのスタートとなる。常駐案件だと、物々しくクライアント企業の一室を占拠したりするので、なおさらだ。
さらに、質問の内容はインタビューをされる側にとって、明らかに心地良いものではない。業務改善なので、要は、削減対象=「あなたの仕事にこんな無駄がありますね」ということを認めてもらうのが目的となる。自分の仕事に「無駄がある」と言われて、心地いい人はあまりないので、このあたりの表現はかなり慎重を要する。
冷や汗をかいたのは、「この仕事、機械化すれば無くなりますね」というパターンで、これはインタビューされる側も、仕事が簡素化され楽になるということでノってくる場合が多い。が、その結果起こるのは、その人自身や所属する部署の不要論だったりするので、結構地雷だな、と思ったものだ。
ある時は、クライアント企業が行う業務のディテールを知らなかったために、現場に強いこだわりを持つインタビュー対象の部長が激怒しはじめたことがあった。その面談では、プリンシパルが同席していて事なきを得た。部長の「もっと勉強してこい!」という言葉に対する、彼の反応は「はっはっは」と、ただ笑い飛ばすというものだった。
失礼になるかならないかのぎりぎりを狙った彼の反応(常識でいけば失礼極まりないが)。そこで謝罪してしまうと、インタビューや、下手をするとプロジェクトの主導権を取れなくなるが故に、取ったアクションだと思う。謝罪もしないが、反論もしない。彼の受け流しには、心底驚き、凄いと思ったものだ。
以上まとめると。。
大手外資系コンサルファームに転職し、多くのことを学んだ。様々なお客の実態と、ファクト・ロジックをもとにしたインタビューによる仮説検証というプロセスは、どのようなビジネスパーソンにとっても役立つスキルだと思う。