
”将来やりたいことは?”等と聞かれても、口では適当なことを答えられても、実際ズバリ、”あなたにとって最も大切なものはなに?”と聞かれて答えられる人はほぼいません。自分にとってもっとも大切な価値観を意識するのは困難であり、それに100%あった会社を探すのはますますもって不可能です。「唯一完全にフィットのある会社」を探すのではなく、譲れない優先事項・価値観を認識し、そこへのフィットが8割レンジで収まれば御の字位に思うのが正しいです(交際相手に100%のフィットを求めても無理なのと、同じです)。
就活面接で将来やりたいことを聞かれても、実はやりたい事がない時の3大論点とは?
就職や転職をするときに必ず聞かれる”将来何をやりたいのか?”。
正直申し上げれば大抵は、本当にやりたいことなんてわからないか、無いものです。
特にまだ経験の幅が乏しい20代前半で、絶対解決したい問題や、何が何でも守りたい価値観など、無いか、おぼろげな人が大半ではないでしょうか。
しかしながら、やりたいことが明確でないからと言って、自分を責める必要は1ミリもないのです。
人間はそもそも、「やりたいことなどない」動物
そもそも人間の歴史は”どのようにして食べ、子供を育てるか”だけを考える時代が700万年の人類の歴史の大半を占めます。
しかしここ2020年代になって、”豊かで暇な時代”が到来するにあたり、”何をやりたいのか”という、大きなエピステーメーを突き付けられるようになりました。
やりたいことのぼんやりとしたイメージはいくつかあるでしょう。ですが、それが本当にやりたいことなのかを考えると、わからないものです。そもそも100%フィットするやりたいこと一つを探すという問い自体に、無理があるともいえるでしょう。
解決したいと思っている問題も、社会的にそう思わされているだけかも?
仮に解決したい問題があっても、ひょっとすると”社会的価値観としてこれをやるのが望ましい”とインプットされているから無意識にそれを選んでいるだけかもしれません。
ビジョンややりたいことが明確に無いからと言って、自分を責めないでください。
自分が何をやりたいか、どのような価値観を大切にするかを考えるように求められだしたのは、普遍的な問いではなく、現代社会特有のエピステーメーなのです。
人生でやりたいことなど、無い!問題との付き合い方
それではキャリア選択に当たって、”自分はいったい何をやりたいんだ問題”には、どう向き合えばいいのでしょう?
第一に、”やりたいものなどないのが基本形”と、リラックスしましょう。これは、無理やり”自分はこれをやりたいんだ!”と言い聞かせて後に違和感に苦しむより、健全だと思います。
この、”実はやりたいことなどない(キリッ!)”と受け入れた後で、”まぁしかたないから比較的やりたいことを探すか”とリラックスした気持ちで、”まぁまぁ好きなことをやってよしとする生き方”も、何も悪くないのです。
仕事はやりたいことではないけど、幸福はプライベート生活で実現、という人生もいくらでもあるのですから。
第二に、”やりたいことは不明だが、自分を置いておきたい状況を目指す”というのも重要なアプローチです。
つまり、何をするのかより、どんな人たちとどのような環境で働きたいのかを、志望動機の骨子に持ってくるのも悪くありません。
だいたい、”やりたいこと”より”この人の為なら頑張れる””感謝してくれるなら頑張れる”みたいなモティベーションの方が、大きく多いものですからね。
(もちろん、自分が単なる承認欲求の奴隷になっていないか、注意することも大切ですが。)
同じ仕事でも、何をやるかより、誰とどのような環境でするかの方が、よっぽど満足度やパフォーマンスに影響を与えるものなのです。
その会社が世の中に提供するバリューに共感できるかどうか
第三に、なんといっても自分と仕事の”価値観のフィット”が重要になります。
資本主義の制度疲弊を前にして、”人間らしい価値””生きる価値””生きる意味”の実現を求めるように価値観がシフトしています。
資本主義は富を作り出し貧困から脱出する上で非常にパワフルでしたが、富を作り出すことが目的化してしまい、本来の幸福追求や、多様な価値観の実現とは相いれない問題が表出しています。
そんな中、優秀な人や投資家を集めるためにも、”自分たちが重視する価値・世界観”を語り、共感してもらう必要性が増しているのです。
仕事をしていて一番虚しいのは、我ながら”この商品・サービスはあまり価値が無い”と思っているものを、無理やり自分と客を騙して売りつけることなのですから。
自分の価値観を自問し続けるのは、就職活動に関係なく日々行うべし
志望動機を考えることは、自分が言語化できていないけれども無意識に重視している価値観を意識化する貴重な機会を提供します。往々にして、価値観がインストールされる幼少期の原体験に根差すことが多いものです。
就職活動の時にいきなり自分の価値観を面接対策用に考えるのではなく、常日頃自分にとって大切な価値は何なのかを自省する習慣が、その人の志望動機の強さを左右するのは、言うまでもありません。