
今や世界で最も収益力があり、最大級の企業価値を有するグーグル。その規模はマッキンゼーやゴールドマンが小人に見えるくらいです。圧倒的な資金力と技術力と製品力が生み出す、自由と余裕のあるカルチャー。ただしあなたが最新のデータソリューションを国際的なチームで日本の政府組織や大企業に提供するスケールの大きな仕事を思い描いているのであれば、コストセンターであるプロダクトチームの方と、プロフィットセンターだけどドメスティックなビジデベチームとは全く違う経験になると理解した上で、転職活動に臨みましょう。
MBBやトップティアIBを志望した人材が、GAFAの中でもGoogleを目指すわけ
当サイトはコンサルファームや投資銀行、プライベートエクイティを目指す人が多いのだが、私の周り(グローバルMBA)を見ると、もはやそれらは一昔前の職場である。
いや、もちろんいい会社もあるが、働きやすく高給で有名なベインや大手金融機関からも、グローバルではグーグルに転職する人が非常に増えている。そして満足度も非常に高いのだ。
当サイトは別にグーグルから一ドルたりとももらってるわけでもなく、しかも検索してもなかなかヒットしないくらい、まったくグーグルには恩義のかけらもない。
しかしあまりにもコンサルや投資銀行から転職した友人たちからの評判が高く、またこれまで2-3年で”体力の限界””こんなこといつまでもやってられん!”などとフットワーク軽く転職していた”転職市場の足軽部隊”である彼ら、彼女たちが、グーグルで幸せそうに長居しているので、この社員満足度の高さはガチである。
今回はそんなグーグルの社内文化を、皆さんが猪突猛進に受けているコンサルや投資銀行と比べて解説しよう。
1・心理的安全地帯 VS 心理的危険地帯
グーグル出身者、特に人事部長出身者が近年の「働き方改革」の波に乗ってメディアでも注目を集めているが、グーグルは実際に社内カルチャーとして「心理的安全地帯」の重視を掲げており、心理学に基づいた自己開示、信頼関係の構築、安心感の醸成に強く配慮している。
そもそも人間は集団間での信頼関係と安心感が重要な生き物である。投資銀行のようにお金を稼ぐことが第一の目的で、政治闘争の果て「実力主義」を名目に平気で人を切るような業界カルチャーは、人材獲得競争でグーグルに惨敗して、消えてなくなればいいのに、と思うくらいだ。
皆さんも転職先、就職先を選ぶときは、「人を幸福にする組織文化」を真剣に考えるカルチャーかどうかを問うようにしていただきたい。
言い換えれば、ブラックカルチャーでもブランドと多少高い給料、しょうもない名声に惹かれて入ってしまうから、ブラック企業が真っ黒のまま暗躍するのである。(ラグビーワールドカップにかこつけて、投資銀行業界の大半の企業を”オールブラックス”と呼びたいくらいである。)
2.自由闊達 VS マイクロマネジメント
開発エンジニアが一番偉い会社であり、エンジニアは自由に好きなものを作ってもらうのが大切なので、会社のDNAからして自由闊達さを重んじている。
また新卒であろうとマイクロマネジメントは厳禁で、自主的に学び、主体的に成長することが求められる。
これは自由の余地がほぼなく、大量の雑務で新人をこき使い、マイクロマネジメントの権化のような人が多い大半の投資銀行と、鮮明な対比を創り出している。
マイクロマネジメントは人間の創意工夫やモティベーション、活力をを削いでしまうものである。
まぁ、金融機関は総じてやることがカッチリ決まっているので、自由闊達に全く違う面白いことを次々とされても困るのだが、自由闊達さを重視する方はぜひグーグルを優先的に考えてはいかがだろうか。
3.ワークライフバランス最高 VS ワークバランス最低
ワークライフバランスの良さ、休暇の多さ、プライベートの尊重という意味でも、グーグルは既存のエリート業界と一線を画している。
有給休暇消化率が最も低い水準にある投資銀行日本支社に比べ、プロダクトの強さから走り続けなくてよいモデルなので、勤務時間、休み時間にも余裕がある。(もちろん、エンジニアチームと異なりセールスだけはノルマ達成が厳しく求められるという声もあるのだが)
実際にグーグルのような働きやすさ、社員を大切にするカルチャーを目標にする会社も増えてきており、「よい企業カルチャーを作り、世に問う」という意味でも重要なリーダーシップを発揮している企業である。
4.圧倒的な商品力 VS 完全競争
グーグルアドワーズはその圧倒的な商品力とマーケットシェアで、放っておいても潤沢な資金を会社に流し込んでくる。
これに対し、多くの投資銀行は提供サービスがほぼ同じなので、熾烈な営業競争に神経をすり減らすことになる。
ひたすら「うちの銀行が2019年の株式発行主幹事数では一位です」「M&Aリーグテーブル、日本と中国を除くアジアの500億から1000億の案件であれば、上半期に関してうちが一位です」などの資料をいつまでも作っているわけにはいかない。
恣意的に都合よく切り刻んで自分を一位にする、虚しすぎるマーケティングピッチにしのぎを削るような社風の企業は、21世紀初頭の投資銀行を最後に、博物館に追いやらなければならないのだ。
5・西海岸(スタンフォード)VS東海岸(ハーバード)
グーグルと伝統的な”エリート業界”の違いは、グーグルが文字通り西海岸のスタンフォードコミニュティを拠点に成長してきた。
これに対し伝統的金融機関はハーバードやウォートン、コロンビア大中心のウォールストリート・東海岸コミニュティを拠点にしてきた。そのことが社風、カルチャーの差となって表れている。
これは余談だが、人はやはり海を見ながらきらめく太陽を浴びて、カラッと過ごしやすい気候にいると、いい人が多くなるものなのである。(実際にトップMBAの中でも、スタンフォードは人のいい人が多い。)
6.グローバル VS ドメスティック
グーグルは社内で英語を使うのが基本で、外国人スタッフも非常に多い。またアジアはAPAC本部がシンガポールにあるので、海外オフィスとのやりとりも頻繁である。
販売商品もグローバルに開発された商品で統一されているので、ローカル化に汗をかく機会も少ない。
これは外資といえどもクライアントが日本企業のオジサンたちで、言語も文化も日本ローカル化することが求められる「伝統的エリート産業」と、東京オフィスの国際性も大きく異なるのだ。
(ただし要注意なのは、グーグルとはいえビジネスデベロップメント、つまり営業は日本人主体でドメスティックなカルチャーだということ。国際性を求めて入るなら、プロダクトチームがお勧めだ。
入る門はより狭いが、コストセンターなので数値ノルマなどないし、人数も少ないので裁量も大きく、しかもコロナで自宅勤務が大半なので、あの素晴らしい社員食堂で食べられないことを除けば、もはや自分が何をやっているのか上司も誰も知らない状況で主体的に働くことができる。)
7・将来性 VS 収縮性
データ量がモノを言う第四次産業革命のAI分野において、データ量とその成長率でグーグルの右にでる会社はない。
正確にはバイドゥやテンセント、アリババといった中国勢がAI分野ではその豊富なデータ量で急速に追従しているが、これら業界の覇者たちは、5GのAI時代にさらに大きな飛躍をすることになる。
これに対し、リーマンショック後の規制強化と、かねてからの労働集約型で非人間的な労働を強いるカルチャーを引きずる「伝統的エリート企業」では、その将来性の差が明暗を分けているのだ。
人を資本主義の駒としか見ない会社ではなく、社会を良くするミッションを重視する企業に入ろう
以上、こんなこと書いているうちに私もAPAC本社にいる友人に頼んでレジュメでも送りたくなってきたくらいだが、まだ若い新卒でこのような会社が存在し、挑戦できる皆さんが正直うらやましい。
私は企業は社会をよくする組織文化を創るのがその重要な使命であり価値の源泉だと思っている。
この意味でお金に魂と人生(家族・友人との時間)、また頻繁な解雇で自信と尊厳を平気で奪うことが常態化し、その異常さに慣れてしまっている一部の外資系投資銀行は、そのカルチャーもろとも消え去った方が、世のため人のためでは、と思えてくるくらいである。
優秀な皆さんがまずは世の中に広めるべき「人を幸福にするカルチャーの会社」に入ることを応援すべく、別に一円もらったわけでもないのに、「グローバルMBAの世界では、投資銀行やコンサルよりグーグルが圧倒的に人気ですよ」という実態をお伝えすることにした。
皆さんが是非、劣悪な社風・カルチャーの”伝統的エリート企業”にNoを突き付け、そんな企業カルチャーで人を社畜にする極悪企業・業界の”人材面での淘汰”を促進してほしいと願うのみである。