
「人の三井」といわれる三井物産ですが、実はそう呼んでいるのは三井物産だけという説もチラホラ。総合商社のトップ企業の一角として伝統的に優秀なビジネスパーソンを引き付けてきましたが、それが外銀・コンサルに奪われたのち、今ではスタートアップなどにも人材流出。向上心旺盛な若手人材の流出が続いています。他方で、三井物産でのキャリアが幸せな人ももちろん存在します。その差はどこにあるのか、以下に解説します。
「人の三井」というより、「資源の三井」?~若手が退職する理由と、それでも三井物産で働く人を分ける、7つのポイントとは?
1.海外で働く機会が多い
総合商社に共通する特徴ですが、キャリアの早い段階で、周囲の覚えがめでたく英語もある程度できれば、海外赴任することができます。
海外志向の強い人にとって、若手の時代は相対的に魅力的な機会を提供します。
2.国内での強いブランドと資金力
資源ビジネスで稼いだ潤沢なキャッシュと国内最高峰の会社ブランドネームで、仮に個人の力が大したことなくても、規模の大きなビジネスをすることができます。
これはひとえに国と近く資金力があり、参入障壁の高い資源ビジネスで海外利権を多数確保していることに由来します。
3.差がつかないが、高い給与水準
和をもって貴しとする日本文化の典型的な発露で、総合商社は総じてパフォーマンスにほぼ関係なく、同じような高給が支給されます。
30前半で1500万に達し、海外駐在時は駐在手当や税金優遇などでこれに1000万上乗せのイメージです。
4.40代以降の解雇されない窓際族の多さ
高い給与水準を得ているものの、働かない高齢社員が多いため、「将来自分もこうはなりたくない」という問題意識に繋がっています。
これはキャッシュが潤沢で資源ビジネスで稼ぐ総合商社に共通する課題です。つまり、どれだけ無駄な人件費を抱えていても会社が倒産しないため、働かない高給サラリーマンを、大量に社内に抱える結果となっているのです。
5.官僚的で意思決定が遅い
組織が大きく官僚的で、根回しや社内調整にほぼ永遠の時間が必要とされます。
社内で投資案件を通すのに時間がかかりすぎ、かつ専門性も乏しいので、PEファンドとの競合になった時に敗北しています。
私の知人もとある魅力的な投資案件を社内で推していましたが、根回し調整に延々と時間を取られ、挙句の果てに「リスクが高い」と参画を見送られ、失望した彼は実際に転職してしまいました。
6.資源頼みで、コンシューマー関連に弱い
重厚長大型・資源ビジネスで大半の利益を生み出しており、川下のコンシューマービジネスは総合商社の中でも特に手薄です。
インダストリー4.0時代において失うビジネスが多い業態を数多く抱えています。
7.専門性が身につかず、組織の外に出た時の市場価値が不安
巨大組織であり、配属希望や面接時に訴えた希望はほぼ反映されることなく、組織の都合で配属が決定されます。
三井物産からの転職希望者の中で最も多い理由はなんといっても、社外に出た時の専門性が身につかないことです。
よって三井物産で引退まで働ける見込みがなければ、若手にとってはある意味で長期的にリスクの高い職場選択になる可能性があります。
三井物産で向いている人、向いていない人はこんな人
以上を鑑みて三井物産に残るべき人と、その逆で三井物産から転職すべき人を分けるポイントは以下のようになります。
1・官僚的でスピードが遅く、社内飲み会などが多くても、定年まで安定的に高給を得たい
2・実力主義・成果主義より、パフォーマンスで差がつかない年功序列が自分には向いている
3.専門性やスキルが身につかなくても、潰れない会社で社内で生きていければそれでよい
このような志向を持つ方は三井物産でのキャリアが向いています。
逆に違和感を覚える方は、30まで長居してそのカラーに染まってしまう前に、ご自身の価値観にフィットした転職をすることが重要になってきます。
以上、ご参考いただければ幸いです。