コンサルや外資金融、PEからスタートアップ転職時に考えるべき3大ポイントとは?

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外資系戦略コンサルティングファームや投資銀行、PEファームで働きながら、スタートアップ経営陣への転職を果たす人が増えています。以下ではリクルート人材センター(現リクルートキャリア)で累計売上実績歴代トップなどスーパー営業ウーマンとして活躍し、現在ではエグゼクティブ層の採用を中心とした株式会社morichi代表の森本千賀子氏が、「プロフェッショナル人材のスタートアップCXOチャレンジ」を題材としたテーマについて解説します。

エリート層が転職時に、「優秀な人がいる職場」を目指すときのドデカい落とし穴

Q:まずは、森本さんのバックグラウンドについてお伺いします。これまで転職エージェントとして約2万人の転職希望者とお会いされて、そのうち約2千人が成約されたそうですね。

 

森本千賀子(以下、森本)実際に会っている人は3万人ぐらいいるかもしれないですね。成約している人は2千人を超えています。

 

Q:そのうち、転職に成功した人はどれぐらいいるのでしょうか?

 

森本 基本的に転職後を追っかけるのは難しいのですが、比較的会社に馴染んだ方が多い傾向にあります。

ただ、成否を考える上で「カルチャーフィット」って結構大きいんですよね。実際、面接を何回したところでも、カルチャーギャップが原因で辞めてしまうことも多い。

 

鉄則①「活躍できるフィールドの有無」を考えるべし

Q:コンサルやPE,外資金融などで働くプロフェッショナル人材が転職で成功するために、どのようなポイントを確認しておく必要があるのでしょうか?

 

森本 活躍できるフィールドがあるかどうか、というところですね。


意外と、優秀な人がいる環境で働きたいとおっしゃる方々がいるのですが、逆に言うと、優秀な人はある種ライバルになってしまう。転職してみたら、優秀な人がずらーっといて、自分のポジションがないじゃん!ということが意外と多いんですよね。

 

たしかに、優秀な人が多いことは一見魅力的に感じるのですが、自分が活躍できるフィールドがちゃんと残されているかどうかですね。同じような人がいる環境に入ると、その人と比べられてしまいます。

 

私はよく「マイノリティ戦略」と言っているのですが、自分が活躍できる環境を見つけるためには、自分と似たような人がいないところを探した方がいい。

例えば、マッキンゼーやBCG出身者が腐るほどいる環境に行くと、そこで戦わなければいけないので難易度が高い。

 

鉄則②マイノリティ戦略で、自分の希少価値を上げよう 

Q:私も思うのが、いくら優秀で勉強ができて、かつ努力をもの凄くする人で、会計・バリュエーションや戦略フレームワークに習熟している人でも、ライバルと同じような物差しで測られてしまうと辛い。

結局「同じような真面目な人」との間でラットレースになってしまい、苦労する割にアップサイドがあまりなかったり・・・。

 

森本 そうなんですよ。自分が活躍できるフィールドが残されているかどうか、そういう観点で考えていかないと、転職後にその過ちに気付くことが多い。

 

逆に、賢い転職者の方からは、むしろ同業者が一人もいない職場を紹介してほしい、と頼まれることもあります。結局は、希少価値なんですよね。そういう職場に入るとめちゃくちゃ重宝される。

 

たしかに、同じような視界で仕事をしてきた人がいた方が、心理的安全があったり、会話のレベルに乖離がなかったり、リスクがないように思うけれど、逆にそれ自体がリスクだという話をよくしています。

 

鉄則③目指したいキャリアゴールを置き、3通りの登り方を考える

Q:自分が活躍できる環境に行くという話で言うと、あらゆる若い人にとっては、「自分はどんな環境であれば生き生きと活躍できるのだろうか?」という点が悩むポイントだと思います。

森本さんは、どのようなアプローチでアドバイスされていますか?

 

森本 最も重要なのは、目指したいキャリアゴールが何か、ですね。例えば、40代・50代といったマイルストーンの中で、自分がどうなっていたいか、どのような働き方、生き方をしたいかをまず聞いてみる。


キャリアゴールがあるとしたら、そのゴールへの登り方は3通りぐらいありますねと提示して、あなただったらどうしますか、というように確認していくことが多いですね。

 

Q:もう少し突っ込んだ話をすると、ほとんどの人が「キャリアゴールがわからない問題」に直面していると思います。

一応何かしら答えられるけど、「本当に自分が目指していたことだっけ?」と。

大半の「口だけビジョン」の人に、「本当にガチでやり遂げたいビジョンはこれでしょ?」と気付かせることが、プロの腕の見せ所なのかなと思います。

 

森本 そうですね。例えば、「働き方のロールモデルになるような「人」は周りにいませんか?」というように、具体的な「人」のイメージを持ってもらって、「その「人」はどのようなワークスタイル、ライフスタイルを持っていますか?」と、聞いてみる。



例えば、「大企業の執行役員をしながら、一方で大学教授のようなアカデミックな分野で活躍する選択肢を持っていたい」とか、「有望なベンチャーにエンジェル投資家として経営支援をして、若い経営者を育てるような余生を過ごしたい」とか、イメージしているものを壁打ちしていくと、成し遂げたいことが見えてくる。




あとで変わってもいいので、まずはゴールを置いてみましょう。そのゴールに向かって行くのに、今採れる手段はこの
3通りですが、どうしましょう?」といったことを話しています。

 

キャリアゴールのイメージはない人が大半~「生き方のイメージの伴走者」としてのエージェントの役割

 

Q:ゴールって明確なイメージがほとんどないものだから、ロールモデルを通じてどういった要素を採り入れたいか、ビジョンの明確化をサポートしている感じですね。

 

森本 そうそう、そんな感じです。例えば、「大企業の中で、「お前使えない」と言われてクビ切られるのだけは避けたい」と、小出しでキーワードを出してくるものです。

 

それらを拾いながら、「あなたはこういうビジネスパーソンですね」、と具体的なイメージを持ってもらいます。そして「そのゴールへの登り方は3通りありますけど、どうします?」と落とし込んでいく感じですね。



漠然と言ってもイメージがつかないので、具体的な案件を紹介しています。目の前の仕事のイメージだけでなく、
生き方のイメージまで伴走しているケースが多いですね。

 

選択肢が増える生き方をしよう~「日常と違う筋肉を使う」ことの大切さ

Q:森本さんのような生き方からすると、当時はロールモデルを探すことが難しかったと思います。森本さんにとってのロールモデルは誰だったのでしょうか?

 

森本 実在しているわけではないのですが、私がいつも大事にしていたことは「できるだけ沢山の選択肢を持っておきたい」ということです。

生き方にしても、働き方にしても、自分が良いと思った道をいかようにでも選べるように、たくさんの選択肢を持てるようなキャリアを作っておきたいと思っていましたし、だからこそ途中で副業や兼業もしていました。

 

Q:選択肢を増やすために重要なことは何でしょうか?

 

森本 いま目の前にある業務以外でトレーニングを積まなければいけないですよね。ビジネスモデル然り、業務スキル然り、日常で使っている筋肉とは全く違う筋肉を使うことです。



例えば、私が一番最初に取り組んだのは
NPOの理事だったんですよ。それまでは儲けてなんぼのリクルートにいたので、そうではなくて収益も大事だけれど、社会貢献を一つのアウトプットにしている組織の在り方を学びたいと思い、NPOで理事として経営支援をしていました。

そうしたら、そこに集う人たちのマネジメントはリクルートとは全く違っていた。

彼らにとっては、顧客からの感謝だったりフィードバックが直接的なモチベーションになっていたりする。

マネジメントの手法も全く違ったので、新たな学びになりましたね。

「自分が選んだ人生を正解にするのは、自分しかいない」~自分が齎している価値と大義を意識しよう

Q:これまで3万人の転職希望者を見てきた経験から、「ハッピーキャリア」と「アンハッピーキャリア」を歩む人の違いはどの辺にあると思いますか?

 

森本 そうですね、少し哲学的になってしまうのですが・・・、私個人的には転職エージェントという仕事を天職と思っていて、ハッピーキャリアを積み上げていると思っているのですが、究極的には私がどんな仕事に就いても同じことを思っていたんだろうな、と思うんですよね。

 

クランボルツ教授の計画的偶発性理論(Planned Happiness Theory)ではないですが、偶々の巡り合わせで今の仕事をしているだけであって、もし巡り合わせが少し違っていたら、もしかしたら保険、金融、不動産といった仕事をやっているかもしれない。

 

何をやっていても「私が今やっている仕事は天職だ」と言い切れただろうな、と思っています。そういうマインドセットが大事ですね。

 

Q:今ものすごく良い言葉を仰いましたが、今やっている仕事を天職だと思えるマインドセットの背後にあるのは、「自分が選んできたことなのだから頑張ろう」といったところでしょうか?

 

森本 そうですね、自分で選んだ人生を正解にするのは自分しかいないということ。あとはどんな仕事でも、そこに顧客がいる限りは必ず価値を提供しているわけで、自分がやっている仕事の先にどんな人たちにどんな価値を提供しているのかをちゃんと意識することが大切だと思います。

 

究極的には、自分のやっていることに対するやりがい、大義といったものは自分の意識次第で持つことができると思っています。そういう人こそ、まさに今求められている人材なんですよね。

頭が柔らかい時に修羅場を経験すること~高度成長期の企業に入ってこそ、自身の成長速度も高まる

Q:ついに本日の本題に移ります。なぜ今、プロフェッショナルファームで働く人たちに、スタートアップCXOに挑戦することをお勧めされるのでしょうか?

 

森本 今まで会ってきたエグゼクティブ、プロフェッショナルと言われる世の中に必要とされる人達には共通点があるんです。出来るだけ頭のやわらかい(素直に吸収できる)時に修羅場を経験しているのがプロ人材と言われる人達の共通点です。だからこそ、よりヒリヒリするような経験値を積んでもらいたい。そういう意味ではスタートアップに勝るヒリヒリはないのです。

 

Q:なんといっても、いつ潰れるかわからない・・

 

森本 そうです。ブランド力もない、お金もない、ないないづくし。あるのはビジョンと志だけでもどの会社も必ずそういう時期があった。

そこから努力、工夫の中で今のトヨタ、ホンダ、ソフトバンクが生まれてきている。


要はどこのフェーズに関わってきたかでその人の成長速度、成長曲線が変わってきます。よってスタートアップに取り組む時ほど人が成長する環境はないと思っています。

 

また創業者じゃないにしても経営者マインドをもって、バカバカ経費を使えなかったり、営業をしたり、マーケティングをしたり、時には人事もやったり色々な役割を1人で担います。

そういう意味で人としても、ビジネスパーソンとしても成長する環境があると思います。

 

日本は超高度経済成長期の中で、大企業だったとしてもどんどん成長していき、どんどん環境も変わっていきました。海外にも行けるし、そういう環境があったと思うんですけど、今は大規模企業は数十%以上の成長をし続けるって難しいじゃないですか。

そうすると成長戦略が取れない中で仕事をしなくてはいけない。チャレンジできる環境や機会は少ないんじゃないでしょうか?。

 

Q:まさにそう思います。日本の大企業に不満を持っている人のチャレンジする環境がないだとか、同じことをやらされる。そういう話ですよね。

 

森本 そうです。成長マーケットに身を置くこと、上が詰まっていない環境じゃないとポジションも空かない。

 

Q:確かに上がつかえて・・

 

森本 ましてや海外に出て行くとか新しいチャレンジをそう簡単にはできないので、そういう意味ではスタートアップだとそういう経験ができるんじゃないかと思っています。

 

スタートアップ選びの3大ポイント:経営者の器、経営チーム、市場性 

Q:ちなみに、こんな人はスタートアップに行くな、あるいはこんな会社に行くな、みたいなものってありますか?

スタートアップかと思ってたら、スタートダウンで、そのまま転落キャリアをコロコロ転げ落ちる人も、確かに存在しますしね。

 

森本 ちゃんと成長していく会社でないと自分にとってもビジネスチャンスとは言えない。成長ポテンシャルが本当にある企業なのか、そこの見極めはとても大事です。それこそ経営者の器が試される。本物かを見極める力はとても大事です。

 

Q:具体的に、「本物」といわれる経営者とは?

 

森本 世の中のベンチャーキャピタルや投資家の方々皆さんが言っていますが、何に投資しているかというと、経営者の人間性が最も重要です。


誠実で素直で周りにいる人への感謝の気持ちを伝えることができるヒューマンスキルを投資家は見ています。要は人間力がある人です。

 

Q:森本さんご自身は、これからどういう会社、人を応援していきたいですか?

 

森本 それは、ビジョンだけでなく、強いチームを構築している人です。1人でやれることには限界があります。経営チーム、CXOのクオリティや補完関係は見るべきポイントとなります。

いかにスタートアップで人材を集められるかも運でもあり、大切な部分だと思います。

 

Q:その裏返しで、残念無比なスタートアップ企業はどういったものが挙げられますか?

 

森本 それはとても難しいですね。敢えて言うと、たとえば創業者の語るビジョンが、表面的だったり、結局、「なんのためにやるのか」が自分に向いている人。「有名になりたい」「お金持ちになりたい」というベクトルだと人はついてこないです。

 

それともちろん、先に述べた市場性も大事です。世の中から必要とされるビジネスであることは重要です。このコロナの影響でよりこのことが浮き彫りになったと思います。

よって、①経営者の器 ②経営チーム ③必要とされるビジネス(市場性)の3つに着眼されると良いと思います。

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