外資系金融機関からMBA後にアマゾンに転職し起業してみた

  • LINEで送る
外資系金融機関からMBA後にアマゾンに転職し起業してみた - アイキャッチ画像

新藤徳子様。慶応義塾大学卒業。徳島県産まれ、ロンドン育ち。2011年から5年間外資系金融機関でキャリアを始める。NSEAD MBA留学後、インターナルコンサルタント(戦略コンサルタント)としてアマゾンジャパンに入社。その後、プロダクトマネージャーを経験。2020年に第一子を出産し、産休に入る。同年末、産休中に出会ったフランス人女性と株式会社Ekolokal(エコローカル)を立ち上げる。現在はアマゾンを退社し、エコローカルの経営に専念。

外資系金融機関からMBA後にアマゾンに転職し起業してみた

アマゾンジャパンでの、インターナルコンサルタントというキャリア 

Q:アマゾン時代のインターナルコンサルタント業務について質問させていただきます。

   業務内容、社内でバリューを出したエピソード、外部戦略コンサルタントよりも社内コンサルタントを起用することのアマゾンにとってのメリット、デメリットを教えてください。

A:仕事内容は、基本的には外部コンサルタントと同じ仕事ですね。案件は、根幹からビジネスのやり方をひっくり返すような提案からライトな提案まで様々ですが、フルガリティなアマゾンでは、内部コンサルタントであっても人件費や時間を使ってる以上はきちんと結果を出していかなければいけないので、そのような環境でもバリューをきちんと発揮してきたと思っています。

メリットは柔軟性とコストを抑えられることですね。外部で雇う時の方が仕事単価はやはり高くつくと思います。その分、プロジェクト案件に対していただいた提案を断ることはあんまりできないですよね。そういった意味では、内部の方が柔軟性もあるし、コストも少し抑えられますね。

デメリットは、会社の体力や規模が大きくないと内部でコンサルを持つ意味がない点です。コンサルはそもそも利益を上げない部隊なので、それでもメリットがあると言えるほどの大きな会社でなければ、デメリットになると思います。

外資金融とアマゾンのカルチャーの違いとは? 

Q:外資系金融機関とアマゾンの両方を経験されて感じた企業カルチャーの違い、アマゾンに入った後、ご自身のビジネスケイパビリティ、スキル、マインドセットが変わって良かったと思うポイントについてお聞きしたいです。 

A:銀行は外資系でも日本の銀行でも人のお金を預かって成り立っているので、トレーディングフロアにまで行っても1円単位まで勘定するくらい数字に対して厳しいです。

私は為替を担当していましたが、間違えてプライスを出してしまった時、まるっきしそれをひっくり返して訂正することはできないです。マーケットは常に動いているので。だから、プライスが変わっての近いとこでやり直しをします。

例えば、買ったものだったら売る、売ったものだったら買うとか。 厳しいけど、慣れてくると向いている人は上に上がれます。その反面、クリエイティブな発想はあるに越したことはないけれどなくてもいいですよね。きちっとどんどん成果を出せる人が伸びる世界でした。

それに対して、アマゾンは良い意味でも悪い意味でもまだスタートアップなのかなという印象でした。規模はかなり大きくなっていますが、今まで経験した2チームだけでもカルチャーが全然違いました。銀行並みにきちっとしているチームもありますが、ご想像されている通りちょっとカオスなチームが多いです。

アマゾンで1番驚いたのは経費の精算です。銀行だと6ヶ月の定期の申請をする際、途中で辞めたりする場合は余分に申請した分の返金手続きをします。でも、アマゾンは何よりスピード感が大事なので、上司にその手続きは不要だと言われました。

「そもそもその計算をして戻してる時間が勿体無い。それってビジネスにおいてopportunity
risk
だよね。」と言われました。

1円単位よりも、もう少しステップバックして、その細かい作業を行なっている間に世界はどう動くとか、business opportunityを見逃していないかを常に意識することが大切です。

最初は戸惑う人もいるかもしれないですが、私は銀行からの基礎もあり、戦略コンサルタントでカチッとしたチームにいたからこそ、今のカオスなチームでも楽しめています。でも、人によるかもしれないので、雰囲気はインタビューで確かめてみてくださいね。

環境問題との出会い :車の排気量より、牛のゲップを何とかせよという怒り 

Q:地球や環境問題等を自分にも関係のある問題として捉えるようになったタイミングはいつでしたか?

Aロンドン育ちなのもあり、学校のチャリティでは、お小遣いがたとえ少なくても寄付しようという風潮がありました。寄付先としては、アマゾンの熱帯雨林を守るNPOの団体や、WWF(世界自然保護基金)のような野生動物を守る世界的な団体などがありましたね。それによって、

「自分には見えてなくても、地球には様々な問題がある」というマインドセットは小さい時からありました。

でも、ビーガン、ないし環境問題が自分の問題になったのは恥ずかしながらつい最近で、ビーガンになってからです。環境、動物、健康面について調べるうちに、お肉を食べる理由が1つも思い浮かばなくなりました。そこから、「環境問題は他人事ではない!」と思うようになりました。

最近、温室効果ガスの数字が色々出回っていますが、低く見積もっても世界全体の温室効果ガスの14.5%以上は家畜産業から排出されています。牛のゲップとかそういうのも含みますけどね。でも、よく温室効果ガスの排出の原因として挙げられる車の排気量って実は20%弱で、家畜産業とほとんど同じなんです!

それなのに、車じゃなくて自転車とか公共交通機関を使って排気ガスを減らそうとよく言われてますよね。でも、「肉もうちょっと減らしてください」は聞いたことないです。

「これってなぜこんなに無視されてるんだろう?」と怒りを感じた時、環境問題を自分の問題として意識し始めました。ギャップを見ると動かないではいられないですね。 

Q: ありがとうございます。実際、温室効果ガス排出の原因として車に比べて畜産業が言及されないのはなぜでしょうか?

A: 政府が癒着しているとは言えないけど、垣間見える瞬間がないとは言えないですね。

例えば、コロナで外食する機会が少なくなり、インバウンドが減って和牛の需要も減りました。

そこで、政府は1万円払ったら1万5千円〜2万円の和牛が買える券がもらえる和牛権を発行しようとしていました。

私も猛反対の署名をしましたが、これはビーガンかどうかは関係なく相当な猛反対があったようで、一旦取り下げられました。代わりに、定期的に需要がある子ども達の給食で和牛を使うことになったみたいです。

このようなニュースを見ると、完全に政府の癒着だというわけではないにしても、疑問が浮かぶことはたくさんあるので、その辺りを気にしながらニュースを見てほしいです。

サスティナビリティを巡るビジネス機会はどこか?ESGSDGsの商機に関して

QESGSDGsopportunityについて市場も大きくなっており、様々な企業が右往左往しています。サステナブルに関する社会の変化、いざbusiness opportunityという意味ではどのような点に注目されていますか?

A私は基本的にビジネス=価値だと思っていて、価値があるところにお金が流れると思っています。このトピックに関してだと、エコ後進国の日本とエコ先進国のヨーロッパとのギャップを埋めていくことに非常に価値があると考えています。

1つ例を挙げると、ヨーロッパでは今年の73日から使い捨てのプラスチックはすでに禁止されており罰金等もある一方で、日本はようやく3月に法案として決めて、現在具体的な内容をディスカッションしているところです。

さらに、法案の内容を見ると、完全に禁止ではなく、事業者の規模を配慮して5トンまでなら出しても良いそうです。日本は90%以上が中小企業なので、ほとんどの会社が5トンに満たないのは明らかですよね。

でも、今後も日本はエコ先進国とのギャップを埋める動くと思うので、そのギャップを埋めることがこの分野におけるbusiness opportunityだと思っています。

環境へ配慮した包括的サービスの提供:動物性の食物を食べることによる環境面への負荷を解消したい 

Q:シンドウさんはアマゾンを辞めて起業されるわけですが、どのような経緯で産休中にエコローカルEkolokalに関わることになったのでしょうか?

A1つは、vegginoのというビーガンのサイトを運営していたことがきっかけです。あるフランス人女性の方から、vegginoでの取り組みや想いをポッドキャストで話してもらえないかと言われました。

彼女は月に1回、日本を拠点にグリーンチェンジメーカー、エコ、サステナブルな取り組みをしている人に話を聞いているそうで、なんと私はゲスト2人目として招待してもらいました。彼女とはそのような経緯で出会って意気投合し、今はEkolokalco-founder(共同創設者)です。

もう1つは、彼女には脱プラスチックやゴミ削減、オーガニックなど環境へ配慮した包括的なサービスを行いたいという熱い思いがあったからでした。以前から、動物愛護よりも、動物性の食物を食べることによる環境面への負荷を見て不安を感じていました。また、徐々に食以外の面でも環境へ優しい方向にフォーカスできることがしたいと思っていたので、産休中にも関わらず面白そうだったので飛びつきました。 

もっと多くの人に、SDGsをもっと身近に感じてもらうために大切なこととは?

Q:以前、私はSDGs・サステナブル商品をSNS等のツールを使って発信していましたが、他の投稿と比べてエンゲージメントが低かったり、同世代から関心を持ってもらうにはまだまだ難しいと感じました。

シンドウさんは、サステナビリティにフォーカスした活動をされていますが、若者にサステナビリティに興味を持ってもらうためにどのようなことを心がけていますか? 

A若者に向けてに限らず、その人にとって意味のある話になるように心がけています。最近はサステナブルやエコについての発信が増えています。でも、地球が1.5度暖かくなると言われても正直ピンとこないですよね?私も「クーラーの1.5度と変わらないじゃん」という感覚でした。

情報を伝える時も、サステナブルな商品の良さを伝える時も、読み手や伝えたい相手にとってピンとくるような等身大の情報を伝えるようにしています。金銭面でも健康面でも何でも良いと思います。実際に読んで「なるほど!」と思ってもらえるように、有益で面白いことが大切です。

女性キャリアの悩み事 ~仕事とライフイベントは分ける?分けない?~  私がワークライフバランスという考えを捨てた理由 

Q:シンドウさんは、激務で知られるアマゾンでお子さんを育てながら働かれてこられましたが、女性のライフイベントとお仕事はどのように両立されていますか?

A:そもそも結婚や出産を、それぞれの分野で考えてないです。もともと新卒の時は、いつ結婚して、いつ出産してなどとプランを立てていました。でも、ある時から人生を分けなくなりました。全体の人生の中で、たまに働いてる時もあれば、子どもを産んでる時もある、といった考え方になってからはワークライフバランスという考えは持たなくなりましたね。

「仕事も楽しい!育児も楽しい!他にやってることも楽しい!」のように全部楽しければ分ける必要はないと思っています。

20歳の自分へメッセージ:人生は一見寄り道に見えても、寄り道じゃない 

Q:アマゾンから起業されて、サステナビリティやビーガンを意識した会社をされていますが、今振り返って20歳の自分に伝えたいことはありますか?

A: 「一見寄り道に見えても、寄り道じゃない」ということを伝えたいです。自分の良いと思った道を楽しんで歩んであげれば良いのでは?と思います。

例えば、周りより遅く出世することは一見寄り道に思えますよね。でも、実は寄り道したからこそ人生の良いものに出会えたと思っています。 

実は私、INSEADに合格していたんですが、仕事が楽しすぎて行かなかったんです。「今は行きたくないので後で行かせてください!」と無理を言って半年遅れてMBA留学しました。

でも、遅れて留学したことで今の旦那に出会ったんですよ。且つ、彼が元々ビーガンで、私もビーガンになりました。彼との出会いのお陰で今の私があるというのは過言ではないです。 

半年間の寄り道で、MBA取得が半年伸びることを不安に思う時もありました。でも、「仕事が楽しいから、今は行かずにここにいたい!」という直感をちゃんと信じて良かったと思っています。

「自分が少しでもこっちが良いと思ったものを素直に信じて、自信を持って歩めば良いよ」と伝えたいですね。 

SA感想

今回のインタビューで印象的だったのは「畜産業による温室効果ガスの排出量が問題視されていないこと」でした。環境問題に限らず社会課題に向き合う中で、物事の本質を見逃さないことが非常に大切だと学びました。

また、これまでのキャリアで様々な経験を積まれてきたシンドウさんの「一見寄り道に見えても、寄り道じゃない」という言葉には非常に重みがありました。自分の直感を信じて行動を起こすことが、また次のチャンスを掴む一歩になると感じました。

 

コメントを残す

*

CAPTCHA