
PEのスモールキャップファンドへの転職志望者が知っておくべきこと
日本のPEファンドは大半がスモールキャップファンドです。ミッドキャップファンドもスモールキャップを買って大きく育てる案件が増えてきましたが、以下ではスモールキャップファンドへの転職志望者が事前に知っておきたい特徴を解説致します。
案件が多い~仲介も発達している
過去4年間で、PEファンドによるスモールキャップ案件は300件、ミッドキャップ(定義はバラバラですが、ここではエクイティサイズ500億)は30件、それ以上のビリオンダラーディールは一桁に減ります。案件の多さがスモールキャップ市場の特徴ですが、今では仲介業者も増えマーケットが効率化していますので、ビッドになることがほとんどになってきています。
ファンドレイズは苦労する
意外と知られていないのが、スモールキャップファンドはファンドレイズに苦労が多いということです。というのもファンドサイズが100億程度の小さなファンドが多いため、一回の投資サイズが大きい年金やソブリンウェルスファンド、エンダウメント、保険会社など大口の投資を受けづらく、地銀など一口5億や多くても20億くらいの出資をするFoF(ファンドオブファンズ)や保険会社から、頑張ってお金を集めてくることになります。
バリュエーションは低めだが、レバレッジも低め
スモールキャップ案件は、数も多いことからバリュエーションは高くなってきているとはいえ、比較的低めです。ラージキャップが11倍(EV-EBITDA倍率)、ミッドキャップが8~9倍、スモールキャップが6倍というのが相場ですが、徐々に上がってきています。なお小型案件のLBOローンはりそなやあおぞら銀行が中心であり、メガ3行にとってはサイズが小さすぎて融資対象にならないことが多いです。よってスモールキャップ案件は、バリュエーションは低いが、レバレッジ比率も低い傾向にあります。
社長選定で5割は決まる
社員数が20人や30人、50人といったサイズのことも多いため、社長をはじめ経営陣が会社の全体を隅々まで見渡し、管理します。社長の影響力が会社の隅々までいきわたることと、多くの場合小型案件は人材難に苦しんでいることから、社長の選定で案件の成否の半分以上が決まるというのは、多くのバイアウトファンドが異口同音に口にする真実です。
ハンズオンで経営全体に参画しやすい
KKRやブラックストーン、カーライルではなく、スモールキャップファンドでのキャリアの方が、自分の適性やキャリアビジョンにフィットしている人も確実に存在します。とくに、経営の隅々まで目をいきわたらせて、色々な業務に身を投じたい人にはもってこいのキャリアになりえます。
経営も、ラージキャップに比べるとそれほど複雑な組織でもないので、若手のプライベートエクイティアソシエイトにして、いきなり地方の投資先の社長に抜擢されることもあります。
なおスモールキャップ案件は、オーナー企業がやりたい放題適当な経営をしており、当たり前のことが出来ていないツッコミ満載の企業であることも多いため、経営改善のためにひけるレバーが多くてバリューアップしやすいことも、その投資戦略が魅力的になる一因とも言えるでしょう。たとえば投資後に行う典型的なこととして、
- 取引先(地銀を含む)に説明(ファンドに偏見を抱いて毛嫌いするステークホルダーもいるため)
- 原価を把握して、儲かるところに経営資源を投入し、
- 管理会計ができていないのできちんとした管理会計を導入し、
- 社長や優秀な社員の一部のノウハウを可視化して組織に浸透させる
といったことが、スモールキャップ案件で投資後に行う典型的な事例であるように思われます。