
プライベートエクイティ投資の投資ビークルに関する話は、ややこしくて勉強するのがゲンナリするものです。若手は自分がアサインされている案件のことしか頭にないことが多く、PE投資の両輪のもう一つであるファンドレイズやファンドマネジメントのことを、ほぼ知りません。投資先とおなじ案件にアサインされたチーム間の人脈だけでは、PE業界で大成しません。以下ではプライベートエクイティ投資チームの若手が大抵わかっていないことも多い、「投資事業有限責任組合」に関して解説致します。
投資事業有限責任組合とは?
プライベートエクイティファームの投資チームは、自らの案件に集中しがちで、ファンドレベルのマネジメントに関して、基本的な知識がないことが多いです。以下ではPEファンドの契約条項やスキームの重要な基本をおさらいしておきます。
まずPE投資では二重課税を避けるために、投資ビークルは株式会社にはなりません。そらそうですよね。例えば投資先にはちみつ屋さんがあったとします(目の前にはちみつがたまたまおいてあるからなのですが)。
このはちみつ屋さんは毎年、税金を払っています。そのはちみつ屋さんを売却すると、その売却収入が投資ビークルに入ってくるのですが、仮にビークルが株式会社だと、もう一度法人税を払う必要が出てきます。だからこそ、投資目的会社であるSPCが設立されるのです。
投資組合員の役割に、GPとLPの役割の差を認めたのが投資事業有限責任組合
そのSPCに出資するのは、SPCを運用する責任を持つGPと、そこに(基本的には)出資するだけのLPがいます。LPとはLimited Partnerの略ですが、文字通り有限責任であることが重要となります。
仮にこれが無限責任であれば、例えばファンドが銀行に借金して返せなければ、出資者にもその責任が負わされてしまいます。だからこそ、有限責任にしなければ出資者を集めるのは難しいのです。
なお投資のビークルで最も簡単なものは「任意組合」です。ただし任意組合の問題点は、有限責任性が担保されていません。すると、対外的な債権者に対して組合員が等しく責任を負わなければならなくなります。有限責任性が担保されていないので、プライベートエクイティのビークルにはならないのです。
そこで、特別に認められた組合形態が、投資事業有限責任組合です。これは上記の任意組合では出資者の有限責任性が担保されずにPE投資がやりにくいということで、つくられた法律に基づきます。
この「投有責組合」は特別法に基づき作られていますが、その第31条に書かれている分野以外投資出来ない、また基本的にほとんど日本国内に投資する必要があり、海外投資メインのファンドでは適さない形態です。ですが、国内の企業に投資するのであれば最も一般的であり、国内PEでは基本的にこのビークルが使われます。
LPA:Limited Partnership Agreementに関して
これに対しLimited Partnershipは、ケイマンやアイルランド、デラウェア州などのタックスヘイブンを使い、海外投資に使います。またLPが海外の投資家であるとき、このビークルが使われます。
これらビークルでお金を集めて投資する時、突然投資が始まるわけではなく、ファンド契約(LPA=Limited Partnership Agreement)が結ばれます。
投資事業有限責任組合契約の場合は、経産省がモデル契約を出していて、バイアウトファンド用のものやベンチャーキャピタル用に公表されているものがあります。それを元に、各ファンドの個別事情に応じて改変していきます。