プライベートエクイティ業界理解Q&A:その4

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プライベートエクイティファンド転職対策テキストユーザーの皆様より寄せられました質問に、執筆陣の一人である現役の大手PEファンドプロフェッショナルが回答します。

このQ&Aは、プライベートエクイティファンド転職対策テキストユーザーの皆様から寄せられた質問に対し、執筆陣の現役PEプロフェッショナルが回答するものです。第一回第二回第三回のQAも是非、ご参照ください。

LP投資家がGPに望む役割とは?

質問:「日本のバイアウトで共同投資案件へのアクセスが重要でしたら、この点、LPの皆さんの目となり耳となり、「我々が知らない案件は存在しない」という状態に持っていきましょう」との記載が御座いますが、こちらGPとして具体的にLPに対して何を・どのような形で提供するご想定でしょうか。

(「我々が知らない案件」というのは、➀GPがバイアウトした案件、②GPの初期検討段階を含めた潜在案件、③②に限らず他のGPの案件のいずれを指しておりますでしょうか。②の場合、潜在案件を逐次、どのような形でLPにレポーティングされますでしょうか、また、GPで見送りをしたくてもLPからプッシュされる場合には検討に移る形になりますでしょうか。

③の場合、他のGPの案件へのアクセス、情報開示等を含むレポーティングはどのような形で可能でしょうか)

回答:②及び③です。海外のLP投資家が日本のバイアウトファンドに入れる際、リターンだけでなく、日本のビジネスコミニュティ、投資家コミニュティに深くアクセスすることが目的のこともあります。その際、投資リターンはそこそこでよくて、そのLP投資家の本業を支援するようなアシストなどが暗に求められることもあります。

「我々が知らない、、」は、どちらかといえばマーケティング文言で、「私たちに任せれば、他のGPに任した時より、案件を広くカバーします」程度の意味です。

投資期間中に、市場シェアでどのくらい大きくすることを目指すのか?

質問:P.62 ・コンシューマー系でFragmentedなSub-industryに属する企業を買収した場合のBolt-onを想定されているとのことですが、Fragmentedであるが故に、投資保有期間を通じて実施できるM&Aの数も(実行部隊及びPMIに割かれるリソースの観点等からも)限定されると思われますが、実際に市場シェアトップの企業を作ることが可能なものでしょうか。

また、例示頂いた食品やレストランにおいて、Fragmentedな市場におけるシェアトップになることが、Value-upの観点から重要になりますでしょうか(規模の経済が働くか否かが重要であり、シェアはあまり有意なファクターではないとも思われます)

回答:ご指摘の通り、困難なことが多いです。なおトップシェアまで行かずとも、トップ1, 2位の会社にとって、「この会社を買収されたら、もう一位に慣れない」というサイズまで大きくすることで、戦略的投資家にとってのバリュエーションを高められるケースもあります。

プライベートエクイティ投資のGPコミットメントとは?

質問:P.65 ・GPコミットメント(%)の計算方法に関してご確認させてください。GPコミットメントが50、ファンドサイズが500の場合に20%となるのは、どういう計算方法が背景に御座いますでしょうか 。

GPコミットメントがなされた場合、投資リターンに対するGPへのリワードの観点では、LP投資分と同じ条件となるとの理解で宜しいでしょうか(GPコミットメント分との間で、例えばハードルレートが異なる等の取り扱いになっていないかを確認させて頂きたい趣旨となります)

回答:ご指摘ありがとうございます。ファンドサイズ500でGPコミットメントが50ですと、%は10%で正しいです。ご指摘に感謝申し上げます。なおリターンは、LP投資分と基本的には同等です。

ただ、GPコミットメント分にはかからないコストがあったりもしますので、多少変わってきます。

プライベート投資先の海外進出について

質問:P.70 ・「海外進出支援させてニューヨークに上場させたかった」との記載が御座いますが、ご想定としては、海外拠点・販売実績がほぼ無い状況から、投資保有期間である5年前後で現地販売(開発)機能の開拓を行い、海外の個人・機関投資家からの一定の知名度を勝ち取り、ADR?(Level 2 or 3?)の形で上場させることをご示唆頂いておりますでしょうか。

こちら実際のケースに基づくものであれば、具体的な企業名をご教示頂くことは可能でしょうか

回答:実例ではありませんが、海外進出ストーリーを入れてバリュエーションを高めることはあります。なお海外進出がごく僅かでも、それをアップサイドストーリーに組み込むために、海外に支店を出すケースも見受けられるように思われます。

PE案件のメザニン部分に関して

質問:P.75 ・メザニンでSpreadが300Bpsとの記載が御座いますが、こちらは一般的な水準になりますでしょうか(メザニン投資家のリターンの観点から、トータルが3%ですとやや受け難い印象を持っております。

一方で、仮に300Bpsが可能な案件だとすると、メザニンをそもそも取り入れずにかなり低廉なSpreadでTLA/TLBのみで賄われるとも思われます。こちら一般的にはPIK含め8%程度を要求される理解でしたが、Cash-Interest部分のみを指しておりますでしょうか)

回答:メザニン部分のスプレッドも下がってきていますが、ご指摘の通り300はキャッシュ部分だけとしても低く、ご指摘を参考に今後改良を検討させていただきます。

GPは、他のPEファンドのLPAを読む機会があるのか?

質問: P.79 ・「LPAを読み比べて」との記載がありますが、こちらは一般的に複数のPEに内定をもらった際に、受領したOffer Letterにおいてキャリー等に関連するLPAの条項が記載されており、それを読み比べたとのご趣旨で宜しいでしょうか。

又は、GPとしては秘匿性が非常に高いものですので、可能性は相当程度低いものの、PEファーム間を転職との記載もありますので、GPとして働いていて、複数のファンドのLPAを読み比べる機会が存在するということを示唆されておりますでしょうか。

回答:GPとして、他社のGPのLPSを読めることはほぼありません。ただPEコミニュティにも食い込んでいると、他のGPで働く友人やLP側の友人を介し、キャリー条件の違いを知る機会も存在しうるということを意味します。

プライベートエクイティファンド投資LPAのFor Fault/Non Fault Divorce条項に関して

質問:P.80 ・For Fault/Non Fault Divorce条項に関して、こちら例えばFor Faultの場合には、最低75%(投資金額ベースと思料)のLP間の賛同を以て投資契約を解約となりますが、発生頻度としては皆無と思われるものの、仮に発生したとして、75%以上のLP投資分を返却する必要性が生じた場合、既に対象企業に投資してしまっている部分が相当程度あるとして、即時の流動化は出来ないとの理解です。

このような事態でLP投資家にどのように(即時)返却を行うことが想定されておりますでしょうか(又は、数年かけてポートフォリオを解消していく過程でLPに返却することにもなり得るかと存じますが、その際の返却額はプロラタとなる想定でしょうか)

回答:ご指摘の通り、理論上は生株の分配となります。しかしながら未上場企業投資先の株を配られてもLPとしては困るので、非常に嫌がられるパターンです。ただ、まだ投資前の段階ですと、実際にLPの発議でファンドが解散された実例を認識しております。