PEファンドへの転職面接前に知りたい、PEのLP投資家の3大視点とは?

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プライベートエクイティファンドへの転職面接を控える人は、面接では何を聞かれるか等の、近視眼的な視点で対策をしがちです。しかし目線が高く視野が広い候補者は、転職志望先の顧客であるLP投資家が、どのような視点で数あるPEファンドから数社を選び投資するのかを理解した上で、「なぜ自分がそのLP投資家の選択理由に合致するのか」を巧みにアピールします。以下ではPEファンド転職面接前に知りたい、”志望先PEファンドの顧客”、LP投資家の3大視点を解説致します。

貴方は、”顧客の顧客”ならぬ、”転職志望先の顧客”を理解されているでしょうか?プライベートエクイティファンド(”PEファンド”)への転職面接を控えておられる方は、そのPEファンドに自分が選ばれるためには、そのPEファンド自体がお客であるLP投資家に選ばれるために、自分が貢献できることをアピールできるかが肝心です。以下では、プライベートエクイティ転職徹底対策テキストの第五章”LP投資家からの典型的デューディリジェンス質問100パターン”から一部抜粋し、LP投資家のニーズにリンクしたPE転職面接アピールポイントを解説致します。

1.そのPEファンドは、トップ25%のパフォーマンスを出せるかどうか

LP投資家(Limited Partners=PEファンドへの出資者)は、大半が機関投資家です。

つまり、自分が投資の意思決定(つまりそのファンドへの出資決定)をしたファンドが、同一市場で同じような戦略のPEファンドへの出資に比べ、優れた判断であったことを社内外で説明しなければなりません。

たとえば、日本のバイアウトファンド一社に50億を投資するLP投資家は、社内の投資委員会で”なぜインテグラルへの投資が、アドバンテッジパートナーズやポラリス、カーライルジャパン、ユニゾンキャピタルへの投資に比べ、優れた判断であったか”を、80頁を超える分厚い資料(実話)で根掘り葉掘り、詳細に説明しなければならないのです。

勿論、日本の中だけでも何十社に増えたバイアウトファンドからその年のヴィンテージで最も高いパフォーマンスを上げるファンドを選ぶのは、至難の業です。実際のところ投資には運の要素も大きく働くため、LP投資家もそこまでは期待していません。

ただ少なくともTop Quartile、つまりリターンの数字比較において、上位25%の業績を残すファンドに出資したかどうかが、大きなポイントになります。

なぜ上位25%なのか?それは、ことの真偽は別として、”トップ25%に継続的に入り続けているファンドマネージャーは、次のファンドサイクルでもトップ25%のパフォーマンスを示す確率が高い”という、プライベートエクイティ業界の”常識”があるためです。

このことは本質的には、貴方は数いるプライベートエクイティ投資プロフェッショナルの中で、上位25%に入る人材であることが重要であることも意味します。

念のため申しておきますが、PEファンド側が採用の時に、”この候補者は業界でトップ25%の投資プロフェッショナルに成長できるかどうか”を明示的に考えて採用しているわけではありません。私も複数社でPEプロフェッショナルとして採用面接にも携わってきましたが、「ある程度基準を満たしていたら”チャーミングで一緒に働きたい人かどうか”でバクっと決めている」というのが実態です。

しかしそれでも、ディールソーシング、バリューアップ、ないしファンドレイズというPEビジネス3大機能のどれかでTop Quartileを目指せる自信が無ければ、仮にPEファンド転職に成功したところで、鳴かず飛ばずで数年後に放出されることになるでしょう。

2.そのPEファンドは、不祥事リスクの低い、信頼できるファンドかどうか

PEファンド投資は、一度投資すれば、実に10年にわたる長いお付き合いになります。

その間、PEファンドは単にトップ25%のリターンを出せばいいというものではありません。重要なのは、ネガティブサプライズなく、安定的なリターンを出すことなのです。

というのも、LP投資家は何十、下手したら何百という数多くのファンド投資を行っているため、各ファンドのモニタリングだけでも相当な時間とコストがかかります。

したがって、”このファンドは一度投資したら、10年間放っておいてもおかしなことは発生しない”という安心感が、投資担当者にとって非常に重要なのです。

ちなみに、PEファンドの不祥事は多岐にわたります。
パートナーの資金不正流用により解散に追い込まれた大手外資系ファンドもあれば、社員がインサイダー取引に手を染めたケースもあります。

パートナー同士が争ってキーマンなのに退社してしまったケースもあれば、凄いケースではライバルファンドの女性パートナーと不倫関係の恋に落ち、駆け落ちして消え去るという、信じられない事例も某国市場で発生しました。

不祥事が起こるたびに、LP投資家は社内及び、そのLP投資家にとっての出資者に延々と決まりの悪い説明をしなければなりません(→そんな不祥事を起こすPEファンドに投資したということで、信頼に傷がつく)。だからこそ、極力レピュテーションリスクの少ない、安心できるファンドが好まれるのです。

この意味でPEファンドとしては採用する候補者に対しても、全体的な信頼感の有無を非常に重視した採用決断を行います。

3.そのPEファンドは、LP投資家の戦略的ニーズへのソリューションになりえるか(たとえばPEの共同投資)

LP投資家が出資するPEファンドを選ぶとき、単なるファイナンシャルリターンだけでなく、戦略的理由で出資先を決めることも多くあります。

中でも一番多いのが、”共同投資案件を引っ張ってきてくれるパートナー探し”という側面です。

これは、プライベートエクイティの共同投資(GPがLPに、投資金額の一部をノーフィーノーキャリーで共同投資を持ち掛ける。詳細はPE転職徹底対策テキスト第一章参照)案件の有無が、LP投資家自身がファンドレイズする際の重要な成功要素になるからです。

ここでプライベートエクイティプロフェッショナルにとって重要なマインドセットは、プライベートエクイティファンドが提供するサービスは、ファイナンシャルリターンだけではない、多方面での戦略的パートナーシップだということです。

確かに、メインの仕事はバイアウト投資で3倍/25%IRRのリターンを挙げることです。

しかしそのお付き合いを起点に、LP投資家の多様なニーズを掘り起こし、広範なパートナーシップを結んでいくことの重要性を広く長い視野で理解できているかどうかが、凡庸なPEファンド転職志望者と、光り輝くPEファンド転職志望者の分水嶺なのです。