プライベートエクイティとベンチャーキャピタルの違い

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プライベートエクイティファンドとベンチャーキャピタルの違いについて質問される方はよくいらっしゃいます。転職志望者にとって重要なのは、投資先との関与の仕方の違い(VCはマイノリティ投資なので投資後はほぼ外野ですが、バイアウトはコントロール投資なので毎月の取締役会内外で積極的に関与します)や、そもそも投資するときのアプローチの違いを正しく理解することです。以下ではPE・VCの特性の違いから、必要とされる経験の違いを、そのキャリア選択へのインプリケーションにつなげて論じます。

プライベートエクイティとベンチャーキャピタルの違いとは?

プライベートエクイティとベンチャーキャピタルをこんがらがって使う方がたまにいらっしゃいますが、その違いをここでまとめておきます。

広義で言えば、ベンチャーキャピタルもプライベートエクイティです。プライベートエクイティとはその名の通り、プライベートな株式であり、反対語はパブリックエクイティ、つまり公開株です。

つまるところ、未公開・非公開株式はプライベートエクイティに当たるわけですが、企業の成長ステージにおいて様々なアセットクラスに細分化されます。

まずスタートアップ、アーリーステージはベンチャーキャピタルと呼ばれ、立ち上げが終わり、成長期に投資するのをグロースキャピタルと呼びます。(この境は曖昧なのですが。)

次に、成長期が終わり、安定期に入ったものを51%などコントロール支配権ごと買収する投資を、バイアウト投資と言います

そして成長期が終わり停滞期、後退期の企業をリストラして投資するのを、ディストレスド投資などと呼びます。

キャピタルの性質上、ベンチャーキャピタルはまだアイデアべ―スのシードファンディングから、コンセプトが証明されてMVP(Minimum Viable Product)が完成したシリーズA, 10億、20億といった単位のバリュエーションで次に行うシリーズBなど様々な段階があります。

アーリーステージの投資の仕方としては、総じて売上や利益、財務諸表がついてきていないので、それこそアイデアレベルやチームの質、創業者のクオリティを推し量るのが投資委員会での主要な業務になります。

これに比べ、プライベートエクイティの中でもグロースキャピタルは売上や利益が立っているので、より数値予測やバリュエーションの根拠が重要になってきます。

これがバイアウトになってくると借り入れの返済速度やリストラによるキャッシュフローの創出、よりよい条件でのリファイナンスやLBOモデルの構築など、必要な要素が変わってきます。

またベンチャーがリスクの高い成長案件へ投資するのに対し、バイアウト案件は安定フリーキャッシュフローの出るビジネスが好まれるので、投資先としてもキャッシュフローの安定したビジネスの割合が増えてきます。

キャリア選択へのインプリケーションとは?

答えを端的にまとめると、ベンチャーキャピタルは広義にはプライベートエクイティの構成要素です。しかしバイアウトなどにくらべ規模が小さく、成長ステージでリスクが高く、投資はせいぜい10%や15%などをアイデアやチーム、人間ベースで行われることが多くなります。

これに対しバイアウト投資では、安定キャッシュフローの見込めるビジネスに対し、51%など支配権のあるエクイティを買収し、積極的に経営陣を変えたりと経営のコントロールを握るという点が、大きな違いになります。

では最後に、この違いの、キャリア選択へのインプリケーションは何でしょうか?

ベンチャー投資、特にアーリーステージのモノは、数字を見るというより人を見るビジネスなので、実は人材紹介業出身の方が結構ベンチャーキャピタリストに転じて成功しているケースが散見されます。これは、IBDやMBB出身、トップMBAでなければ入れないことが多いバイアウトファンドと大きな違いです。

よって、「数字は苦手で金融のキャリアがないから投資家なんて自分には、、、」と思っている方も、ベンチャー、中でもアーリーステージは、意外と活躍の場があることをお伝えしたいと思います。(ただ、せめて人の本質と、市場の全体動向の勘所が必要なのは、言うまでもありません。)