
日本のプライベートエクイティファンドの仕組みとは
プライベートエクイティファンドに転職を希望される方は多いですが、意外とプライベートエクイティファンドの仕組みの基本をご存じでない方もいらっしゃいますので、以下に解説します。
ファンド、LP、GP、ポートフォリオの4つをまず覚えましょう。
ファンド額が100億円だとします。すると、ファンドのバランスシートは左側が100億円(正確にはキャピタルコールして投資家から振り込まれなければなりませんが、便宜上こう書きます。)、右側にLP投資家出資分(Limited Partners=資金の出し手)と、GP(General Partner=ファンド運用者)出資分が来ます。GP出資分は最低限2%がスタンダードであり、ブラックストーンなど時には10%くらい、自社のパートナーがファンドに出資している強気のファンドもあります。
日本のLP投資家は、都銀、地銀、信託銀行、DBJなど銀行系、日本生命や大同などの保険会社が中心です。海外からのLP投資家としては、公的年金基金、企業年金、大学基金、ファンドオブファンズ、ファミリーオフィスなどがあげられます。なおGPとしては有名なのが、ユニゾンキャピタルやアドバンテッジパートナーズ、カーライルやKKRなどお馴染みのプライベートエクイティファームです。
さて、このような投資家から集めた資金を、GPが運用担当を担います。具体的に言えば、投資先を探し、投資を実行し、バリューアップを図り、10年以内(時には2年くらいまで伸びますが)にエグジットして資金回収し、投資家にリターンを分配するという大変息の長いビジネスモデルです。
プライベートエクイティファンドのリターン
なおGPはファンド総額に対し、最初の5年間の投資期間は毎年2%前後マネジメントフィーを徴収し、続く5年間は1%から1.5%などに落ちるのが一般的です。次号ファンドが設定されると、前のファンドからのマネジメントフィーはオフセットされることが一般的です。
プライベートエクイティファンドでは、投資家への優先リターンとして年間8%が設定されていることが一般的です。IRR8%を超える分の20%程度を、GPが”キャリー”として受け取り、これが時に、巨額の報酬の源泉となります。
プライベートエクイティファンドの目標リターンは、ネットで2.5%、IRR25% などと言われますが、正直、この水準のリターンを安定的に出しているファンドはそうはありません。なぜだか業界全体が、”2.5倍、25%を目指しています”というのが、慣習になっています。
プライベートエクイティ転職へのインプリケーション
この仕組みを考えたとき、転職志望者へのインプリケーションは、以下の通りです。
①キャリーをもらって巨額の収入が入ってくるかもしれないが、それは10年に及ぶファンド運営が終わった後での話。根気が必要
②長年にわたり、投資家や投資先、同僚と働くので、長期的な信頼関係、長期的な人間関係を築ける信頼度の高さが何よりも重要。正直で誠実だという評判が生命線
③ファンドサイズが大きくなると、かなり安定したビジネス。毎年ファンドサイズの2%前後が入ってくるので、かりに1000億円ファンドだと毎年マネジメントフィーだけで20億くらい入ってくる。5年間の投資期間にわたり、5年で100億の売り上げが確定したことと同じことを意味する。
しかしチームサイズは10人、20人と小さいことが一般的なので、ファンド創業者クラスのパートナーは比較的楽なライフスタイルで大儲けすることになります。(ただし若手のアソシエイトは、給料が低くてもなりたい人がたくさんいて競争的なので、仕事量は減りますが、投資銀行時代よりは給料は下がることが多いです。)