
コロナショック・景気後退局面でプライベートエクイティファンド転職志望者が知るべきポイントとは?
コロナ危機で多くの方々が亡くなる中、就職や転職活動を止める方も多いと思われる。
しかし一方で、長期間の在宅勤務中に「この会社に行かない生活を続けたい」と、転職に踏み切る人も増えるだろう。
プライベートエクイティファンドへの転職志望者が多く集まる当サイトの読者層を鑑み、以下ではコロナショック中と後で、プライベートエクイティ業界がどう変わるのかを解説しよう。
1.投資先をたくさん抱えているファンドは、次号ファンドで存続の危機に
著名PEファンドの投資先である有名な某社も上場が延期された。
そして、ちょうど年度末前にディールをクローズしようと走ってきた案件の多くが、止まってしまっている。
向こう5年間の業績予測モデルがまったく信頼できないものになったためだが、もっと悲惨なのが、まだエグジットする見込みが立っていない、投資間もない既存ポートフォリオ企業だ。
なにせ2020年初頭までの、史上最長のブルマーケットと金融緩和のさ中で買ったので、買値が高いのだ。
ベースのEBITDAが高かったのみならず、EBITDAマルチプルも史上最高水準を更新してきていた。
ここでEBITDAとマルチプルの双方が大幅に落ちるので、PE転職希望者はその希望ファンドが、今後業績悪化する投資先だらけでないか、見定めなければならないだろう。
PE投資家は、マクロ環境のせいだろうと、結局は前のファンドのエグジットリターンを最も重視する。よってめでたく転職しても次号ファンドが無くなる恐れがあるのである。
(まぁ、これまでのパフォーマンスが良ければ、支えてくれる少数の投資家が規模を小さくしてあと1サイクルは支えてくれるものではあるが。)
2.これから投資が始まるファンドにとっては、申しずらいが投資機会は多い
こんな時にプライベートエクイティの投資機会とは不謹慎な!と思われるかもしれない。
しかし投資会社でドライパウダー(これから投資する資金)をたくさん持っているところは、大きな声ではいえないが、内心鼻息が荒い。
これまで12倍超えだったEV-EBITDA倍率は昔の6~8倍に落ちるかもしれないし、基準となるEBITDAも大幅に下がるだろう。
このボトムの時に買いたたき、5年後の回復サイクルでの高値売却に向けて、ディストレスドセラー(資金難で売り手が売り急ぐ)案件が増えることだろう。
しかもプライベートエクイティが得意とする小売セクターが最も打撃を受けているので、昨今のブルマーケットでディストレスド案件にありつけなかった再生系のファンドが、息を吹き返すだろう。
3.景気後退局面で輝くファンドも実は数多く存在
上記の2とも関連するのだが、景気後退局面でジョブオープニングを拡大するファンドは、世界にはたくさんある。
超長期の金融相場が終わり、積みあがった不良債権を買いたたき、DES(デットエクイティスワップ)で会社のコントロールをタダ同然で手に入れ、資産の切り売りと本業のオペレーションアップで稼げるファンドが、日本市場も視野に入れることもあり得るだろう。
(2000年初頭は米系投資銀行や投資会社が大挙して押し寄せ、ゴールドマンのASSGやローンスター、サーベラスが大儲けをした)
コロナショックの真っただ中に、転職やお金儲けのことばかり考えている人などいないと思うし、そう願いたいところではある。
しかし実際は多くのコンサルファームや投資銀行からのファンド転職相談がこちらに数多く寄せられているということも、率直にお伝えしておこう。
皆さんの周りは周囲のコロナパニックをわき目に、次の商機を虎視眈々と狙っているのである。