日本初・ESG投資グローバルベンチャーキャピタル:Mパワーのユニークな特徴

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ゴールドマンサックス日本支社で副会長まで努めた、著名ストラテジストのキャシー松井氏率いるESGベンチャーキャピタル・Mパワー。その特徴を解説します。

拡大するESG市場における、驚異のファンドレイズ

現在、世界でESG関連に割り当てられている金融資産は35兆ドルに上り、これは全金融資産の1/3規模になります。国連のPRIにGPIFがサインして以降、GPIFからファンドレイズしたいアセットマネジャーがこぞってPRIにサインしてESG投資方針を打ち出したため、短期間の間にESGもどきやESGバブルとでもいうべき現象が見られるようになりました。

ESG投資自体は、拡大する貧富の格差、アセットを持つものは富み、給料労働者は貧しくなるという矛盾の中、これまでのような財務指標ではなく、従業員の心身の健康やエンゲージメントの高さ、コミニュティへのエンゲージメントなど非財務情報も重視した投資へのニーズが高まりを受けて伸びてきました。ESG対応を実装することで、売却時に売りやすくなるという側面もあります。

そんな中、昨年27年間も勤め上げたゴールドマンサックスを退社した著名ストラテジスト・キャシー松井氏が、古くからの友人2人と共に立ち上げたMパワーパートナーズが1億5千万ドル相当のファンドレイズに短期間で成功しました。コロナ禍で海外LPとのミーティングや、潜在国内LPとの直接面談がかなわない環境下で、短期間で異例の資金調達成功事例です。

異例と申しますのは、そもそも公開株出身のパートナーがいきなりプライベートエクイティのしかもベンチャーキャピタルと、異なるアセットクラスに投資するファンドに、コンサーバティブな日本の生保や銀行と言った機関投資家のお金は入りにくいものなのです。

しかも、古くからの友人とはいえ一緒にファンド運営するのは初めてなので、機関投資家から「空中分解リスクが高い」ということで敬遠されがちな「ファーストタイム・ファンド」です。勿論、ベンチャーキャピタリストとしてのトラックレコードもありません。また日本初のVCで、シリコンバレーなど海外市場に投資する戦略も、通常は「現地のVCに比べ比較優位が無い」と敬遠されがちです。

これだけの「機関投資家投資チェックボックス」を悉く無視しながら、最初のファンドで160億越えを果たしたのは、ひとえにキャシー松井氏のブランド及び創業チームの強力なネットワーク、そして国内外機関投資家のトップと直接つながっているトップ営業の賜物と言えるでしょう。

Mパワーパートナーズのユニークな特徴

Mパワーパートナーズは投資先がどのような社会課題を解決しようとしているのか、どのようなハイテク技術を駆使して実現しようとしているのか、またその投資先がどのようなESG対応するのか、を重視しています。

例えば投資時点で、投資後半年の間にESGの観点からの改善策の実装を会社側が考え、ロードマップを出すことが求められます。

ここでユニークなのは、会社が何を改善するのが最も業績にとってもRelevantなのかは会社しかわからないというコンセプトのもと、所謂「One fits for all」と同じESGメニューを横並び式に投資先に科すのではなく、投資先経営陣にそのアイデアを出してもらう点だとも言えるでしょう。

また160億というベンチャーキャピタルの一号ファンドとしては破格に大きなサイズのファンドを、14~15という比較的少ない数のポートフォリオ企業に集中的に投資することも特徴の一つです。

世界で、特に日本で急速に拡大するESG投資ファンドですが、その中でも最も目立ち注目される存在であるだけに、投資委員会に於けるESGインテグレーションの在り方や投資先とのエンゲージメントの仕方、また投資先の特徴やトラックレコードなど、そのすべてが市場の衆目を集めるだけに、日本のESG投資市場の発展のためにも大きな注目を集めるESGVCだと言えるでしょう。