
給料的には既に2000万を超えているのでPEアソシエイトになれば、それこそKKRやベインキャピタル、MBKパートナーズでもない限り下がる可能性が高いですが、①労働時間の減少 ②幅広い業務の学習(バリューアップ等)③転職機会の拡大(コーポレートガバナンスを学べるので、社外取締役によい経験・女性社外取締役のニーズが増えているので、女性にとって意外とねらい目)などの理由で、プライベートエクイティ転職を目指す人が少なくありません。
給与などの外的報酬は下がっても、人から感謝されることが多い、自律性が高まる、投資銀行に比べ心理的安全性が高いなどの意味で、内的報酬が高いことも無視できないでしょう。
数多くの外資系投資銀行出身者がPE転職の門をたたく中、志望動機としてどんなことを言う人が多いのでしょうか?もちろん、ご自身の原体験にリンクしていないと話していても聴いていても白々しい話になるのですが、投資銀行ですと以下のような経験談が比較的多くなります。
①自分が手掛けた案件が、その後倒産の憂き目に~バリューアップをやり切りたい
この志望動機は投資銀行やFA出身者アルアルなのですが、自分が手掛けた案件が数年後に大失敗に終わり、切った貼っただけでなく、バリューアップオペレーションをやり切りたいという志望動機が芽生えるというものです。
実際にMA案件は結果的に失敗することも多く、入り口だけでなく合併後のPMIとマネジメント次第だという問題意識から、PE転職を志望する人が多くいらっしゃいます。
②ダメな社長を変えたい~オーナー企業の事業承継案件は、社長がしょぼくて価値が低下
これは①とも絡んでくるのですが、企業価値低下の最大要因は、無能なCEOであることがほとんどです。無能というとかわいそうな響きですが、頭が悪いというわけではなく、ただただ、リーダーシップやマネジメントの素養が欠如しているか、少なくともその業界ないしその企業の現在のステージに相応しいリーダーではないということです。
オーナー企業になると株主と経営者が同じですのでガバナンスもへったくれもありません。傍から見れば完全に失敗している戦略を、経営者の意地とメンツで継続し、会社が倒産の憂き目にさらされるケースも少なくないのです。
このようなとき、社長を解雇しなければ何も変わらないのですが、いざとなったら社長を解雇できる投資家としてのプライベートエクイティファンドの役割が高まっています。
③ガバナンスの担い手になりたい~コーポレートガバナンス強化の担い手に
これまで述べてきたことと関連するのですが、オーナー企業のMAで困るのは、事業計画やファイナンシャルモデルの信頼性が全くないことが多いことです。どう見てもこの社長に交代した後で業績はダダ下がりなのですが、なぜか「来年からV字回復がおこり、業界に大イノベーションを起こす急成長プロジェクション」になっていることも。
デューディリジェンスでその数字の根拠を財務部や社員に聞いても、社員自体が困惑しているので根拠など出てきません。するとMAの仲介側としても、信頼できる財務モデルを作るのが困難なため、かなり適当なバリュエーションモデルを作らざるをえなくなってしまいます。
このような業務をしているうちに、オーナー企業の社長には歯止めになる人がいないこと、伴走者として対等の立場でアドバイスしてくれる人がいないことに問題意識を抱くようになります。
デットガバナンスの終焉と、エクイティガバナンスの重要性
そして従来企業にガバナンスを提供していた銀行は、頭を下げてお金を借りてもらう身分になっているので、お金が返ってきさえすれば経営者に何も言えないことを痛感し、「デットガバナンスの時代は終わった。エクイティガバナンスが日本のコーポレートセクターに必要だ!」という問題意識に変わることが多いのです。
上場すると、投信などは規制で15%までしか持てないので、プロキシーファイトで連合しない限り、社長や取締役の再任を拒むことができません。
これに対しプライベートエクイティのバイアウトファンドは基本的にコントロールを握りますので、社長を監督・モニタリングできますし、いざとなれば経営者をクビに出来るという、強力なガバナンスパワーを行使することができるのです。
ここでは投資銀行やFA出身者が言うプライベート転職志望の典型例を紹介しましたが、面接ではこれらと同じような話をするにしても、違う話をするにしても、突っ込まれたとき、ないし突っ込まれなくても真実味のある具体例で説得力を持たせるべく、ご自身の体験に紐づけてお話になることを強くお勧めいたします。