
パートナーに昇進しても、雇われパートナーと創業パートナーの間には計り知れない格差が存在
プライベートエクイティファームに転職した後、貴方は順調にディールソーシングとモニタリング、エグジットで実績を挙げました。
周囲の社員にもいい人だと認知されており、自分を押してくれるパートナーの御陰で30そこそこでディレクターに昇進。
担当した案件がたまたまヒットしたおかげで、次のファンドレイズのタイミングでめでたく若手パートナーに昇進。御年36歳、この歳で有力PEファンドのパートナーになったのだから、自分のキャリアは一丁上がりかも。。。
しかし現実はそうではありません。まず歴史が長くて古株社員が多いPEファームは、古株パートナーも数多くいるもの。中には投資プロフェッショナルの半数以上がパートナーで、実質全員経営陣みたいな会社も世の中には存在します。
するとパートナーに昇進したところで実質的には渡る世間はボスだらけで、貰えるキャリーも一桁台前半%、GPカンパニーの株に至っては、持っていることに気付かないくらいの割合です。
そう、既にパートナーが沢山いるPEファンドでは、創業パートナーないし古株パートナーと、新たに昇進した若手パートナーの間には待遇も社内のポジションも、雲泥の格差があるのです。
これから金儲けしなければならないハングリー精神が、働かない古株パートナーに引っ張られる現実
古株パートナーのように前のファンドでたっぷりキャリーを貰って20億などの資産を形成していない貴方は、ハングリー精神満タンで、これから稼ぐ気に満ち溢れています。
また総じて、十分な資産形成を完了した古株パートナーは総じて働かずに海外の謎のカンファレンスや、本業に何の恩恵もなさそうな大学講師に時間を使い、あまり働きません。
しかも百害あって一利なしのメディアイベントに出ずっぱりなので、貴方が汗をかいてディールソーシングに勤しまなければ、ファンド自体の運営が早晩行き詰まってしまいます。
そこで、「自分が仕事をしないと、せっかくパートナーになったのにファンド自体が潰れてしまう!」と危機感を抱いた貴方は、八面六臂の活躍を見せます。運用中のファンドからの投資10件のうち、2件の投資を担当し、見事に3倍以上のリターンを挙げるのです。
しかしながら古株パートナーが適当に手掛けた大型案件が大コケしたためファンド全体のリターンはハードルレートを満たせず、10年汗をかいたのになんとキャリーが入ってこないことに。
こうなると貴方は深刻に自問するようになります。
プライベートエクイティ業界の特徴:活躍している割にキャリー配分が少ない若手投資プロフェッショナルほど、早く独立してしまう
PEファンドに入ったのは、まぁ投資と経営の両方を経験してガバナンスを向上させて、、、という志望動機もありはした。
しかしやはり自分のやりたいようなディールを作りこみ、キャリーをドカンともらって一丁上がることだったはず。
しかし今のままではイケてない古株上司にファンドのパフォーマンスを引っ張られ、仮に上手く行ってもキャリーの大半は吸い取られる展開。おまけに暇そうな創業パートナーからは本業と関係ない、どうでもよさそうなノンコア業務が降られまくる毎日。。
今更、これまで戦ってきた競合ファンドにパートナーとして転職できるわけもないだけに、残された選択肢はただ二つ。
このまま居残って次のファンドサイクルで古株パートナーが引退するのを待って、自分にファンドの経営権が禅譲されるのを待つパターン(しかし古株パートナーの持ち株を買う金が無くて困ることも多い)。
もう一つは待っていたら貰えるかもしれない、現在保有企業からのキャリーを諦めて、勇気を出して自分のPEファンドを設立するケース。
しかし自分のPEファンドを創設するのは、プライベートエクイティファンドに入り順調に昇進してきた人でも、かなり高いハードルがいくつも存在します。
次回コラムでは、プライベートエクイティファンド社員が独立してPEファンドを創設するにはどのような条件を満たし、何をすればよいのかを、解説致します。