会計士からプライベートエクイティに転職して大成功する、たった一つの道とは?

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公認会計士として数年過ごした後、その後ろ向きで反復的な作業に嫌気がさし、コンサルやPEファンドへの転職を志す方は沢山いらっしゃいます。公認会計士というと、マッキンゼーやゴールドマン上がりの幾多ものPE転職志望者に比べ、「数字が合ってるかどうかだけ見ていた自分がどうやって戦うのだ?」と思われるかもしれません。しかし、この「数字との格闘技経験」が活かされる、PEファームの重要な仕事があるのです。その業務内容と実態を以下に解説致します。

公認会計士からプライベートエクイティに転職し、パートナーに昇進する道とは?

公認会計士上がりのパートナーを、私は三名知っています。

一人は米系ファンド、もう一人は日系独立ファンド。また日本の某有力スモールキャップPEファンドにも、公認会計士出身の方が活躍されています。

これら公認会計士出身者でPE業界で活躍しうるポジションとは、一体どのようなものなのでしょうか?

1.税金に詳しい公認会計士は、プライベートエクイティ転職に有利

ズバリ、公認会計士として働くときに、タックスアドバイザーを専門にすると、将来稼げる選択肢が広がります。

プライベートエクイティのリターンを決める大きな要素の一つが、LP投資家への最適なタックススキームセットアップなのです。

税制はしょっちゅう変わります。それに応じて、これまでは通用していたアイルランドストラクチャーがもはや機能しなくなったり、特定の投資家の資金源の国が結んでいる租税条約の中身が変わったり、米政権が変わって租税政策が変わったり(プライベートエクイティのキャリーの扱い方はしょっちゅう、やり玉に挙げられる)。

投資家属性ごとに最も”税金面で効率的な”ストラクチャーを用意できることは勿論、そもそも変わりゆく租税制度を追いかけて、他ファームに先駆けて対策を打てるような、「税制オタク」「タックス対策ストラクチャリングオタク」のような人は、PE業界で大いに歓迎されるのです。

2.投資家レポーティングに詳しい公認会計士も、プライベートエクイティ転職(ファンドアドミ)に有利

タックス専門家ほど儲かりはしませんが(一流のタックス専門家は、PE投資の投資家へのリターンに大きな影響を与えるので、給与水準も高く、PEファームのパートナーとして昇進したり、迎え入れられたりする)、実はファンド会計の専門家もプライベートエクイティ業界で重宝されます。

プライベートエクイティは、ファンドのバリュエーションを四半期で投資家に報告するのが一般的になっています。(ちなみに昔は、バリュエーションはコストと同じで、しかも年に一回という牧歌的な時代もありましたが、今は昔です。)

プライベートエクイティのLP投資家へのファンド会計報告義務は多岐にわたります。

投資家から預かったお金のうち、言い換えればファンドに対する各投資家の持ち分のうち、幾らが既に投資され、また投資された元本がリーズナブルなバリュエーション手法に基づき、現在幾らで評価されているのか。

また預かった資金のうち、幾らがマネジメントフィーやその他経費で消えたのか、ドライパウダー(コミットメント金額の中、まだ投資していない金額)はどれだけ余っているのか、などなどを正確に報告する必要があるのです。

これは典型的なナンバークランチングの仕事で、ファンド会計の知識が必要なため、会計士としてPE業界に転職を目指すときに有力な経路の一つとなっています。

3.公認会計士からPEファンドに転職する時の注意点は、「同じPEファーム内に、年齢の近い”二匹目の公認会計士ドジョウ”はいない」という悲しい事実

ただ、先人に公認会計士出身でプライベートエクイティ転職を果たし、その後パートナーまで昇進している人がいるからと言って、興奮して同じ道をそのまま目指すのは考え物です。

というのも、一つのファンドで公認会計士出身のパートナーを2人迎えるのはほぼあり得ないため、前任者の会計士出身パートナーないし古株ディレクターがまだ若いときは、貴方は常に部下として、非常に長い年月、部下として仕えなければなりません。

おまけに貴方とその”会計士上がりのパートナー”の年齢が近いときは、そのパートナーが引退するころには、貴方にも引退の年齢が近づいているのです。

公認会計士の人は基本的に真面目でコンサーバティブでリスクを嫌い、また大きなアップサイドよりかは安定志向が強い人が多いので、そのようなキャリア選択も無きにしも非ずです。公認会計士として大企業複数社の監査をしていた時より、はっきり言って格段に暇ですし、給料も数割アップするでしょう。

しかしながら、比較的楽で前職より稼げる仕事に長年安住するだけでなく、PE業界のトップファームの一角で行うファンドアドミや節税対策のノウハウを学んだ貴方は、業界他社にCFOで迎えられるアップサイドがあることを忘れず、「古巣へのロイヤルティと自分のキャリアのリターンバランス」を慎重に考えたキャリア判断をするようにしましょう。

かなりニッチなトピックに、PE業界数社の具体的な顔を勝手に思い浮かべながら余計なお世話なアドバイスまで最後につけてしまいましたが、最後にまとめますと、会計士からプライベートエクイティに転職して、上記のようなバックオフィス機能(タックス関連はバックオフィスでも、フロント並みにリターンを左右するので、もはやフロント業務と呼んでもいいくらいですが)で活躍する道は複数パターンがあります。

しかし、これら専門性のない単なる会計士であればPEファンドへの転職は当然厳しく、かつそのファームに会計士上がりの古株ファンドアドミがいた場合、かなり長期間にわたってこき使われた割に、いつまでも上に上がれないという悲哀の道を行く人もいますので、くれぐれも気を付けましょう。