資産15億を40前半までに築くためのキャリア戦略:PE業界で十分なキャリーを!

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若いときはスキルアップやキャリアアップのためにハードワークを連日こなせても、40代になると人生の折り返し地点が見えてきて、「いつ引退できるんでしたっけ?」と思うようになるものです。そんな時、日本で毎年5000万稼いでいても、麻布台ヒルズや三田ガーデンの5億の物件を買うのも長期のローンが必要で、海外名門大学に子供を入れれば一人当たり毎年の学費だけで8万ドルが必要な現実の前に、一抹の不安を覚えるもの。富裕層として安心の目安は15億のネット資産を持つことですが、どんなキャリアが現実的な道でしょうか?

最近プライベートエクイティ業界の長年の友人とキャッチアップしたのだが、昨年、今年は1億程度のキャリーだったが、来年上手くいけば10億入ってくるという。パートナーではないのでキャリーは良くて数パーセントなはずなのだが、その会社ではファーム全体と、担当案件のキャリーが分かれていて、担当案件で10倍越えリターンが2つあるのだという。

しかもそのうち一件はセカンダリー案件(他のPEファームが保有した後、違うPEファームに売却した案件のこと)だというのだから、前のPEファームはさぞかし悔しい事だろう。

ちなみにセカンダリーディールというとPEのLP投資家からは敬遠されがち(既に一番儲かる部分、簡単に手直しできるところ、いわゆるローハンギングフルーツは、前のPEファームに獲られているだろうという理由から)なのだが、実はセカンダリーディールでも大儲けできる案件が多いのは、PE業界の歴史が証明している通りだが、話題がそれるので違うコラムに譲りたい。

PE業界で15億の資産を築いた人は、周囲に何人も存在

15億円あると、いくら円安とインフレが続いても、米国債など安心資産で年間4%で5000万、6000万の不労所得が入ってくるため、子供2人がイギリスやシンガポールの年7万ドルのボーディングスクールや、年8万ドルのアイビーリーグの大学、年10万ドル水準のINSEAD MBAなどに入ってしまっても、十分豊かな日常生活を送れるレベルである。

よって10億~15億を「安心資産」の目安と考える業界人が多いのだが、それでは金持ちの親から遺産相続したり、バブルに乗っかって新興市場でドカンとIPOする以外の堅実なキャリアで、どのようにしてこの金額の資産を形成することが可能だろうか?

プライベートエクイティの事例で言うと、私は複数社のPEファームで働いてきたが、どれも大きなファンドだったため、創業パートナーや最初に入ってパートナーになった数人は、軒並み20億以上(キャリーの大半をもっていった創業者は100億以上)の資産を形成していた。

プライベートエクイティの創業パートナーでなくても十分な資産を形成するには?

PEの創業パートナーになるのはさすがにかなり大変なので、サラリーマンとして雇われる立場で10億越えを果たせるのかということなのだが、PEキャリア10年を超えた頃から、ちらほら現れ始める。

これはとりもなおさずキャリーが入ってきたからなのだが、キャリーが入る前はベースとボーナス併せて、良くて5000万から1億、多くの場合はディレクターでも2000万円台前半であることが多い。

つまり通常の給与やボーナスでは税金と生活費を引くと10億等たまるわけがないので、結局はドカンとキャリーを得られるかどうかにかかっている。

そこで結局のところ、富裕層として引退するにはキャリーを十分貰う必要があるのだが、実際15億貰うのはどのようなケースだろうか?

3倍のグロスリターンでは、ディレクターは一丁上がれない!?

一つは100億くらいのスモールキャップファンドで、上手く3倍になったとしてざっくり30億程ファンドにキャリーが入ってきて、少人数チームのディレクターとしてそのうち10%貰うケース。

これだとまだ3億で、税金は諸々優遇税制でキャピタルゲイン扱いされて2割にとどまっても、残るのは2億6千万程度だ。

では1000億のファンドが上手くいって、ただし人数も多いので自分のキャリーは1%だったらどうか?

正確にはDeployment Ratioが何%でとか変動要因は多くあるのだが、仮に会社に入ってくるキャリーが300だとして、1%だとこれまた3億。

つまり通常バイアウトファンドがターゲットにするグロスの3倍だと、ディレクタークラスのキャリー配分だと”一丁上がり”になれないのだ。

3倍案件ではなく、10倍案件を作れるファンドで、そんな案件を自分で作れるか?

ただなぜ前述の友人がディレクターなのに10億越えのキャリーが見込めるかというと、そのファンドでは自分が担当した案件から入るキャリーの%が多いためと、3倍どころかベンチャー投資の成功案件もビックリの、10倍越え案件に恵まれたからである。

スモールキャップの20億エクイティチェックだったとして、10倍の時キャリーは概算50億程度だ。自身の担当案件であるためキャリーの10%が自分のものになるとき、実に10億が自分の取り分となる。

そしてそのような10倍案件を二件抱えていると、多額の税金を払ってもめでたく富裕層の仲間入りを果たし、別にクビになろうが無職になろうが、痛くもかゆくもない。一時流行った「経済的にカツカツの、ちょっと貧乏なFIRE」ではなく、悠々自適の優雅な生活が息子・娘の代くらいまでは保証されることになるのだ。

いまプライベートエクイティファンドへの転職を考えておられる20代から30代前半の方は、まだ真剣に「10年後に15億貯められるキャリア選択」などとは考えておられないことだろう。

しかし10年経った後では総じて既に遅く、経験の為に数年いるわけではなく、人生を掛けたキャリアにしようとお考えの際は、3倍どころか10倍案件をつくるトラックレコードがあり、自分がやりたい投資とそのファンドの投資戦略の整合性が高いファームをしっかりと選ぶ必要があるのである。