
プライベートエクイティ業界に転職後、ゴールドマンやマッキンゼー時代を思い出しながらあなたは、「こんなに楽に儲かるなら、もう辞められない」と思われるかもしれません。しかしながら、PE業界転職後に感じる2つのジレンマが存在します。そしてそもそも、PE業界への面接対策といった小手先の話ではなく、そもそもPE業界に転職した後にどのような投資をしてどうチームに貢献するのか、イメージを持っておくことが重要です。以下ではPE業界転職後に感じたジレンマを、PE業界転職検討中の方に先取りしてお伝えいたします。
プライベートエクイティ業界転職後に感じたジレンマ
「プライベートエクイティに転職し、投資先企業に入り込み、投資家・経営者両方の観点で自分を高めたい。」
こういったように、プライベートエクイティ転職を考えるエリートたちは、転職後待ち受ける人生に関し大変前向きなイメージをもつ。では、果たしてあなたは実際入社後にどう感じるのだろう?
本コラムでは、読者のみなさんにプライベートエクイティ生活のリアリティを臨場感もって味わってもらうため、筆者が社会人歴12年目でプライベートエクイティ入社し、そこで感じ取ったジレンマを2つご紹介する。
ジレンマその1:プライベートエクイティ転職後、こんな楽ちんで楽しい生活は、自分には相応しくない。でも、もう抜けられない
あなたがコンサルや投資銀行、そして弁護士出身者であるなら、プライベートエクイティは断然楽な仕事だ。
プライベートエクイティの実態は「株式の長期保有」という地味な仕事。ファンドのライフサイクルでいうと、5年に一回のペースで資金調達を繰り返し、集まった資金を5年以内に投資につぎこみ、その持分を売却するまで保有する。
「PEは投資後のコストカット・ガバナンス・バリューアップに忙しいのではないのか」という声が聞こえてきそうだ。
しかし、これらはいずれもやったからといって必ず達成できるものでもなく、またやらなかったからといって他の要因(たとえばマクロ環境改善や製品のブームなど)で会社の価値が向上し、自然にリターンがでることもある。身もふたもない話だが、真実だ。
あなたがもしコンサルや外資銀行、そして弁護士出身なら、今まで偉そうな上司やクライアントにこき使われながら奴隷のように働き、しきりに「Urgent」というタイトルのメールで仕事が降ってくるので携帯を手放せない毎日だったであろう。
それがプライベートエクイティ転職し、無数のランチ歓迎会が終わって、さっそく10時~6時の仕事をビジネスクラス出張をしながら楽しむころには、「こんな楽ちんで愉快な仕事、自分なんかにはもったいない」と思ってしまうのも現実だ。
と同時に、「もう二度とこれを辞められない」と思ってしまうことが、ジレンマその1である。
ジレンマその2:プライベートエクイティ転職後の待遇は重役ビジネスマン。でも実質は恒久サラリーマン
プライベートエクイティ転職に成功すると、投資先の社長と対等に話す機会もたくさんあるし、なんなら投資先の執行役員以下は全員「自分の部下なんじゃないか」と勘違いすらしそうになる。
あなたは好きなだけ海外出張を組み、迎車タクシー→羽田→ビジネスラウンジ→ビジネスクラス→タクシー(ときには投資先の現地子会社が用意してくれる高級ハイヤー)→マンダリンオリエンタルホテルチェックイン→現地の高級料理店でフルコースとお酒、と日程をこなすだろう。
現地で夜が更ける頃には、すっかりと「国境を跨いで情報収集し、現地経営陣にも株主として睨みとグリップをきかしてきた凄腕」気分になり、そんな自分にまで酔ってしまうに違いない。
傍から見たら「スーツ着て旅行しているおじさん」にしか見えないのに、である。
こんなあなたがジレンマを感じるのは、投資委員会の時だ。投資委員会では、自らが引っ張ってきた良質案件でない限り、主だった発言の機会は自分にない。
パートナーと外部から招聘されたプロのオペレーターが活発な議論を行い、賢そうなことが言えず資料に目を落とすしかない自分がだんだん情けなくなってくる。
それでも存在価値をださねばと、あなたはこう言い放つこともあるだろう:「銀行はローンのロールオーバーはしてくれそうですか」。
そして、「じゃないとみんなここで悠長に会議してないよね」と言いたげな目で担当者やその日たまたま不機嫌なパートナーから「きっ」と一瞬睨まれる始末だ。
プライベートエクイティファームにおいて、一目置かれる参加者になるには、パートナー昇格が無理でも少なくともファンドの「キャリー」(ファンド成功報酬の配当受領権)を持っている必要がある。このキャリーをもらうまで出世するのは、プライベートエクイティ転職に輪をかけて狭き門だ。
あなたは気を取り直して翌週からまた好きなだけビジネスクラスに乗るのだが、その待遇と実質の落差に、たまに自分自身気まずくなるに違いない。
プライベートエクイティ転職後に自分がチームに貢献しているイメージをもとう
いまはプライベートエクイティ転職への願望と面接テクニックで頭がいっぱいかもしれないが、入社後チームに貢献している自分像もしっかりと磨いてほしい。
自分はなぜプライベートエクイティ投資家になりたいのかを掘り下げて考え抜き、いまできる活動はさっそく始めよう。
その結果、あなたは行動力と知識、そしてパッションあふれる面接を展開できるだろうし、上記ジレンマに遭遇する頃にはもう自分なりの答えをもっているに違いない。