プライベートエクイティ入社後、デキる人がパーティで心掛ける3大ポイントとは?

  • LINEで送る
プライベートエクイティ入社後、デキる人がパーティで心掛ける3大ポイントとは? - アイキャッチ画像

プライベートエクイティビジネスの本質は、「超エリート集団による営業」です。その営業は、投資先のオーナー及び経営陣への営業(説得)と、LP投資家へのファンドレイズ営業の両輪となります。そしてその営業は、PE業界で恐ろしく多い、PEカンファレンスやPE業界パーティーでの、数々での振る舞いで、決定的な差がつきます。本コラムでは、プライベートエクイティファームの「年次報告会」で繰り広げられる営業の現場と必須スキルについて解説します。

プライベートエクイティの本質は超エリート集団による「営業」

プライベートエクイティに「営業スキルは必要ない」などと勘違いしているエリートは、意外に多い。現実はむしろ真逆だ。

プライベートエクイティ業界は、人間対人間で相手側に好かれないと、なりたたない。事業承継案件をバイアウトしたくて創業株主を口説くときもそうだし、LP投資家担当者があなたを好かないと、だれもアンカー投資家(ファンドレイズで一番最初にコミットの名乗りあげてくれる最重要投資家)にはなってくれない。

さらにいうと、その投資家が信頼され、好かれる人間でないと、優秀な実務家もそう長く彼の下で働いてくれず、他社に転職してしまうのである。

そして、グローバルでLP資金を集めるファンドは、営業スキルもグローバルでなければいけない。本コラムでは、日本拠点のプライベートエクイティが年次報告のために海外LPを日本に集める「年次報告会」の営業現場について解説する。

「オードブルおじさん」の驚愕

「報告会」とは名ばかりで、カリキュラム的には冒頭にだけファンドのパフォーマンスや最新の進捗を共有するものの、のこり半分以上の時間はカクテルパーティーに注がれる。そして、これをミッドタウンなどで豪勢にやる。

そこで一番なってはいけないパターンが、「ニヤニヤ中途半端な笑みを浮かべながら、仲良くしゃべれるLP投資家がいないから隅っこでオードブルを自分の皿にくべるのにちょうど忙しいふりをしているファームの人間」だ。長い描写になってしまうが、ちょうどこのタイプの人間が、どこの年次総会にも最低5人いる。

ここでは、「隅っこのニヤニヤオードブルおじさん」と略称する。本人もその3時間が悲惨だが、その存在により雰囲気を乱されるあなたのパートナー上司も、そして気づかないふりをするため実は気を使っているLPも、巻き込まれて悲惨だ。

隅っこのニヤニヤオードブルおじさんにならないためにはどうすればいいか。以下に3つにまとめてみた。

ちゃんとした英語を話そう

あなたの英語が「アイ アム ヒロタカ。ピープル コール ミー ヒロ」水準なら、年次総会に必ず太田胃散を持参しよう。あなたはLP投資家とよりオードブルと一緒に過ごす時間が長くなるからだ。

今や多くの業界でそうであるように、プライベートエクイティの世界では英語はもはや「エチケット」であり、特別技能ではない。したがって、海外では、自分の履歴書にTOEIC / TOEFLのスコアを自慢げに記載することは、失笑の次元になって今や久しい。筆者は、中学の頃からCNNのアナウンサーのカセットテープを大量に購入して、聞き流しながら自分でも話したものだ。それが、犬の散歩の暇つぶしにはうってつけだった。

ここの読者層の年齢からすればやや遅いかもしれないが、それでもあなたの英語が「ピープル コール ミー」系であれば急いでネイティブ英会話の特訓をしよう。

国際感覚をもとう

相手がどんなに若そうで、そして容姿端麗みえても、海外の女性に対し年齢と体重を聞いてはいけない。海外の基準からすれば、その質問はプライベート中のプライベートな内容で、「その情報を知って一体あなたは何を判断するつもりなのか」と激しい反感を買う。

2019年になっても、大阪なおみ選手の海外記者会見で日本人記者が「さいきん痩せられたように見えますが、体重は今何キロくらいですか」と尋ねて場内が騒然とした。女性の年齢、体重や、あと下ネタ領域を、海外の人に対しあなたは決して話題にしてはいけない。

無論、上記はあくまで一例だ。国際感覚 – より厳密には、文化的感受性 — があれば避けられる振る舞いは無限にある。初対面の相手とパーティで立ち止まったら、単刀直入にビジネスの話題に切り込まずまずは世間話で互いの温度間を推し量るのも列記とした国際礼儀である。宗教・政治の話はそういう場でしない、というのもマナーだ。

だからあなたは、それが英語的に自信のある文章だからといって「ワット ドゥー ユー シンク オブ トランプ」とぶちかましてはいけない。

あとはなにより純粋な誠意だろう。「今の私の英語レベルがどうだろうが、誠実にあなたを思い、もっとお知り合いになりたい」という気持ちを本気で持ちさえすれば、言語の壁は案外乗り越えられ、会話も続くものである。ただし、やはり英語力がないと「それでも結局最後は次のビジネスにつなげる」という一流投資家のカクテルパーティトークには及ばない。

各LPへの実績を頭にたたきこめ

プライベートエクイティ転職をする前の読者がこれを聞くと意外かもしれないが、ほとんどのアソシエイトやディレクターは、IRチームに所属していない限り、各LPへの自社ファンドのパフォーマンスを分かっていない。

これは実は危険な状態である。各LPは、ビジネスの話をするときあなたの部署や役職に応じて「クライアントとしての期待値」を変えない。あくまであなたは「ファームの一員」で、クライアントである自分をどれくらい儲けさせたのか、それともどれだけ価値を棄損させた、あるいは棄損させそうなのか、あなたが当然熟知している前提で話してくる。

パフォーマンスの「良い」案件のことは、所詮はお世辞めいた肯定的な会話内容にしかならないので最悪後回しでよい。各LPにとって悪いニュースから順に、現在の状況と今後の努力目標を、しっかりとリアリズムを交えながら即座に回答できるようにして年次総会に臨もう。

マイノリティ出資でなにもできないVCではなく、曲がりなりにもバイアウトファンドならLPはそれを期待して当然なのである。

なお、一点だけ付言すると、プライベートエクイティのパートナーには、IR担当以外は、アソシエイトやディレクターにLPと仲良くなってほしがらない場合がある。「ファンドにとって血と汗の結晶ともいえるLP顧客に対しヘタなことを言われたくないし、妙にとりいれられたくもない」みたいな感情があるのだ。あなたがこれを気にしすぎて萎縮する必要はないが、あなたのプライベートエクイティ投資家能力とファームへの絶対的忠誠心が見定められないうちは特にこういう感情がありうることを、覚えておこう。

知った以上、今から実践しよう

「やったことないからそんなの知らない」と思うかもしれないがそれは転機を迎えるすべての人間が同じである。

とにかく自分の英会話を実践レベルまで引き上げ、色んなひとと積極的に触れ合い、最初は失敗も重ねることで国際感覚も体得しよう。そして、ファーム入社したらすぐにファンドパフォーマンスを頭に叩き込もう。プライベートエクイティ業界において、「隅っこのニヤニヤオードブルおじさん」が後日開花したためしは一度もない。