未経験者がプライベートエクイティファンドに転職してビックリな4大ポイントとは?

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プライベートエクイティファンドに未経験者が入ると、PE業界内部では当たり前とされている、驚きの連続です。PE業界内部のコミニュケーションマナーや、ビジネスモデルの「コミットメントサイズ」に対して2%も毎年フィーを請求する業界慣行、投資委員会での判断基準や、コントロールプレミアムの考え方など、投資ファンドビジネスの実態に関し驚きつつも開眼するポイントが多いものです。以下に解説致します。

今回は、私がプライベートエクイティに転職してまず驚いた3つのポイントについて紹介したいと思います。

皆がニコニコ笑っている

私がプライベートエクイティファンドに転職してまず一つ目に驚いたのは、皆ニコニコ笑っているということでした。

もちろん、社内でニコニコ笑っていると、少しおかしな人になるわけですが、対外的にはとにかくマイルドで物腰やわらかく、皆”いいひとキャンペーン”をやっているのです。

これは、プライベートエクイティというだけあって、全てのビジネスが個人間のプライベートな人間関係を起点として行われていることにも由来しています。

このニコニコ笑顔の第一の理由は、プライベートエクイティ業界は、お客とサービス提供者の関係が一方通行ではないということです。

投資家企業と、プライベートエクイティファンドの間で人が往来することもありますし、人気のあるファンドだと、投資家の方からお願いして“どうか私もこのファンドに投資家として参加させてください”とお願いする立場になることもあります。

よい人気ファンドほど、客集め、投資家集めにはまったく苦労せず、ファンドレイズを発表する前にすでに内内に、従来ファンドの客でファンドが埋まっている、ということもざらにあるのです。客の投資家だからと言って、横柄な態度に出れる業界ではありません。

また第二に、ライバル企業と助け合うことも数多くあります。これは、競合のファンドからその投資先の企業を買うこともあれば、自分の投資先の企業を、競合ファンドに買ってもらうこともあります。

投資サイズが大きすぎるときは、競合ファンドと協力して共同投資することもありますし、業界が狭いので、おたがい口コミは業界中に大いに広まります。

ライバルファンドも含め周囲からの評判が非常に重要であり、くれぐれも敵をつくってはいけない業界なのです。

マネジメントフィーって、すごい:“投資すると約束した金額に対し、仮に何も投資されていなくても、毎年2%支払う?

私がプライベートエクイティファンドに転職して二つ目に驚いたのは、マネジメントフィーのシステムです。これを訳すると「運用手数料」になるわけですが、預かったお金に対してというと実は間違いで、正しくは“コミットメント額に対するマネジメントフィー”なんですよね。

仮に2%だとすると、100億投資するとコミットすると、最初の5年間の投資期間は、2%x100億の2億が毎年支払われます。

ここが凄いところなのですが、この毎年の二億円は仮に投資されなくても、払われるのです。

勿論投資してくれないと、、困るのですが、あくまで“100億という投資を約束した枠の総額に対するマネジメントフィー”なので、極論を言えば、一度預かれば、毎年2億円×5年間分は入ってくるのです。

これはキャピタルコールと言って、投資家は投資案件が決まったときに、投資すると約束した金額の枠から自分に割り当てられた分を振り込むシステムです。


よって仮に投資されないと、LP投資家にとっては、“自分の口座から一度も出ていない100億円に対して、毎年2億円払う”ことになるのです。

上場株の投資ファンドは、すでに投資されているポートフォリオの総額に対して2%とかです。

これに対しプライベートエクイティファンドは“これから投資します、頑張ります!100億円約束した枠に対し、毎年2%払ってくださいね”という2% なので、性質が大きく違うのです。

投資の根拠が全然違う

プライベートエクイティに転職して第三に驚いたのは、投資するときの判断材料の違いです。よく往々にして数値的ではなく、質的な分析で、大いに裁量の余地があり、不透明な状況での判断力が問われます。

たとえば、投資先が企業の場合はまだ分析の余地もありますが、仮に投資先がプライベートエクイティファンドだと、まだ投資すらされていないファンドに投資するのだから、見れるものと言ったら、財務数値化できない要素がほとんどです。

それこそ、その投資ファンドを運用するファンドマネジャーたちの実績や、将来どんなことをしそうかといった質的評価、またどのような投資家に支えられているかといったサポーターの評価、そしてファンドの契約書条項の評価や税金対策スキームの評価などになってくるので、上場株のように、投資対象の将来業績とバリュエーション水準を評価して投資するのと、まったく世界が異なるのです。

したがって、特定の企業の株式を対象とした投資に慣れた人がプライベートエクイティに転職すると、“え、そんな根拠で投資を決断するの?”とかなり驚かれることでしょう。

バイアウト投資特有の、コントロールプレミアム

なお、ここではプライベートエクイティ投資ファンドへの投資について書きましたが、プライベートエクイティファンドが企業に投資するときの判断ロジックで、公開株などにくらべて特徴的なのは、そのコントロールプレミアムです。

公開株の投資ファンドだとせいぜい15%しか買えないので、投資先をコントロールできません(またしてはいけない)。

しかしプライベートエクイティ、なかでもバイアウトファンドは50%以上の株式を買う(中にはマイノリティだけど大株主と株主間契約を結んで実質コントロールしている、というディールもありますが)ので、いざとなれば社長も変えられるし、戦略も変えられるし、資産売却も自分で決められます。

受け身の姿勢で株式を買うだけの公開株投資に比べ、企業経営をコントロールできる50%以上を買った時は、”コントロールプレミアム”として20%なり30%なりが企業価値評価時に加算されるのです。

 このようにプライベートエクイティ業界は未経験者が転職すると、コミニュケーションマナーからビジネスモデル、投資の判断方法やプレミアムの値付けまで、驚くポイントが沢山あるのです。PE業界への面接や転職前に、極力これら基本コンセプトを押さえておくようにしましょう。