プライベートエクイティ転職後、投資先バリューアップの「要所の見極め」とは?

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コンサル出身で、日本を代表する某大手プライベートエクイティプロフェッショナルであるストロングキャリア講師より、バリューアップの現場ではどのような頭の使い方をしているのか、執筆していただきました。 コンサル時代のMECEや論理思考とは異なり、真の優先順位付け、要所の見極め、そして「未経験分野で成果を出す必要があるとき」に、自分に知見があることとない事を明確に切り分け、コミニュケーションを徹底する必要性について、某大手バイアウトファンド勤務者が解説します。(写真はPE転職徹底対策テキストより抜粋)

[講師よりメッセージ]

現在、大手バイアウトファンドで働いています。ストロングキャリアには創設当初より20年近く携わっております。以下では日常的に目にする、成果創出のために考えるべき論点を少しずつ書かせて頂きたいと思っております。プライベートエクイティの仕事は、基本的に地味な仕事ですし、華やかなネタは別の方に譲るとして、実務的にどの様に対応すべきか?という事までを含めた形で論じたいと考えています。

001. MECE化と優先順位付け

初めてプロフェッショナルファームに入社した場合、まずはその人がそれまでに築いてきた経験や自信が、(時として執拗なまでの)各種ご指導により、徹底的に破壊されます。

そして頭も心も”更地”になった後に、色々な基本スキルを叩き込まれます。必須科目としては各種思考方法、ExcelやPowerPointの限界までの使い方、インタビューメモの書き方等、色々とあります。

思考方法に関するスキルという事では、「MECE」「要素分解」が有名なところでしょうか。それらは、特にヌケモレを防ぐための、広げることおよび構造化、に資する思考だと考えます。

しかし、特にMECE化で網羅性を確保した後に陥りがちなのですが、あれも大事、これも大事では、リソースが分散するばかりか、目標への理解がブレるため、成果が出なくなります。ビジネスとして実現可能なアクションプランへの落とし込みや、組織実行に移すためには、関係者全員が容易に理解できる明確な「優先順位付け」が極めて重要です。

プライベートエクイティのバリューアップ現場で、複数の施策候補を整理してるだけでは無意味!

もっとも、優先順位付けが大事なことそのものは、概念的には誰でも分かりますので、一定のレベルのプランナー(コンサルタント等)の仕事の中では、整理論の延長としての優先順位付け(の様なもの)は実施されます。

例えば、成果実現までのリードタイムの長さと期待成果のインパクトの大きさで、複数の施策候補を整理は可能です。良くあるやり方は、数週間~数ヶ月で成果創出が期待できる施策(クイックヒット)と、一区切りの範囲(事業年度等)で実現できる範囲での中期的な施策が組み合わされるイメージでしょうか。

しかしながら、これらは概念的な資源配分の議論や、期待成果の量を試算することには役立ちますが、どれだけ頑張って議論をしても、成果実現に近づくことはないと思います。

PE投資先のバリューアップに必要なのは、MECEよりも「要所の見極め」

必要なことは、ある施策についての、成果実現の可否に最も大きな影響を与える『要所』の見極めだと考えます。

それぞれの施策についての要所の理解に基づき、複数の施策がストーリーとして描かれるイメージです。

その要所を如何に早く、より確実に現実のものとしていくか?という観点での具体的な手順や段取りの整理が、成果実現に直結する優先順位付けだと筆者は考えます。「MECE」「要素分解」では、この「要所」の見極めが出来ないのです。

プライベートエクイティ・バリューアップの要所の見極めを出来るようになるためには?

この要所の見極めが出来るようになるために必要なことは何か?といえば、同一または類似内容の実体験、及び、適度な抽象化による実体験のパターン認識に基づく柔軟なアナロジーではないかと考えます。

また、それらを得る手段は、普通の地頭では、経験と思考の積み重ね以外にないと思います。

「相当程度の経験(実体験)があること→成果実現の実力があること」にはなりませんが、「成果実現の実行力があること→相当程度の経験(実体験)があること」は成り立つと個人的に思いますが、それは、この辺りのことが背景としてあるのだと想像します。

プライベートエクイティのバリューアップでは、経験したことが無いのに成果を出さなければならないことが多い

さて、経験がない内容について成果を出さなくてはならない状況は、ある日突然やってきます。それから頑張って経験を積みましょう、という訳にはいきません。

その場合、実務的に大事なことは、先ず、経験のあることと無いことを、自分自身が一番しっかりと区別できていることだと考えます。

その上で、コミュニケーション上は、経験がない内容については、指示をする立場であっても、指示を受ける立場であっても、自分が出来る努力は最大限続けるということを前提に、経験がないことを素直に認めること。

経験がないからといって丸投げすることは絶対に避けるべきですし、経験があるフリをして何かを語ることもしてはなりません。

自分に足りないことは、誰かに助けてもらう頂く必要があります。このコミュニケーションは、その援助を得るための大前提だと思います。