
BCG、マッキンゼー、ベイン、ATカーニーなどからプライベートエクイティへの転職を目指す人は数多くいますが、中にはPE業界で数年働いたのち、再びコンサルに戻る人がいるのをご存じでしょうか?助言だけでなく意思決定者として、経営支援だけでなくオーナーとして、経営戦略やオペレーションだけでなく、財務・会計・税務・バリューションなどオールラウンドビジネスパーソンを目指してPE業界に転職したのに、「卒業したはず」のコンサルに再び転職するPEプロフェッショナルの理由と特徴を、以下に論じます。
プライベートエクイティ転職後、コンサルに再転職する人のパターンとは?
トップティア戦略コンサルはプライベートエクイティ業界転職への登竜門の一つですが(実際に私のPEファームでも、アソシエイトの半分くらいはマッキンゼー出身者。ベインやBCGが意外といないのは、マッキンゼー出身者が古巣で一緒に働いた気心と能力の知れたコンサルを引き抜くためと思われる)、中には憧れのプライベートエクイティファーム転職を果たした後に、数年後再度コンサルに戻っている人が複数存在します。
現在マッキンゼーなどに勤務中で、エンゲージメントマネジャーが終わったタイミングで「やれやれ、MBA後数年働き、スポンサー貰った学費の縛りも無くなったことだし、PEに移ってみるか!」などと思われている方に、実は「PEに行くよりコンサルのままか、事業会社や起業の方が向いているかも」とご一考いただくべく、コンサル→PE→コンサルで戻り組のパターンを、実例をもとに解説致します。
1・転職先のPEファンドが、なんとファンドサイズカットで大リストラ
ファンドサイズがビリオン超えで十分に大きく、毎年1000億x2%で20億マネジメントフィーがあるので、アソシエイトを30人は余裕で雇い続けられるはずだった、某国の某社。
しかしながら投資先に大穴が空いて、投資家説明会でどれだけ無理くりにDCFをこねくり回しても、完全ライトオフは避けられない状況になると、アドバイザリーボードでLP投資家にバリュエーションを詰められる前に、自主的にライトオフするのがこの業界の御作法です(まぁ、非公式にLP投資家に詰め寄られてはいるのですが)。
しかし投資先をライトオフすると、LPA(Limited Partner Agreement)によると、その元本に相当する金額へのマネジメントフィーが削減される羽目に。
すると、当初1000億の2%が毎年入ってくるはずだったのが、(ライトオフの元本次第では)下手すると20%吹っ飛んで、その分エコノミクスが回らない事態に。
こういったとき、PEファンドでは年収の高いパートナーの給料が削減されて終わらず、何人かのアソシエイトが放出されます。
不幸にも、ライトオフされた投資先に張り付けられていたアソシエイトは、スター選手であれば他の投資先に移されますが、そうでなければこのタイミングで、PE業界からお引き取り願われるのです。
こういう時にありがたいのが、コンサル出身者の「前職経営陣との良好な関係」です。PEに入ってくる前にトップティアコンサルで活躍していた人なら、コンサルファームは出戻り歓迎の「オープンドアポリシー」を標榜しているところも複数社あるため、前職のコンサルファームの意思決定者と良好な関係を築いていれば、難なく出戻りすることが可能です。
2・転職先のPEファンドが、寄せ集めのチームで全く投資できず、チーム崩壊
これも世界のPEアルアルなのですが、外資系の著名PEファンドがその国に上陸した際、リテイナーフィーで数億取る世界的なサーチファームに依頼して慎重に選んだはずの”大物”代表パートナー(某著名コンサルファームの前代表)が、PE投資になったとたん、全く活躍できずに、結果的にファンドをたたむことになったパターンです。
この時、”大物パートナー”が前職や他の有力コンサルファーム、PEファームから雇った優秀な若手アソシエイトやディレクターは、他ファンドがファンドレイズに成功して積極採用している局面でもない限り、他業界への転出を余儀なくされます。
そんな時、真っ先に再就職に成功するのは、やはり「出戻り歓迎」を公言しているMBBの一角で、かつ前職の意思決定者である有力パートナーと良好な関係を築いている人なのです。
コンサルトップファームは、社員にエクスターンシップとして3年に一度、クライアント先で一年働いて帰ってくるといった制度があるファームもあるくらい、コンサルの外に転職して、更に視野を広げて成長して帰ってくることも期待しているケースも存在します。
よって、一つ目の事例とややかぶりますが、コンサルファームで高い評価を受け全方位味方だらけにしてPE転職するのであれば、いつでも出戻れるので実質「無リスク転職」ということができるでしょう。
3・PEに転職したはいいものの、投資先の地方の中小企業に実質経営陣として送り込まれ、PEプロフェッショナル感が無い
PE転職後にコンサルに戻る人の第三のパターンが、PEに入ったはいいものの、思っていたPEと全く違ったパターンです。
コンサルからプライベートエクイティに転職を志す人は、「✔数多くのディールソーシングをして案件を投資委員会で検討し、✔複数の投資先のプロジェクトに入って、✔ガバナンスを設計し、✔経営陣を挿げ替え、✔不採算事業をリストラし、✔海外進出に先鞭をつけてバリュエーションを高めて、✔無駄なお金をたっぷり持ってるオーナー企業の二代目に売りつけてやろう」等と思われているかもしれません。
しかしコンサルがピンキリなのと同様、PEファームもピンキリです。いや、正確にはピンキリという善し悪しの判断ではなく、ただ単に戦略と人の使い方が異なるため、正に上で描写したような業務の仕方をするPEファンドもあれば、既に投資された後の地方の中小企業の社長として送り込まれ、実に5年もそこに張り付いて、おまけに売却できずに減損(当然キャリーも入らないので、MBBでコンサルしていたほうが収入もよっぽど良かった)という悲惨なPEキャリアを送る人も中には実存するのです。
その後、彼ないし彼女は、PE業界を離れて1年間世界放浪の旅に出たが、地頭と学歴とバックグラウンドと業界の人脈のおかげで、帰国後コンサルファームに潜り込み、その後上位PEファンドの投資先経営陣として再転身しました
以上、コンサル出身者でPE業界に転職した後、再度コンサルに戻ってくる人の実例を紹介しました。何といってもPEに転職する前に、「出戻りコールオプション」を持つべく社内で全方位に良好な関係を維持し、かつPEファンドだからといって諸手を上げてキャリアアップだと誤解せずにそのPEファンドの実態をよく理解した上で、PE業界への転職を慎重に検討しましょう。
コンサルからPE転職を考えられる際の、参考にしていただければ幸いです。