
就職や転職時に有用な自己分析。ただ自己を分析するというのは、機会が自分自身を分析するのが困難であるのと同様、非常に難しいものです。適職判断という目的に応じた分析である必要がありますし、分析の軸に説得力ある根拠があり、その適合性がデータで証明されているものでなければなりません。そのうちの一つ、MBTIの観点でプロフェッショナルファームへの適職診断を以下に論じます。
業務内容の特性にフィットした適性が、自分にあるのかどうか?
MBTI診断は心理学者・ユングの著書「Psychological Types」の中で解説されている理論を基に、米国のキャサリン・ブリッグスとその娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズが開発し、1962年に完成させたものです。そのためマイヤーズ・ブリッグスタイプ指標としても知られています。
性格は生来のものと後天的なものがありますが、MBTI診断は生来の性格にフォーカスを当てています。
MBTI診断は多くのグローバル企業で取り入れられていますが、タイプ別推奨職業は的外れだったり、この16分類だけで分析するのが非現実的だったり、この16分類に紐づく仕事の内容を、分析者が知らなかったりするのが的外れになる原因です。
そもそも1962年当時には存在しなかった業務がほとんどです。また業界動向やビジネスモデル、企業別、部門別、役職別にも、求められる適性は変わってきます。
以下では本サイトの読者層を鑑み、投資銀行の中でも投資銀行部門、MBBなどの戦略コンサルティング、ユニゾンキャピタルやアドバンテッジパートナーズなどのプライベートエクイティファームの投資プロフェッショナルとポジションを絞り込んで、MBTI診断の4つの軸をもって、職業別適性の特徴を論じます。まずは基礎知識である2×4の軸の解説からです。
1.関心の方向性が外交的(E)か内向的(I)か
E=Extraverson: 外交的で他人との交流からエネルギーを得るタイプ
I=Introversion: 内向的で一人で静かに過ごし、内省でエネルギーを得る
2.物の見方が感覚的(S)か直観的(N)か
S=Sensing: 現実的で具体的。五感で見る
N=Intuition: 直観的で想像力があり、抽象的な洞察力がある。奥にある物事の繋がりが見える。(これもIにすると、その上のIntroversionと被るから、二つ目のアルファベットであるNを使っていると思われる。)
3・判断の仕方が志向型(T)か感情型(F)か
T=Thinking: 論理的で合理的
F=Feeling: 自分や他者の気持ち・価値観を元に決断する
4.物事の進め方が判断型(J)か知覚型(P)か
J=Judging: 判断型:計画的で秩序だっていて、決めた通りに動く。
P=Perception: 知覚型:臨機応変。状況に応じてフレキシブルに計画変更。そもそも計画的でない。
戦略コンサルに適したMBTIタイプとは?
戦略コンサルへの適性ですが、(1)のEかIで言えば、両方います。
基本的にはEの方が向いていますが、クライアント対応はEな人に任せ、考えて知恵を出すことでバリューを発揮する人もいます。
ただ上に上がっていきクライアント折衝が増えるほど、Eの要素が重要になります。
(2)の感覚的か直観的かは、これも双方必要ですが、直観的な方が重要です。抽象的過ぎて現実離れしているコンサルも困りものですが、ファクト集めるだけの人は単なるリサーチャーで終わってしまいます。
情報へのアクセスが簡単になりゆく中、コンサルプロジェクトのバリューはファクト集めより、洞察力や実行力で差がつくのは言うまでもないでしょう。
(3)のTの思考型かPの知覚型かは、言うまでもなく思考型です。感情的に中期計画や組織制度、PMI施策などを何でも決めるコンサルタント、想像しただけで、そら恐ろしいですよね。
最後に(4)の物事の進め方ですが、これは多くの人とチームを作って共同作業するので、計画的で秩序だっている人でないと、極めて使いづらい人認定されることでしょう。
特に下にアナリストがついてきてチームマネジメントをするようになると、計画が無ければ効果的に協力関係を構築できず、「指示が曖昧」「計画がコロコロ変わる」と、「使えない上司」認定されることでしょう。
勝手に臨機応変にフレキシブルに動かれては、チームワークは崩壊するのです。
投資銀行部門に適したMBTIタイプとは?
IBDに適したMBTIタイプですが、(1)のEかIで言えば、これも両方います。むしろジュニアの頃に活躍するのは、社交的なEより、一見退屈な作業にコツコツ向き合える、Iの方が向いているとも言えるでしょう。
ただ戦略コンサル同様、客をとってくるマネジングディレクターになってくると、Eのタイプの方が多いです。
ちなみに、Iなのに投資銀行部門のヘッドを務めていた人もいました。これは、客を取ってくるのは他のMDに任せ、自分は客を取ってくることではなく社内マネジメントに注力していたタイプの投資銀行部門長でした。
しかし彼はいかんせん話が退屈で共感力が無かったため、魅力的な投資銀行ヘッドが率いる他の上位バンクとのピッチ争いで負け続けていました。
そして最後はあっさり首を切られて、40代半ばからは謎の小型M&Aブティックファームを開設して、それはそれは細々と生きていくことになりました。
(2)のSかNかで言えば、アナリストやアソシエイトといった、どちらかといえば言われたタスクを忠実にこなす仕事の時代は、Sの側面が強いと言えます。
変に抽象化して洞察を働かされても困りものです。下積み時代はSの方が向いていると言えますが、上に行っても五感で感じた認識しかできないようであれば、本質的な議論が出来ない人になってしまうでしょう。
ただ、コンサルに比べれば抽象的・直観的なものの見方より、現実的なSが多いです。
(3)のTかFですが、投資銀行部門への適性と言う意味では、これはダントツTです。企業価値分析や契約書の読み込み、プレゼン資料の作成やピッチ、クライアントマーケティングを、全部感情的にされたら、どんなM&Aや資金調達になるのか、不安ですよね。
(4)のモノの進め方ですが、J(計画的な判断型)かP(臨機応変で計画的でない)で言えば、これも投資銀行での仕事はチームワークが大半ですので、Jが有利となります。
また総じて投資銀行部門での仕事は数字を扱う仕事が多いので、コンサルに比べても、Jの要素はより大きくなると言えるでしょう。