
激務というイメージがつきまとう投資銀行・コンサル業界。激務が不安で就職をためらう人も少なくない。しかしいざ入ってみると、IBDを除き実は日系企業よりもよっぽど休暇が多いことに驚かれるかもしれない。実は自由時間が多い3大理由について、解説する。
大阪大学基礎工学研究 男性 Nさんより質問
私は理系出身で、大学の先輩や友達の多くはメーカーや技術職に就職します。そのような仕事はしんどくないとは言いませんが、コンサルなどの金融業に比べたらまだましだと聞いています。
しかし私は若い内に自分の寿命を削るくらい働きたいと思っており、そういう観点からも戦略コンサルを志してきました。
しかし、もしかしたらその大変さは私の想像以上かもしれず、その場合やはりメーカーに行けばよかった、と後悔してしまう可能性もあります。
そうならないようになるべく情報はたくさん集めるようにしているのですが、やはり生の意見を聞いてみたいです。
コンサルに入る前に予想していた仕事の大変さと、実際にしてみた後での大変さにはどこか違うところはありましたか?また、その違いに絶望し、転職や退職を考えたことはありますか?
講師(大手外資コンサル転職経験者)による返答
コンサルのワークバランスは劇的に改善している:プロジェクトの谷間は実は結構休める
コンサル転職後の生活は、皆さんが思っておられるほど、激務ではないです。
第一に、定時出社でないことも多く、基本朝の10時、さらに遅れてくる人もたくさんいます。私もコンサル転職前は毎日9時から深夜の2時まで、、という生活を予想していましたが、開始時刻は実は10時出社ですし、21時ころに帰れることも多いですし、最近では自宅でフレックスで働くことも許容されることも多いです。
勿論プロジェクトの詰めの時などは深夜に労働も及びます。また休暇中であろうと週末であろうと、何かとやらなくてはならないこと、もっといえば自然と”もっとやりたいこと”が出てくるので、プロジェクト期間中は公私の区切りがなくなることも多いでしょう。むしろ、休む間も惜しんでベストの解を探すことに熱中できる人でないと、コンサルとして適正は弱いと言えるかもしれません。
第二に、コンサルは”思ったより休みやすい”のです。コンサル転職前の激務覚悟に比べたら、各段に働きやすく、生きやすい環境です。
もちろん、世の中には休暇の多い職業はたくさんあります。ちなみに今、私は北米の大学で教鞭をとる親族を訪ねてきていますが、この平和で悠久の時を感じさせるストレスフリーな以下の生き様に、ある種別世界の憧れを感じます。
週に3日、2コマ教えるだけで、夏と冬は2ヶ月ずつ休み。月給もIBの若手アナリストくらいは貰っています。豊かな緑とインターナショナルな空気にはぐくまれ、すくすくと幸せな人生が流れているのです。
このような”安み放題の大学教員生活”に比べたら、休暇は少ない方でしょう。しかし、あなたが質問の中で書かれておられるよう”寿命を削ってまで働きたい”という覚悟が必要とされるような激務かと言えば、そうではありません。
では、同じく激務で知られる外資系投資銀行転職後のワークライフバランスはどうでしょうか。
日系企業にはない、ブロックリーブの存在
外資金融転職後も激務かと思われがちですが、これも部門によりけりです。とくに第三のポイントとして強調したいのは、日系企業では取りにくい、二週間単位のブロックリーブの存在です。
特に皆さんには知らされていませんが、セカンダリーマーケットでの投資銀行業務は、たとえば機関投資家が夏休みにはいる8月などは2-3週間たっぷり連休をとれることも多いのです。
社内ルールで二週間の連休を義務付けている会社だって存在します。
またコンサルもアサインされているプロジェクトの谷間に、1-2週間休みを取ることは頻繁であったし、開始時刻も10時から、というのが一般的です。よって夜遅くまで夜更かしして遊ぶことも不可能ではありません(意外と緩い、と感じることも少なくないのです)。
とにかく、上に挙げた特定の職種以外はそう恐るに足らずだ、と言っておきましょう。
日系企業のほうが、よっぽど雑務に忙殺される仕事が多い
むしろ何分の一かの給料で朝早くから夜遅くまで、セクレタリーのアシスタントをつけてもらうこともなく雑務に没頭する、日系企業の若手もたっくさんいるのが実態だと申し上げたいです。
コンサル転職を考えられる際は、激務かどうかはその基準がそれぞれどこにあるか個人差があるので一般化は出来ません。ただ相談者様が仰るような”命を削ってでも働く”という覚悟が、仮に9時5時で、フランスのように有給休暇40日とかでなく、一般的な日本企業の多忙さないし投資銀行などを比較基準に置かれているのでしたら、”コンサル転職後激務説・恐るに足らず”と申し上げたいと思います。
しかしながら冒頭でも申しましたが、コンサル転職は、「プロジェクト期間は公私の差なく、ベストのソリューションを見つけ出すために、また提案内容をさらに改善するために寝る間も惜しんでさらに調査し、考えることが好き」、という傾向を持つ人の方が、コンサルとしての適性は強く、活躍する蓋然性が高い、と念押ししたいと思います。