ファーストキャリアの就活軸選定と適性検討、「思考の型」への影響を考えよう

  • LINEで送る
ファーストキャリアの就活軸選定と適性検討、「思考の型」への影響を考えよう - アイキャッチ画像

以下は企業創再生に投資銀行のリサーチアナリストの仕事は繋がるのかという問いですが、これを通じ「キャリア軸の選定」「軸に沿ったオプションの検討」そして、最初のキャリアがいかに長期的に自分の「仕事における志向の型」に影響を与えるのか、解説したいと思います。

ファーストキャリアの就活軸選定と適性検討、「思考の型」への影響を考えよう

京都大学大学院 経営管理教育部Kさんより質問

私は現在、大学院で経営・ファイナンスを学んでおり、将来的には、企業の創再生などに関わる仕事をしたいと考えています。

その踏み台として、市場や企業の動向を分析するアナリストという職種に興味があり、それを軸として就職を考えています。

考えられる業界としては、コンサルティング、総合金融の企業調査部、シンクタンクなど多岐にわたっているため、一つの業界に的を絞って就職活動を行うのが難しいことが自分の問題点であると認識しています。

とりわけコンサルと金融では、両業界の性格が全く正反対であるため、入社する業界によって、自分の思考の型が形成されるのは必然と言えます。

企業説明会や、インターンの面接などを通して、両業界の社員や雰囲気の違いなどは実感できたものの、自分がどちらに適性があるのかわからないままです。

この進路形成をどのようにご覧になりましたでしょうか。経験や情報の少なさから、現在といたしましては上記の進路しか考えることができない現状で、自分の業界研究の甘さを反省しています。

進路に関して他にも代替案が存在するのであれば、それを教えていただければと存じます。

企業創生・再生へのキャリアは、証券会社アナリストの仕事とは、ほど遠い

素晴らしいご相談ありがとうございます。まず、企業創再生へのキャリアを目指すとき、証券アナリストの仕事はあまり関係がありません。

そもそも創生と再生ではベンチャー投資とディストレスド投資の違いがあり全く違うキャリアパスになりますが、そのいずれにも、証券アナリストの仕事はあまり関係が無いのです。

証券アナリストの仕事はあくまで第三者として、公開情報に基づき上場されている大企業の投資判断に寄与する情報をリサーチ・分析する仕事です。

再生系の仕事は客観的に評価というより、プレーヤーとしてレンダーマネジメントし、バランスシートリストラをし、事業リストラで集中選択し、トップラインを伸ばす仕事なので、「見て評価して、売買判断出す仕事(しかも半分は外れる)」とは、仰るように「思考の型」がフィットしないのです。

また創生系に繋がるのは、いけてるファンドから投資を受けているスタートアップに入るか、ベンチャーキャピタルに(新卒採用はほぼしていませんが)入るか、優秀なコンピューターサイエンスのエンジニア捕まえてDXディスラプションする起業するか、等々です。

これもまた、エスタブリッシュされた企業向けのアナリストの仕事はほぼ関係がありません。

一見「ビジョンに遠いキャリア選定」だったのに、運よく繋がるケースも

ただ”ほぼ関係が無い”と申したのは、実は関係があるケースも実際にあったからです。

例えばアメリカの著名な500スタートアップが日本に進出した時、その日本人パートナーは、野村でスタートアップのリサーチをしてきた人でした。

彼がグリーベンチャー上がりの人と組んで500スタートアップの初期ファンドレイズに、野村時代のネットワークを活かして数十億集めたのが起点でした。

証券会社に入るにせよシンクタンクに入るにせよ、創生系に特化したリサーチ職を得ることが大前提になってきます。

キャリア選択の軸・他の選択肢・自分の適性・ファーストキャリアに影響を受ける思考の型について

相談者様はここで、いくつかの重要なポイントを挙げられました。
まずキャリア選択の軸ですが、この軸が将来ビジョンと合致していないことが多いのです。このケースでもそうですが、創生や再生に繋がる軸は、市場動向の分析だけではありません。

かつ一つに絞るにしても、優先順位の高い、最もRelevantな軸とは言えないのは、ここで説明させていただいた通りです。キャリアビジョンと、それに繋がるキャリアをソートする軸を、今一度考えなおしましょう。

キャリアの軸選択が正しくても、その軸に沿った選択肢で間違うことも

次に他の選択肢ですが、キャリア選択の軸を正しく捉えなおした後で、よりその軸とフィットの高い選択肢は数多くあるモノです。

多くのケースで、コンサルや外資系投資銀行を”その軸”に近づける思い込みをされるケースが多いのですが、例えばコンサルでもどのようなファームでどのようなケースを経験するのかによって大きく関連性の有無が変わってくるので、気を付けましょう。

ちなみに再生系に繋がるキャリアの選択肢は、下記に関連コラムを記載しておりますので、そちらをご参考ください。

キャリア選択の軸にあっていないキャリアオプションに突っ走ってはならない

また自分の適性ですが、軸に沿った複数のキャリアオプションから自分自身が興味を持ち、活躍できる仕事を選ぶことが非常に重要になります。

最初のキャリアで活躍することで、自信もつきますし、レピュテーションも高まり、次の選択肢への道も開けるからです。

選択に失敗し「何に向いていないか」を知ることも重要ですが、最初から自分の適性に近い仕事をして、「何に向いているか」に近づくほうが、より重要なのは言うまでもありません。

ファーストキャリアの選択は、長期的な「ビジネス思考パターン」に多大な影響を与える

最後に重要なのが、「ファーストキャリアの影響を受ける、思考の型」です。実際に、社会人になった直後の数年で経験する仕事の仕方やお金の稼ぎ方は、自分の「稼ぎ方」モデルに大きな影響を与えます。言い換えれば「ビジネスパーソンとしてのOSインストール」的な影響を受けるものなのです。

私の友人で、かつてMSCBの発行が盛んだったころに投資銀行でファーストキャリアを進んだ人がいますが、彼はその時に楽して儲かった原体験が忘れられず、その後独立した後も怪しげな会社にMSCBを発行させてショートを浴びせかけて稼ぐという、怪しげな稼ぎ方の癖が抜けない仕事ばかり続けてしまっています。

またリクルートなどで仕事を始めた人は、独立後も人材紹介系の仕事をしていることが多いモノ。最初のキャリア選びは、その後長期間にわたって、自分の「働き方」「稼ぎ方」の思考パターンに大きな影響を及ぼすものなのです。

(ちなみにコンサルを長らくやった人は、最初にリスクをとって自己資本を投じることを嫌い、フィーを確保できない仕事はやりたくないというメンタリティになりがちです。)

企業創生や再生を「暫定的キャリアビジョン」として志望動機を紡ぐ方は非常に多いのですが、上記ポイントを再検討された上で、御自身にあった軸の選定とキャリア選択をされることを、祈念する次第です。

コメントを残す

*

CAPTCHA