
将来、企業再生に関わりたいという方で、コンサル・投資銀行を志望される方がよくおられます。企業再生のビジネスモデルを踏まえて、そのお悩みにStrong Career講師がお答えします。
企業再生ファンド転職につながる、ファーストキャリアの3大パターンとは?
京都大学大学院 経営管理教育部 Sさんより質問
将来は企業再生に関わりたいのですが、コンサルか金融、どちらが最適のキャリアでしょうか?
講師からの回答
企業再生の為にコンサルと金融、どちらのスキルが最適と言う質問への答えはありません。
企業再生にはいくつかの段階があり、コンサル、金融ともに有用なスキルだからです(もちろんコンサル、金融といっても幅が広いので、一概には言えないのですが)。
ただ、どのようなスキルが企業再生キャリアに有用なのかを、書かせていただきます。
銀行との交渉~バランスシート型企業再生に有用な3キャリアとは?
まず最初に銀行との交渉がありますが、これは金融の、特にM&Aの過程で学ぶスキルが必要となります。
銀行にどれだけ債権カットしてもらうか、どのような交渉戦術で臨むか、規制当局とどう折衝するか、経営陣の心をどう掴むか、私的整理の時は各ステークホルダーをどうまとめるか、民事再生の時は所謂プレパッケージ(長くなりますので割愛します)にどう持ち込むか、、などなどは、特定の金融業務でなければ学ぶのが難しいでしょう。
なおこのような金融再生型案件は、バランスシートリストラが必要なので、バランスシート型企業再生になります。
するとバランスシートの右側、負債サイドの再構築が必要であり、どのようなお作法で債権者にヘアカット(債務放棄や縮小)を飲んでもらうのかという交渉経験が有用で、企業再生弁護士や銀行のコーポレートローン担当、ゴールドマンなどで一時流行っていた不良債権買取部門などでのキャリアが役に立ちます。
オペーレーション~成長企業しか経験していない経営陣は、再生案件で使えない
次にディールストラクチャーをまとめた後に企業に入っていてバリューアップの為のオペレーションを行うのですが、これはコンサルティングファーム出身者が重宝されます。
中でも実際企業のマネジメントを経験したことのあるコンサルタントはこの点強いでしょう。
例えば再生ファンドにはマッキンゼーやベインアンドカンパニー出身者が多く活躍されています。とくにオランダなど海外のマッキンゼーオフィスでは、ターンアラウンド案件を中心的にこなすチームもあります。
これが他のコンサルと違いユニークなのは、コンサルファームへの収益が改善EBITDAに連動するため、コンサル側に一定の権限があり、案件受注前にこれこれの方策は企業が同意しなければならない、という契約に基づいているのです。
ちなみに企業のオペレーション、マネジメントスキルは再生ファンドで非常に重宝されます。よって仮にコンサルティングや投資銀行に進まれなくても、不採算部門を抱えるコングロマリットで事業部門の再生や売却、リストラクチュアリングの経験を積まれると、再生ファンドへのキャリアに大きなプラスとなることでしょう。
なお、企業の再生局面で意外と役に立たないのが、これまで成長企業でずっと働いてきた人たちです。こういう「上げ潮に強いが、引き潮での振る舞い方を全く知らない人々」は、対銀行交渉や月々のキャッシュフローマネジメントまで、全く対応できないことが多く、再生可能だったはずの企業も時すでに遅しで潰れてしまうケースも多々あるのです。
最後にまとめますと、企業再生キャリアにはバランスシート型再生なのかオペレーション型再生なのかという2つがあり、前者は銀行や弁護士や不良債権ビジネスの経験、後者はコンサルファーム、中でもターンアラウンド型のコンサル経験や、苦境で頑張った事業会社経験が活きてきます。
(なお付け加えるなら、再生案件のサイズが小さいものであれば、地元の地銀や税理士先生など、富裕層の資産管理に近い人に、地元企業の会社が潰れかけている、などの情報が集まるので、ディールソーシング的に有用だったりもします。)