
投資銀行は、「働き方改革」と若手過労死を受けて、やや過酷さもマシになっています。それでも激務であることに変わりはありません。日本人は「言われたことをまじめにこなして褒めてもらう」という承認欲求に突き動かされているケースが非常に多いです。しかしながら、貴方は資本主義のコマになるために産まれてきたわけではありません。間違っても死ぬほど働いてはいけません。以下ではそもそも、仕事が過酷過ぎる理由と、働き過ぎて本当に死んでしまわないためのポイントを解説します。
投資銀行激務で父が過労死!!投資銀行の奴隷仕事が過酷過ぎる3大理由とは?
東京大学経済学部 Sさんより質問
自分の父親が以前、外資系証券会社に勤務しており、面接等で投資銀行に興味を持ったきっかけとして、話すことがあります。父は私が高校2年の時に、過労が原因で亡くなっており、おそらく仕事が忙しすぎたことが原因になっていると考えられます。
この事情を話すと必ず、「自分も同じ道に進んでいいの? 仕事はほんとにきついよ。」という質問が飛んでくるのですが、これに関する明確な答えが用意できません。
確かに、長期インターン中も平日の睡眠時間は4時間前後で、正直体に無理を強いる仕事だと切に感じました。しかし、仕事の面白さ、やりがい、成長の実感などには大きな魅力を感じました。
このような悩みを抱える中、本採用の面接に進んでも大丈夫なのかと思っています。実際に働く社員の方はどのように考えているのかご意見を拝借したい です。
投資銀行での奴隷激務:うっかり入社して、どっぷりハマって抜け出せなくなる前に、考えるべきこととは?
御尊父様のご逝去、お悔やみ申し上げます。
実際私の以前の職場の投資銀行で非常に優秀だった上司が30半ばで過労死しており、生真面目でサボり方を知らない人にとっては時に過酷なまでの労働環境になりえるのは事実です。
一昔前、投資銀行ではロンドンやニューヨークでの若手バンカーの過労死を受け、また日本でも電通の一件から投資銀行にも労基の査察が入るようになり、実は一昔前に比べ各段に労働時間は短くなっています。
しかしそれでも、深夜まで働くのが当然である投資銀行部門などは、その過酷さは”やりがい”や”報酬””成長の機会”などを考えても、今時の若者を惹きつけるのは無理なワークライフバランス感覚の無さを露呈しています。
このトレードオフは最終的には個人の判断ですが、個人的には投資銀行が最も優秀な若者に選ばれなくなりつつあることの本質的原因の一つであるように思います。(中に入って長くなると、それが当たり前になり、感覚がマヒして働き続けてしまい、出られなくなっている人も数多くいらっしゃいます)
以下ではやりがいと辛さのバランスについて述べましょう。
投資銀行は何故、激務なのか?:労働時間の長さと、無駄な作業を下に強いる悪しき企業文化の悪循環
辛さに関してはまず第一に、労働時間の長さと、無駄な作業を平気で下に振る、投資銀行の悪しきカルチャーに起因しています。業務の多くは一見、意義を見出しづらい無意味に思える下作業であり、労働時間も長時間にわたります。
第二に、投資銀行部のビジネスモデルとバンカーの評価指標に問題があります。常にマーケティング、常にピッチブックをつくるビジネスであり、常に走り続けなければならない業態なのです。
また3点目として、自分が若い時に不当にこきつかわれたため、自分がアソシエイトやVPになれば、アナリストをこきつかうという悪循環が続いてしまっています。
それらに耐えてきた上司が効率を無視して深夜・明朝まで部下を働かせるカルチャーが根付いており、生真面目な所謂エリート学生を採用するため彼等は粉骨砕身その無駄な要求に応じてしまう、というのが実態ではないでしょうか。
投資銀行業務は、成長する機会に恵まれているのも確か~意味ある「成長」かどうかは、ビジョン次第
勿論、投資銀行業務が好きな人にとっては、よい勉強もできます。新卒で一年目に1カ月以上、ロンドンやニューヨークでグローバルトレーニングを受けられますし、英語を自然に学ぶ環境という意味でも恵まれているでしょう。
下っ端のメモとりとはいえ、顧客企業の上層部とミーティングに参加できますし、過労にもめげず日々の業務外でファイナンスを勉強しようとすれば優れた人材リソースも揃っています。
かつM&Aのエクセキューションチームに入れば激務と引き換えに、バリュエーション、ドキュメンテーション、M&A実行の実務を学べ、これらはあらゆる業界でツブシの利くスキルであるのみならず、一流のプライベートエクイティファンドへの道が開けてきます。
実際、某米系投資銀行で5年の長きにわたってアナリスト、アソシエイト生活を送ったのち、信じられないほどの長時間労働と引き換えにモデルをガリゴリ作り上げるスキルは業界随一となり、見事大手リージョナルバイアウトファンド2社から内定をもらい、CVCに転職していった当セミナー講師陣も存在します。
総じて様々な分野で出世する人も多いので、彼等と人脈を築いておけば10年後の転職市場で大きな力になることを後に知るでしょう。
つまるところ、この成長が意味あるかどうかはひとえに、そのようなキャリアを望んでいるか、このような仕事が好きかどうかという問いへの、正直で率直な自分の答えを見つめることが重要なのです。(成長できると言っても、この方向にビジョンがない人にとっては、それは意味ある成長とは言えないのですから。)
実際にディールメークだけが好きな人の実例として、投資銀行部ヴァイスプレジデントから、せっかくプライベートエクイティファンドに転職を遂げたのに、激務の古巣にエグゼグティブディレクターとして数年後帰ってきて、投資銀行にキャリアを好んで捧げている人も存在します。
このように、激務覚悟で自分を捧げたいかどうかは、自分がどの仕事を面白く向いていると思うか、が最も重要な判断基準になるのです。
投資銀行の激務と過労で、死んではいけない!!~死ぬほど働くことに、慣れてはいけない
最後に強調しますが、間違っても死ぬほど働き過ぎて、死んでしまってはいけません。
往々にして仕事で忙しくしていることが生きる目的化してしまっている人が見受けられますが、あくまで仕事は幸福な意義ある人生を実現する一部ないし手段なのです。
今の会社がすべてではありません。出てしまえばその会社などなくても、世界と貴方の人生はほぼ何の問題もなく、回り続けるモノなのですから。
健康や命を失うほど働いては元も子もないので、危険な長時間労働に慣れてしまわないよう、十分気を付けましょう。