戦略コンサルは机上の空論ではない!その3大変化と、13もの多様なコンサルケース

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コンサルの業務は、外部から”机上の空論””口だけで実行されない”などと揶揄されることがあります。その実態はどうなのでしょうか?20年以上前のコンサル勃興期に比べ、コンサルという言葉の意味も様変わりしました。期待される役割やカスタマイズの度合い、契約形態にも変化がありますし(日本オフィスは少し遅れていますが)、コンサルプロジェクトの中身も多種多様です。ただ、コンサルのクライアント企業への関与の幅が下流の実行支援に広がった反面、上流の戦略立案には関与できなくなった悲しいコンサルファームも存在します。

早稲田大学 商学部のコンサル志望者の方からの御質問

戦略コンサルの、実際の業務の内容やレベルを教えてください。

理論上の提案ばかりが多いという話を聞きますが、どこまでクライアントに踏み込んだ仕事を行うのでしょうか。

またその期間の長さはどれくらいが一般的なのでしょうか。

講師による回答:コンサルは実行に回るケースが増加、期間は最短2週間、ときに数年に及ぶことも

理論上の提案ばかりというのはそれこそ今から20年以上前の、日本に外資系戦略コンサルがまだ今ほど根付いてなかった頃の、大昔の話ではないでしょうか。

いま、実行に落ちないパワポだけ渡してもフィーを継続的に貰えるほど甘い世界ではありません。なにせ理論レベルの抽象論、一般論はコモディティで無料になっているのです。

世にあふれる書籍や一般的なノウハウとの違いは、第一にどれだけクライアント企業に個別具体的にカスタマイズするかできまります。

だからこそ、コンサルプロジェクトではかなりの時間を使い、クライアント企業の具体的実態を根掘り葉掘り聞くのです。

ここだけの話、実は中にはレポートの大半が、単にクライアント企業の社員が言っていたことをまとめただけ、というケースもあります。

社員のコメントを綺麗にまとめて、オウム返しでクライアントにプレゼンし、「私たちが思っていたことと同じだ!」と感嘆されることがあるのですが、そりゃそうでしょうと。。
「何せあなたたちが言ってたことまとめただけのレポートなんだから、、」という事態も、コンサルアルアルではないでしょうか。

第二に、多くのコンサルファームがクライアント現場での常駐・高級派遣業モデルに転じました。

関与の度合いも広がっており、周りを上手く巻き込み説得し、継続的に指名をもらう”知的水商売”的な側面があると心得ておきましょう。

ただし気を付けないと、単にRPAの実装、SAPの導入ばかり繰り返して、肝心の本来やりたかった上流工程の戦略立案に一切関与できない「名ばかりコンサル」に転落しかねません。

コンサルと言いつつ、相談されずに仕事を振られるのですから、実態は単なるアウトソース先といった方が正しいのではないでしょうか。

コンサルの関与が下流に広がった反面、上流での関与が出来なくなった悲しいコンサルファームも実際に存在するのです。

第三に、より成果連動型のプロジェクトも見られるようになりました。これは欧州のマッキンゼーなどで実際にあるのですが、KPI達成に連動した報酬体系のプロジェクトも行われています。

つまり成果報酬型で、カットしたコストや上がった利益に連動したフィーをもらうケースもあるのです。(もちろん、アドバイスだけで実行が担保されないとKPI達成も無理なので、契約時点でマッキンゼーに一定の意思決定権が付与されるのですが。)

コンサルのプロジェクト期間は、短い2週間から、下手したら数年に及ぶことも

なお、コンサルのプロジェクト期間も様々です。一番短い調査系であれば、2週間というのもあります(それでも1000万くらいチャージします)し、長ければ2年以上のプロジェクトに参画している同僚もいます。

こうなるともはや、コンサルタントというより、契約形態の異なるクライアント先の従業員ともいえるでしょう。(そうならないように一定期間でコンサルタントが希望を出して違うプロジェクトを選べるようにしているB社のような事例も増えてきています。)

かつて、コンサルと言えば3か月ごとにいろんな業界や企業、ファンクションを経験できるから視野が広がり面白い、などと言われました。確かにそのようなファームも今でもありますが、コンサルファームの数が増えるにつれ、各社が自社の関与スコープや提供価値、価格帯の面で、差別化するようになりました。

さて、ご質問に戻ります。コンサルプロジェクトの、際の内容やレベルというのは、あまりに幅が広いので、以下にコンサルプロジェクトのいくつかのパターンを紹介しましょう。

コンサルプロジェクトのタイプ、私が経験したコンサルケース13パターンとは?

たとえば私が短期間で経験しただけでも、①10年後のビジョン設定、②組織のあるべき姿、③創業時のカルチャーを引き継ぐには、といったソフトなプロジェクト、④某部門の閉鎖/存続にアドバイスするケース、⑤A部門の売り上げを上げるためのケース。⑥あと買収先との諸々の統合をはかるPMI(Post Merger Integration)ケースがありました。

中には⑩通産省に某課題の方法論を考えてくれ、とケースがくる事もありましたし、⑫巨大な小売店チェーンのターンアラウンド戦略策定/実行に御呼ばれすることもありました。

あと他によくあるのは、⑬”すでに結論は決まってるのだが、経営陣が、外部からのお墨付きが欲しくて結論をめっちゃ誘導しまくりながらコンサルにレポートを書かせるケース”です。

業界のことわざみたいなもので、”マッキンゼーを雇ってクビになった人はいない”(実際はたくさんいそうだが。。。)というのがあります。

これは、”一番高い優秀な専門家も同じように勧めたのだから、、”という、”外部からのお墨付き効果”を狙ったプロジェクトも無きにしもあらずなのです。

また⑦マニアックな携帯電話の新技術の市場価値を算出するケース、⑧競合他社のやり方をベンチマークしてベストプラクティスを抽出するケース、⑨日本市場だけで売っていた耕作機械を、欧米のパートナーとアライアンスを組んでグローバル展開を始めるケースなど等、私が短期間で経験した戦略ケースだけでも、実に多種多様です。

コンサルプロジェクト、どこも実行支援を謡いだしているが、戦略立案に軸足を置き続けるファームも存在

口先を出すだけ、と揶揄されることがある戦略コンサルですが、中にいた人は確信を持っていえるが、決してそんなことはありません。

やたらと、コンサルをしたこともないのに「コンサルは口だけだから、、、」と謎の敵意を燃やしている人がいますが、仮に外資金融などを受けて「なぜコンサルではなく金融か」などの昔ながらの古臭い質問がされたとき、間違っても「コンサルは口だけだから、、」などと実態を経験したこともないのに、安易に特定の業種を貶めるような回答はやめておいた方が良いです。

もちろん、ベインやLEKのように戦略ケースに特化して実行支援は極力やらないファームもあります(結果的にオフィス拡大でBCGに大きく差をつけられました)。

しかしながら別に上場しているわけでもないのだから、無理してやりたくないプロジェクトにスコープを広げて売り上げ・利益拡大をやみくもに追求する資本主義のコマになり下がる必要もないのです。

自分たちが提供したい価値のタイプへのこだわりという意味では、自分たちがやらない、やりたくないケースを明確に理解し、いたずらな業績拡大を求めず「自分たちが齎す価値はこれだ」という軸をぶれずにもっているのは、ある意味立派ともいえるでしょう。(ただし中には、単に成長できなかったことへの負け惜しみ、言い訳に使っているファームもあるので、一概には言えないのですが。)

「コンサル業界」と括れないくらい、多様化が進展するコンサルファーム

思えばコンサルティングという業界や言葉も、中身が大きく様変わりしました。前述のよう、中にはコンサルでもなんでもなくて、総合系コンサルで下流のRPA導入エクセキューションの繰り返しで、レジュメ上はコンサルとなっているものの、中身は全く戦略コンサル出なかった、という人も増えています。

2020年初頭のコロナショック以降、コンサル各社の業績拡大が反転し、解雇・採用フリーズの局面を経てコンサル転職がこれまでよりハードルが高くなっています。

だからこそおちついて「コンサルファームとはいえ、自分はどんな価値をコンサルとして出せるようになりたくて、そのビジョンにフィットしているコンサルファームはどこなのか」をきちんと考えて応募しましょう。

さもないと、たかだか200万年収が上がって労働時間は倍になり、おまけに1年たったら同じ作業の繰り返しという憂き目にあってしまいます

最後にご質問への回答を強調しますが、コンサルのクライアントへの関与度合いは大きく変化していますし、ファームによっても棲み分けが進んでいます。

「コンサル業界」と同じ枠組みの中に入れるのが不自然なくらい、同じコンサルファームを名乗っていてもやっていることが大きく変化してきていることを知ったうえで、ファームを選択するようにしましょう。

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