
戦略コンサルティングファームへの面接対策で重要なことを失敗例から学ぶためのコラムを作成しました。
市販のケース面接対策本を、鵜呑みにしてはいけない
新卒にしても、転職志望者にしても、相変わらずケース面接に関して色々と当サイトに質問を寄せていただく機会が多い。当セミナー設立当初と異なり、いまやどの本屋の就職対策コーナーもケース面接対策本で埋め尽くされている。
しかしながら、誇張と無責任な断言のない就職対策本は存在しない。売ってる本は作者が誰なのか、どんな誇張があるのかを注意深く見て、本の内容(元コンサルが書いていると謡っているもの等)を鵜呑みにするな、と忠告したい。
東大の学生や内定者で、コンサルをまだ経験していないか数年しか経験していない人が書いている本は、大学受験のテキストのようで形式的なテクニックがふんだんに盛り込まれているが、やはりコンサルタントとしての実際のビジネス感や現実性が乏しい。読んでいて、「この人はたまたま受かっただけなのに、ケース面接のプロと誤解しているな」と思わせる表記も多く目につく。
ないし、コンサル出身者でもない転職エージェントや、いわゆるセカンドティアのコンサルファームで数年在籍し、うだつが上がらず首になって学生相手のキャリアアドバイスなどをやっている人がケース面接対策の本を読んだ内容を、あたかもプロのように講釈している姿は、まさに圧巻である。
試しに彼らが用意してきていないケース面接を出してみよう。まったく対応できずに、あたふたその場を濁して逃げてしまうことであろう。
また、海外のケース面接対策本も、MBA卒を対象としたもので新卒のケース面接やローカル採用の日本人転職者向けに日本人のコンサルタントが出すケース面接としては、内容が全く異なることにも注意したい。
なおもっとも失笑なのが、ビジネススキルを鍛える、などと称してケース面接トレーニングで転職志望者を釣り、クライアント企業に当てはめるケースだ。向いてないのにこれだけ対策して、間違って入社して全く活躍できず干される人が実に多いわけだが、受験勉強のノリで小手先面接対策だけしても、転職者側も雇う側も不幸で、儲かるのはそのケース面接対策つきのエージェントだけになってしまうではないか。
そこで、外資コンサル/外資金融の世界で長年働き、同僚も世界中のマッキンゼー、BCG、ADL,ベイン、ブーズアレン(現・Strategy &)のプリンシパル/ジュニアパートナークラスに出世した今、最近彼らと話して感じた”面接対策典型的落とし穴”について、少しシニアの視点から書いてみたいと思う。
ケース面接点綴的失敗例①:いかにもケース面接対策の勉強してきました、というフレームワークを連発するが、内容が超絶つまらない回答は問題外
まず、ケース面接など所詮対策次第でなんとでもなることが浸透しており、面接官である我々の側からすると、フレームワーク対策がちがちで、つまらない内容の無いことをぶつぶつ言われるのが一番キツイ。
所詮、論理的に超賢い、などというのは(ある程度賢い人の間では)あまり差がつかない。面白みのある、センスのある話を、ある程度論理的な全体感の中で話せてるかどうかが肝心なのだということを強調したい。全然目新しくもない、面白くないありきたりの話を、いかにも“対策してきました系“のフレームワークで話されるうんざり感は、堪らないものがある。
ケース面接点綴的失敗例②:ケース面接対策学習丸出しの、画一的なマニュアル対応
そもそも、同じマッキンゼーでも面接官によっては拘るポイント、好きなタイプが違う(ベースで共通する部分はあるが)。
当然基本的な指針はあるが、細部のアプリケーションや決断はケースバイケースであり、個別の文脈と空気を読むしかないのである。(一定の指針は当然当セミナーでも提供しているが。)中にはケース面接なんてどうでもいい、と思っているパートナーも存在するのだ。またケース面接でヒントを出したり反論をしたときに、うまく意見を取り入れてアイデアを消化させる知的マナーを有しているかどうかや、分析対象の優先順位付けするときのロジックの確かさ、また解決策を出すときの発想の豊かさ、そして「当たり前プラスアルファ」を言えるセンスなど、人によって見たいポイントは微妙に変わってくる。にもかかわらず、空気を読まずにマニュアル的な対応しかできない人は、総じて話していても会話にならず、面接官としても面白くないので、よい印象は与えられないのである。
ケース面接点綴的失敗例③:過度な緊張:面接官を絶対視して、恐れおののかない
また、面接を受ける側からすると面接官は偉大な知的権力者に思えて怯み勝ちであるが、残念ながら入社数年間は所詮、社内ではデータ集めとパワーポイント作成の下働きを始めたばかりで、上のマネジャーやその上のディレクターから毎日、コンサルとしての仕事の出来を詰められている人達である。
そしてそのマネジャーやディレクターも、日頃クライアントに毎週散々怒られているのだ。
面接官の知的レベルを、過度に恐れてはいけない。相手を過大評価して緊張しても、百害あって一利なしである。結局のところ、全知全能のアドバイザーなどおらず、肩書きの凄い憧れの会社のシニアマネジメントでも、結構的外れで適当なアドバイスをしてくることを肝に銘じたい。
ケース面接点綴的失敗例④:「10の法則」や、「コレをやったらレッドカード」系の、浅薄な内容を信じない
約 15年間、この業界で働いて実感するのだが、その業界で長年働いて現場を理解していて、しかも就職活動者が本当に聞きたい/知るべきポイントの両方を理解して、かつキャリアという人の非常に大切な決断に関するアドバイスに誠実さと責任感を本気で感じている人に相談する必要がある。また我々もそうでなければ就職アドバイスなどしてはいけない、と思っている。
またメディアでマスマーケット相手に売る為、大勢を対象とした、過激な誇張や断言が必要になる。結果的にそのアドバイス内容は、極端で、あまりにも抽象的で、ありきたりで、曖昧で、誰にでも言えて、誰にでもあてはまる無責任な精神論に終始する。
私が一番嫌いなのは、目を引くために”就職活動で失敗する10の法則~””これをやったら絶対レッドカード”等の、読者からの目を引くために、わざわざキャッチーな単語で頻繁に”客を寄せ付けるためだけに”更新される就職アドバイスコラムの数々である。
最後に強調するが、外資セミナーを含め、どの就職アドバイスに接するにしても、面接が多様な個性を持つ人間相手の面接である限り、絶対の解は無い。是非特定の回答やコメントを絶対視することなく、あくまで多様な成功事例からご自身にフィットする成功要素を取り入れて行って欲しい。