
PEファンド転職対策テキスト御購入者の方より寄せられました質問に、ストロングキャリア講師陣で現役のプライベートエクイティファンド勤務者が回答します。
この質問は、PEファンド転職対策テキスト御購入者の方から寄せられた質問に、テキストを作成した現役のPEファンドプロフェッショナルが回答するものです。前のQAはこちらよりご覧いただけます。
プライベートエクイティ投資のアッドオン戦略
質問:P.20 ・Add-on戦略(Bolt-onとの理解)に関して、「言うは易し、行うは難きで、難易度が高く、実現しないことが多い」と記載頂いて御座いますが、カーライル/ソラストやMBK/アコーディア等で行われており、またMBK/ツクイ等ではDay1以降の戦略としてM&Aが掲げられているようにも見受けられ、実行がなされてなくはないと存じます。
当該記載のトーンですが、「数多くの投資案件で、投資検討段階ではロールアップをValue-upの施策の一環として検討していたものの、実際にDay1以降でとん挫することが経験上でも多い」との趣旨になりますでしょうか
回答:ご指摘ありがとうございます。確かに、ご指摘の事例以外にもアッドオン戦略で成功した案件も存在します。ただ投資委員会段階ではアッドオンがテーマでも、いざやってみると買うのが難しかったというケースも多く存在します。
また1ファンドで、10案件投資するとして、アッドオン投資が大半だった、というケースは、弊社が知る限りございません。ただヘルスケアや学習塾など、再編がテーマの業界ではこの事例が増えてきており、これら業界に強みと実績のあるファンドでは、アッドオン投資の蓋然性が高まっていると考えます。
レバレッジ水準近況:コロナ環境下でのレンダー側の変化
質問:P.24 ・2. ディールソーシングの1ブレット目ですが、銀行セクターにおいても、政府主導でコロナ禍により打撃を受けた産業に対する貸出しを許容してきたものの、足許においてその姿勢が反転しつつあります。
貸出先の区分変更も検討する節があるなど、「銀行が低金利でいつまでも貸し続けるため、リストラニーズが低まり」という状況に変化が生じつつあるとも存じます。
回答:ご指摘ありがとうございます。確かに以前のLBOバブルの時と比べ、レンダー側も過去の教訓が活きており、直近でそのような動きがあることを承知しております。
LP投資家との交渉:LPA条項の注意点
質問:P.33 ・「LP投資家にアグレッシブな契約条項を飲まされたり」との点に関して、具体的にどのような契約条項が挙げられますでしょうか。
P.78以降に記載されているターム例の中で、ファーストクローズの段階でLead LPに提示したものから、マークアップでLead LPにFavorな条件を返されたものの、当該Lead LPに入ってもらえないと他のLPの参加も見込めず、また当該条件がLead LPとして譲れないものであるといった状況下で、GPとして飲まざるを得ないといった状況を想定しております。
回答:キャリーをGPが得るタイミングや、Non-fault でのファンド解散発動に必要なLP Voting率(資金ベースで何%のLPの賛同が必要か)などを指します。中にはキャリーなどフィーのディスカウントが入っていることもあります。
LBOモデルの感応度分析
質問:P.34 ・「金利条件・・など主要変数を変えたら、リターンがどう変わるか」との記載の点につき、金利条件を用いたセンシティビティに関しましてはあまり実施した事例はないように思われる(リターン計算上、相対的に重要性は劣後)のですが、どのような状況下で金利条件の変動を考慮されておりますでしょうか。
超長期のプロジェクションや、借入期間が20年前後のような場合に、金利の変動及びそれによる割引率の変化がリターン/価値にどのようなインパクトがあるかを試算することはあるかと存じます。
回答:センシティビティ分析というより、LBOモデルの中で入れる金利(リファイナンス分とタイミング含め)の利率を幾つかのパターンで変えることを示しています。
PEファンドの投資委員会での、エグジット先論議
質問:P.45・一般論として「エグジットパス」をICに説明する際に、(Strategic)Trade-saleを標榜する場合、具体的な売り手先候補及び、想定され得るRationaleも合わせて説明することが一般的でしょうか。
又は、投資保有期間に亘り、実際にどのようなOperational Value-upが行えるか、又はCyclicalな業界であればそのタイミング次第で売り手も変わってくると想定されることから、特にそこまでは説明がされないことが多いでしょうか。
IC視点からすると、Exitの確度を可能な限り可視化したいと思われますので、投資チームもそれに呼応して/見越して可能な限り具体的な説明を行うものと思われますが、一般的にはどこまで具体的に説明を行うものなのかを把握したい趣旨となります
回答:PEファームにもよるかと思いますが、IC段階で(バリューアップや市況次第でご指摘の通り変わるとはいえ)仮説ベースでも、潜在的買い手と、なぜそこが買いたがるのかという理由は、複数挙げられます。
PEファンドによる新戦略ファンド設立に関して
質問:P.48・「同じチームで違う戦略のファンド設立」に関して、素人目から見ても競業避止義務違反に準ずるものかと存じますが、実際に可能なのか(立ち上げ時にも同様にLPAを締結する際に、既に先行ファンドでGPとして活動しているのであれば、新規の異なる戦略ファンドにGPとして関与できない等の縛りがないのか)、また、具体的な事例が御座いましたらご教示頂けますと幸いです
回答:実在するという認識ですが 、具体名は差し控えさせていただいております。なお、当然独立したファンドでの正式な活動開始は、前職ファンドを退社した後となります。
PEファンドのキーマン条項及びLPA以外の縛りについて
「キーマンがどう見ても約束した時間を本業に使っていない」との記載が御座いますが、LPAにおける条項で、キーマンに対して所定の時間を特定案件に割くよう、定量的な制約を規定することが一般的であるとの趣旨となりますでしょうか(P.83い記載されている「パートナーの時間の使い方、アロケーションを教えてください」との質問がLPより来る可能性があるということは、LPAの条項として既に規定はされていないとは推察しております)
回答:LPAで縛られることもありますし、また四半期に一度のアドバイザリーボードミーティングなどでの約束事項も、実質的に縛りとなります。LPAで仮に認められていても、ファンド運用の状況が思わしくなければ、契約上の縛りが無くても、自主的に自制することもあります。
なおどのくらいの時間を使っているかはLPも厳密に管理できないので、Substantial amount of,,,などという表現が使われます。アドバイザリーボードミーティングなどでGP側は、パートナークラスのファンド以外の活動を、報告することが一般的です。