
資本主義の総合格闘技などと言われ、高給のイメージで知られるプライベートエクイティ業界。たしかに儲ける人は何億、何十億と稼ぎますが、中には優秀なのに給与が低く、他業界に比べても貧乏な人も存在します。以下ではプライベートエクイティ業界だからといってやたらと憧れてはダメで、入った後で大後悔しないためのポイントを解説します。
プライベートエクイティ業界でファンドの数が増え、間口が格段に広がったこともあり、給与のレンジも大きく広まった。上を見れば、キャリーで大儲けして数億~数十億を手にする人もいる。しかし下を見れば、500万~1000万くらいでくすぶっている人も少なからず存在する。
今回はその、「貧乏プライベートエクイティ投資家」になる人の3大特徴を解説しよう。
1.新興スモールキャップで、給与の多くが”入ってくるか不明なキャリー
プライベートエクイティ業界での報酬の大部分を占める(ハードルレートをクリアしたリターンが十分に出た時だが)キャリー。
これの大半を創業パートナーががめてしまい、ジュニアパートナーやディレクタークラスにキャリーが回らず、優秀な人材が社外に流出というのは、欲深い創業パートナーが支配するファンドのアルアルである。
しかし逆に、新興ファンドでファンドサイズも小さくマネジメントフィーから十分なサラリーを支払えないので、ベースは1000万に届かない代わり、アソシエイトなのにキャリーの5%を提示されるという事例がある。
これは、それはそれで不安な展開だ。そもそもキャリーが入ってくるのは下手したら10年後とかそんな遠い将来なのに、パートナー自身もキャリーが入ってくるかわからないから、結構な部分を”大盤振る舞い”しているのでは、といぶかしくも思える。
この時気を付けなければならないのは、数年で辞めてもプロラタで、在籍期間に応じた%のキャリーが後払いされる契約にしておくことだろう。
実は私が以前いた会社も若手にも結構律義にキャリーをくれる会社だったのだが、退職して何年も経ってすっかり忘れていたころからしばらくキャリーが入り続けたことから(しかも今も入り続けている)、この重要性を後で痛感したものである。
2.日系大手証券系の、バランスシート投資
日系大手証券は社内でプリンシパルインベストメント、つまりバランスシートからプライベートエクイティ投資を行っているチームがある。ただこれはファンド形式ではないため当然、キャリーというものが存在せず、ベースとボーナスだけである。
かつ社内の給与体系に引きずられるからか、30代半ばでもボーナス込みの1000万そこそこで、コンサルや投資銀行に居たほうがよっぽど多く給料を貰える水準である。
プライベートエクイティ投資は案件によっては面白いし勉強になるので、投資銀行のサラリーからかなりカットされても喜んで転職してくる人が結構多い業界ではある。
しかし30代も後半に差し掛かり転職がグッと難しくなるタイミングになる前に、同じPEでもきちんとファンド形式で、キャリーが出るようなよい投資をできるところに入らないと、やっている業務内容と仕事時間は同じでも、10年間でのトータルコンペンセーションが実に桁が一つ違うこともザラなのである。
3.プライベートエクイティという名ばかりの怪しげな会社
あともう一つあるのが、社名にプライベートエクイティと入っているのだが、中身が全然伴われていないケースだ。私の友人で”もっともキャリアに失敗している”部類の人がこの手の会社に入って沈没してしまったのだが、謎の小口のディールバイディール(投資対象の案件を見つけたうえで、投資家をファンド形式で募る)の資金集めに奔走ばかりして、結局ロクなバリューアップもエグジットも出来ない人たちがいる。
こういうケースでは年収3ケタ台で次の転職が出来るような経験もトラックレコードも出来ず、会社の操業停止と共に退職し、フルコミッションベースの謎の◎◎営業とかになってしまうのこととなる。
勿論ストロングキャリアを共に運営している各PEファームのプロフェッショナルは名だたるLPベースとトラックレコードを誇る優良ファンドの方ばかりなので安心して相談して頂きたい。
仮にちょっと聞いたこと無いファンドから多少高めのベースを積まれて入社を懇願されても、そこで経験できるディールの質や一緒に働く社員の経験値、そして10年後に得られているであろうキャリーの額を考えたうえで、是非冷静なご判断をしていただきたいところである。