
エリートビジネスパーソンたちも、本当は何をやりたいのかわからないことが多く、本当は進路に悩んでいるものです。
外資系金融機関で働くプロフェッショナルが、MBAに進むのかロースクールを目指すのか、進路相談を寄せてくださいました。弁護士資格を有するStrong Career講師が回答いたします。
◆Question (外資系証券会社 ECM勤務 男性より質問)
私は、去年大学を卒業し、欧州系の某大手証券会社の資本市場部で仕事をしています。
といっても、人生本当に何がやりたいのか分かっていなくて、将来の選択肢を広め、人生の視野も広めるためにアメリカでMBAかロースクール留学を考えています。
漠然とした質問で恐縮なのですが、私のこういう考え方の方向性について御セミナー先生方のご意見やアドバイスをして頂けますでしょうか?
今の時点で職歴は1年、留学が開始するまでには少なくとも2年はある計算で、いまのCapital Marketsという部門もレジュメ上「つぶし」のきく職歴に該当するのかな、といろいろ曖昧に考えすぎて、迷っております。
◆Answer (セミナー講師より回答)
心配無用です。貴方は非常に迷っておられる。しかしそれはとても健全な悩みです。
将来のキャリアの選択肢を増やすということは、人生の中長期的リスクをヘッジすることです。
「今プレミアム0円で、人生のコールオプションを買っている」という風に捕らえて、これからも堂々と真剣に悩み続けましょう。
さて、貴方の大まかな悩みについて、私は「何年後にこの学校にいってこうしろ」という答えを差し上げることはもちろんできません。
貴方の人生、貴方が決めるからこそその決断に責任感を持ち、結果として持続と成功と自信に繋がるものであるはずです。
しかし、私の外資系証券会社から米国ロースクールへと歩んだ経験を生かし、「考え方」のフレームワークをお伝えすることはできます。これを踏まえた上で、以下に私の所見を述べます。
まず第一に、自分が本当の本当にやりたい事は何かを考えましょう。仕事の役職名は思いつかなくとも、好きなことくらいはあるでしょう。それが大事なのです。
実は政治家を相手に大きなディールを動かしたい、といったことかもしれません。あるいは、趣味がカラオケと音楽で、自分自身、セミプロで歌手やギタリストを目指していたけど不安定なので金融にきている、という人も見たことがあります。こういった興味関心をもっているだけでも、留学先の決断に指針を与えるものです。
たとえば前者の政治意識の強い元証券マン。これは筆者である私自身の体験です。よって、私の場合は、Juris Doctor degreeと呼ばれる、アメリカのロースクールで得られる学位を取得しました。しばらく米国法弁護士を世界のあちこちでやったあと、故郷に立ち返って政界出馬をもくろんでいます。
あと、後者に上げた、音楽の好きな証券マン。こちらももちろん実在の方で、私の金融時代の元同僚です。
肝心なことに彼も、自分のやりたい事をとても大事にし、それを中心的に考えました。
よって、MBAにもロースクールにもいかず、アメリカのポップアーティスト育成で名のある某音楽大学に脱サラ・社会人留学を果たしたのです。
そこで、一流のカリキュラムをマスターし、今後日本でファンド形式でお金を集めて全国規模で質の高い音楽学校を設立するとのことです。
ここでもまた、金融の素養と個人的な情熱が融合し、留学とキャリアの独自の選択肢へと具現化がなされています。
お金・年齢・能力も考慮に入れるべき重要ファクター
以下は第二のポイントになりますが、その中でも重要なのは貴方の資力。アメリカ留学は、学費や生活費、一切合財を含めて年間800万円を覚悟しましょう。
ただ、博士課程ならば学費がタダに近かったり、奨学金の機会が多いと聞きます。自分が支払いきれるプログラムの類を、じっくり調べて見極めましょう。貴方があと何年間働いてから留学をすることになるのか、にも影響します。
第三に、年齢も重要なファクターです。いくら優秀でも、歳をとりすぎていればキャリア転換はむずかしいものです。管理職の年齢の人がいきなりMBAを取得しても、会社からすれば雇い辛い候補としかいいようがありません。勉強は、特段の理由が無い限りにおいて、早いにこしたことはないと考えましょう。
最後の第四に、貴方の能力です。英語力など、ピンからキリまでありますが、いかがでしょうか。ロースクールでは、TOEFLで最高点近くをとっていても歯が立たないくらい、非常に高度な読解力とspeakingのスキルが要求されます。
その他の学校では、一般社会人がPrinceton Review やKaplanなどの予備校にかよってGMATなどの点数をあげるだけで、現地の留学先でも十分やっていける方が多いと思います。
学校にいってからも競争社会は一緒。全米ランキング20位以下とか、あまり知名度の低い大学院にいくと、それだけ速やかな就職が難しくなることにも留意しましょう。
これまでの自分よりも、これからの自分を自分で決めよう
この「能力」の項目を最後に記載したのには特別な理由があります。能力は努力次第であげられる。
だから、本気でやる気があるなら、能力とは貴方のやりたい事への制限事項ではなく、これから身に着けることのできるプラス事項であると認識しましょう。
私の主たるメッセージは、貴方の質問にあるように漠然と、留学を視野にいれた将来を思考する際、「これまでの自分」を考えのスタート地点にするのではなく、「これから成りたい自分」から始めて上記の条件などに照らし合わせて具現化・現実化してゆく、というプロセスを是非歩んでほしい、ということです。
貴方の真剣で有意義なるその悩みを、我がセミナーは支持しています。