
プライベートエクイティ業界を目指す上で、PE業界からの転職先も気になるものです。中にはPE業界での競争に勝ち抜きパートナーとして左うちわで暮らす人もいますが、40代になってもディレクターでしかも上が詰まっていると、万年雇われディレクターで、お払い箱の憂き目にあうシナリオも見えてきます。また、PE業界に入ったはいいものの、期待値とのギャップに驚き、PE業界を去る人も。それではプライベートエクイティファンドから転職する人は、どのような理由で転職するのでしょうか?転職その10パターンを紹介します。
コンサルや外銀からの転職先として今も人気のプライベートエクイティ業界。
しかしパートナークラスは長々と長居しても、アソシエイトやディレクターといった若手、中堅は次々と転職することも実は多いものです。
マッキンゼーやベイン、ボストンコンサルティンググループ、ゴールドマンサックスといった人気外資系トップファームから転職した挙句、確かに前職より楽で儲かるのに、再度転職してしまうのは、何が原因なのでしょうか?
以下に、プライベートエクイティからの転職理由10パターンを記します。
1.PEファームのパートナーに昇進できる見込みがない
まずは、パートナーに上がる可能性が低い時です。
パートナーとそれ以外では給料と何よりもキャリーで大きな差があるのですが、精神的にもボスと従業員という関係になるため、パートナーとそれ以下では待遇も自由度も大きく異なります。
パートナー昇進会議で上がれないと、次は次のファンドレイズが終わる4~5年後ということになります。
するとすでに30半ばないし40前後のあなたは、次のチャンスが到来するころには40代半ばか、後半になっている可能性があります。
こうなると辞められてしまうのを覚悟でパートナーに上げなかったわけですから、これは暗に「辞めてくれてもいいですよ」というメッセージでもあるのです。
2.PEファームが、ファンドレイズできそうにない
投資先のパフォーマンスが悪かったり、チームに安定性が無かったり、アンカーインベスターを怒らせてしまっていたり。
様々な理由で次回ファンドレイズすることができないとき、PEファームのエコノミクスが悪化し、ボーナスもキャリーも昇進もおぼつかなくなるので、船が完全に沈没する前に転職を選ぶケースが見受けられます。
3.PEファンドの投資先の状況が芳しくなく、キャリーが出そうにない
PEファンドの報酬の大半は、実はベースサラリーでもボーナスでもなく、「うまくいったとき=ハードルレートを上回った時」に入ってくるキャリーです。
しかしながら、投資先で大穴を空けてしまい、どうみてもハードルレートを超えなさそうなときは、「キャリー入ってこないなら長居する理由なし」と、足早に辞めてしまう人もいます。
4.魅力的なスタートアップCXOとして、引き抜かれた
これが最近多いのですが、潤沢なファンドレイズに成功したレイトステージのスタートアップにCFOとかで入り、最後の資本政策と上場準備のエクイティストーリー構築などでIPOまでこぎつけ、入社して比較的短期間の間で、巨額のキャピタルゲインを得るケースも何件か周りに存在します。
往々にして、PEファームを退職して起業した会社の上場準備などで、PEファンド時代の同僚が引き抜かれるケースがよくあります。
5.PE業界転職後の投資先のビジネスが、退屈で意外と規模が小さい
バイアウト投資は大抵、安定フリーキャッシュフローが見込めることが重要です。
しかし安定キャッシュフローがあるということは既に出来上がった退屈なビジネスであることも多く、「もっと新しいビジネスに携わりたい」などと思ってスタートアップやVCに転職する人もたまにいます。
おまけに、実は日本のPEファンドは有名どころでもミッドキャップでファンドサイズは600~800億なので、1案件当たりエクイティ投資は100億程度、つまり中小企業が対象になることが大半です。
すると、せっかくシカゴやウォートン、ハーバードにいって巨大企業動かすはずだったのに、多少儲かるかもしれないけど意外と対象企業規模が小さい、という事態も結構多いのです。
6.PEファームの上が詰まっているので、自分で独立した方が儲かる自信がある
逞しいのが、プライベートエクイティファームでの在職中にLP投資家や潜在投資先の社長と仲良くなっておいて、独立したとたんファンドレイズと投資に成功しているタイプがあります。
この手の若手実力者は、「ろくに働きもしないパートナーを俺の努力で食わすのは馬鹿らしい」とせっかちで、早期に独立してしまいます。
7.長らく働いてきたプライベートエクイティファームで、仲の悪い、嫌なヤツがパートナーに上がった
これも結構多いのですが、パートナーシップというのはお互い信頼しあった人が最後までお互いを守りあえる一枚岩という意味なので、自分より先に自分と仲の悪い人がパートナーに昇進した時、「このPEファンドに長居しても、未来はないな」と見切って、早期に転職する人が結構います。
似たような退職理由に、キャリーの大半をもっていっているパートナーが、日頃からどう見ても働いていないのに耐えきれなくなり、「こんな不公平なキャリー配分でやってられるか!」と、他ファンドに移るケースも見られます。
8.尊敬していたパートナーが辞めてしまった
上で「嫌いな人がパートナーに昇進した」の裏返しなのですが、お金も案件も人材も、結局は「人」についてくるビジネスです。結果的に尊敬する上司が引退したタイミングで人材の大量離脱が起こったりもします。
特に当該PEファンドの歴史が20年を超えると、創業パートナーの多くが世代交代の年齢に差し掛かり、このパターンのPE退職が起こっています。
9.プライベートエクイティ業界のピークは過ぎたと見切った
PEファンド黎明期の1990年代後半と違い、すでにプレーヤーも多く、バリュエーションも高く、上も詰まっているのでタイミング的にピークは終わったという声もあります。
「そもそも日本に、プライベートエクイティというソリューションは求められていない、銀行が安いキャピタルじゃぶじゃぶ貸してくれるんだから。プライベートデットはまだ需要があるだろうけど、、、」などと悟って、他業界に転職する人もいます。
10.プライベートエクイティファンドでの投資担当というより、投資先への派遣社員みたいになってしまった
プライベートエクイティというと様々なポートフォリオ企業に投資して、バリューアップして、売却して、という華々しいイメージをお持ちかもしれません。
しかし実際は一つの案件にびったりへばりつくことになると、それこそコンサルの長期常駐案件と変わりなく、プロフェッショナルファームというより高級派遣みたいになっている人もたまにいます。
思ったより幅広い業界を見ることができず、本来のイメージとのギャップに転職する人も少なくないのです。
「BCGでの常駐案件が嫌だからPEファームに転職したのに、今度は中小企業での常駐やないか。。。しかもコンサル時代より同じ会社にべったり3年担当やし。。」などという憂き目にあって、PE業界から転職する人もいます。
以上、プライベートエクイティから転職を考える人の10大パターンに関して、論じました。ご参考いただけると幸いです。