
コンサル業界の多様な分化と、ビジネスモデルや業務・人材像の変化について、解説いたします。
コンサル業界の再定義が続く~売り上げ増の大半が、デジタリゼーションなどの新領域?
コンサル業界は形を大きく変えてきています。コンサルファームが投資ファンドを創ったり(なかには失敗して大損してコンサルの本業まで危うくなった会社もありましたが)、デザインコンサルファームやデジタルコンサルファームを買ったり、メディアプラットフォームを創り出したり、広告枠を買い出したり(アクセンチュアの事例)といった具合です。
逆に多くのクライアント側企業も、”コンサルティングソリューション”を提供し始めているので、業界同士の垣根の再定義が続いている状況です。]
また、従来の”ベストプラクティスの横展開”方式ではなく、非連続イノベーションを産み出すニーズの取り込みにコンサル各社も動いています。
なお、デジタリゼーションやブロックチェーン、AIやRPAの浸透で従来と異なるコンサルティングプロジェクトが急増しています。
これは某大手米系ファームのパートナーと先日話していた時に聴いた話ですが、デジタリゼーション対応は某大手戦略ファームの実に7割の売り上げを占めるまでに急成長した新市場です。
コンサル市場は数年前と比べ、急速に様変わりしてきているのです。
拡大するコンサル人員採用と、進む”サラリーマン”化
中には昔ながらのやり方に固執していつまでも大きくならないファームもあります。
しかしそんなところでも今はコンサルビジネスが活況を呈しているので、仕事は受けきれないほど溢れかえっている状態です。
人員採用も増加しており、アクセンチュアやアビーム、野村総研は毎年200人~500人規模の新卒採用を実施しています。
PWCも100人規模で、マッキンゼーやBCGなどトップファームも数十人単位で採用するようになっています。
結果的にサラリーマン化が進んでいるとも言われますが、逆に言えばサラリーマン的な動きでも廻るくらい、ビジネスが確立されたことの裏返しでしょう。
そして、高単価の数人のパートナーが相談にのる伝統的なコンサルビジネスではなく、大勢の若手を現地に送り込んで桁違いの報酬を得る”高級人材派遣化”が進む中、コンサルタントのサラリーマン化が進んでいるという声が、いたるところで聞かれます。
なお、東大生の人気就職先ナンバーワンがアクセンチュアなどコンサルティングファームになっています。これはコンサルティングというビジネスがエスタブリッシュメントとなり、コンサバで保守的な東大生が大挙して押し寄せる”普通の業界”になったことの表れともいえるでしょう。
コンサルのビジネスモデルと人材像の変化~”新たな知見の提供”だけでは食べていけないコンサルタント
中には”高級人材派遣業化している””ITソリューションを売るための入り口になっている”と揶揄されることもあります。
しかし、これまでのような”新しい知見の横展開””他業界のベストプラクティスの展開”などがネット検索でいくらでもできるようになったので、顧客が知らない知見で勝負するのが難しく、実行・エクセキューションに寄せていかざるを得ないのが現状です。
ビジネスモデルも変化してきています。従来の時間給チャージモデルから、実際にカットに成功したコスト削減に連動するモデルや、投資してキャピタルゲインを得るモデル、さらにはコンサルティングで入り込んでITソリューションや広告、デジタルソリューションまで売り込むモデルなど、様々に分化してきています。
伝統的コンサルファームへの批判
伝統的コンサルファームへの批判としては、大企業はガバナンスが強いので、イノベーションを起こしにくいところに、大企業から巨額の報酬を貰っている大手コンサルファームがそのエスタブリッシュメント強化に終始しているという問題意識が強まっています。(つまり、既得権益層を守るための御用聞きコンサルタントに転落してしまうタイプ)
また、そもそもクリエイティブでもなく、アーティスティックでもない保守的なコンサルファームに、非連続イノベーションを望んでも無理、という向きもあります。そんななか、単に生産性だけでなく、”仕事の意味合い”を高められるリーダーが求められているのです。
多様化するコンサルビジネスモデルと、求められる”プロフェッショナル像”の変化
これらの変動に応じ、コンサルのタイプも従来の戦略テーラーメードから、同じソリューションパターンを売るテンプレートタイプ(RPAやERP導入などがこれに当たります)、そして人材派遣・アウトソーシング型など、同じ”コンサル”といっても、極めて多様に分化しています。
テーラーメード型の戦略コンサルであれば、学習意欲と好奇心と課題解決マインドの強いタイプが向いています。
逆にアウトソーシング型であれば、つまらない作業でも迅速に完璧にエクセキューションできるタイプが求められます。
ただ、同じフレームワークで同じソリューションばかり出すタイプのコンサルは、創造性がなくて面白くないモノの、説明だけはできるので、社内と役会の説明には便利、という使われ方もしたりします。(決してこうはなりたくないものですが)
なお今後のコンサル像及びプロフェッショナル像ですが、イノベーションのみならず、”その仕事の意味合いをデザインできる人”が求められています。
つまり、その会社の事業にどんな意味があるのか、というコンセンサスをつくり、社内に浸透させる業務です。
これは、単なる経済的報酬ではない、”価値を実感した働き方”を求めるミレニアル世代に対応した変化とも言えるでしょう。