コンサル業界の激変(環境・労働条件)と、評価方法、そしてコンサル後の政界進出!

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コンサルティングファーム間の違いはどのようなものなのでしょうか?コンサル業界はどう変わっていくのでしょうか?コンサル業界のブラック体質はどう変化しているのでしょうか?コンサルタントはどのようにして評価されるのでしょうか?コンサルティング業界で身につけられる能力とは、どのようなものでしょうか?またポストコンサルキャリアで政治転身の道程はあるのでしょうか?以下に解説致します。

東京工業大学大学院 理工学研究科 STさんより質問

就職活動をしている中でコンサルティングファームごとの明確な違いが見えにくく思われます。

社員の方々のお話、人柄を通じて多少の雰囲気の違いは感じられますが、定量的、具体的な指標でファームごとのコンサルティング業務における実力の違いを説明して頂きたいです。

先日のベインアンドカンパニーの説明会にて、今後コンサルティングファームはコンサルティング業務に止まらず、自身も投資をした上でコンサルティングを行うといったリスクを取る業務をしなければ生き残れないというお話がありました。

一方で、近年日本企業の収益が改善され、事業拡大への投資が増加する中でコンサルティング業務の需要が高まっており先行きは明るいと聞きますが、今後コンサルティング業界の業態、市場がどのように変化していくか聞きたいです。

コンサルティングファームにおいて個人の評価はどういった形で行われて、どのように昇給に結びつき、初任給からどう変化していくのかお聞きしたいです。

いくつかのファームの説明会で近年勤務環境に変化があって、世間で思われているほど激務で無くなった、土日行くことはあまりないような話をよく聞きますが本当でしょうか?
コンサルティングファームを経て政治の世界に進む方はいるのでしょうか?

コンサルティングファームでは、素早く的確な問題把握解決能力に加え、幅 広い企業、業界、社会の成り立ちへの知識、人脈が身に付くと考えており、これらの能力は政治家に必要な素養の一部だと思います。

このため私は仮にコンサル ティングファームに就職することができた場合に、遠い未来に政治の世界も有りうるかと考えているのですが、現実的でしょうか?過去にそのような事例がありましたら教えていただきたいです。

講師からの返答:定量データはあてにならず、レピュテーション、パートナーの個人的資質が重要

各社の特色

沢山のご質問、ありがとうございます。まず端的にお答えしましょう。市場は潤沢な企業キャッシュポジションと、人材不足によるアウトソーシングニーズの拡大により拡大してきました。業態は常駐モデルとIT導入が融合し、戦略ファームやデジタルトランスフォーメーションコンサルなどの垣根が下がっていきます。一昔前の働き方改革で休みは前より多くなり、アクセンチュアやベイカレントといったブラックで有名だったコンサルファームでも、その労働環境が大きく改善されました。昇進は直属上司に押され、反対するパートナーがいないことが大切です。トップティアのコンサルファームほど「人材の質次第」であるため、総じてフェアなパフォーマンスレビューが行われます。

ポストコンサルキャリアは多様で、閣僚を含めマッキンゼー出身者などが活躍していますが、トップコンサルタント上がりで政治的には全く目が出なかった人も少なくありません。以下に各論を述べます。

コンサル各社の違いと特徴

各社の違いに関してですが、MBBや総合系BIG4といった戦略グループの中でいえば、常駐案件の多寡やグローバルカルチャーの強弱、戦略案件の比率など多少違いがあっても、グループ内の比較では類似性が高いです。

よって同じ戦略グループの中での比較であれば、ファーム間の差別化というより、パートナー間の差別化が大きいように思えます。これはコンサルも金融と同じく人を売る商売であり、売り手であるパートナーと顧客企業の個人的な信頼関係からプロジェクトを請け負う形態だからです。

ただコンサルもマッキンゼーやベインといった超大手コンサルトップファームでなければジェネラルコンサルティングファームとしてはやっていけないため、ファームによってフォーカスを打ち出すようになっています。製造業のADL,オペレーション向上のATカーニー、プライベートエクイティのデューディリならベイン、スタートアップのサポートならベンチャーサポートユニットが近年急拡大したトーマツベンチャーサポート、システムやデジタルインプリメンテーションではアクセンチュアといったように、各社で伝統的に強い分野が存在します。

なお価格帯が少し低いところでCDIや三菱総研など日系コンサルティングファームと競争する時もありますし、地方自治体とかのコンサルでしたら、野村総研が企業へのコンサルと同様、大きな存在感を有しています。

またリテール関係の再生に特化したブティックファームが現れたり、元外資コンサルタントが個人で独立して得意分野で営業を始めるなど、ファームレベルのみならず、コンサルタント自身も差別化戦略を進める方向にあります。

ただ結局のところ、”コンサル各社のなかで、このファームと一番フィットが高いからここを志望します”というのは、トップファーム各社からお声がかかるという特殊な状況にならない限り、心配無用な悩みごとかとおもいます。

コンサル各社の詳しい特徴に関しては、以下に詳細を記していますので御参照ください。

コンサルと投資業務の融合

なお、近年の流れではコンサルティングファームと株主の利益相反の観点からか、投資ファンドが社内で自前のコンサルティング部隊を持つことが増えてきています。

アドバンテッジパートナーなどはマッキンゼー、ベイン、ボストンコンサルティング、アーサーディーリトルなどコンサル出身者がその多くを占めますし、KKRなどはキャップストーンという社内コンサルティングユニットを保有しています。

ドリームインキュベーターが当初コンサルティングフィーだけではなくコンサルティング先のストックを貰うことで利益のアラインメントを企図したのもその流れといえますし、ベインがベインキャピタルを運用するようになったのも、保有者と経営者、コンサルタントの利益をアラインメントさせる流れの一環だと言えるでしょう。

ヨーロッパのマッキンゼーなどでも、クライアント企業のターンアラウンド案件で改善した利益に連動した報酬体系のプロジェクトもなされるようになりました。
なお投資ファンド出身者が、投資ファンド向けのコンサルファームをつくり、デューディリジェンスプロジェクトで稼ぎ、たまったお金で自己投資も行うブティックファームも増えてきています。

なお近年では、国内ベンチャーキャピタル大手のグロービスキャピタルが、投資先の成長を加速させるバリューアップチームを強化しています。

コンサル業界の変化

コンサル業界の今後は上記で述べたアラインメントの強化に加え、各顧客企業が社内に元コンサルタントを多く有するようになったことからくる「コンサルタントの使い方をよくわきまえた顧客」との折衝がより増えてきています。またプレゼンだけで終わった時代は去り、常駐型プロジェクトが増えています。

リーマンショック後、2020年初頭まで続いた超長期景気拡大期に、案件がどのファームも多く、大半のファームでこの10年間、コンサル数は各段に増えました。最低倍増し、急拡大したところは4倍くらいに増えています。

仕事は一昔前にくらべて、有力スタートアップやファンドへの流出で優秀な人材確保が難しくなったからか、ワークライフバランスは改善しています。それでも7時、8時には帰るヨーロッパオフィスに比べ、若手コンサルタントは24時まで働くことも多いです。

通信インフラ発達のおかげでリモートワークが広く認められているファームも出てきています。シンガポールなど海外オフィスだと在宅ワークが進展していたのですが、日本でもコロナショック時の在宅勤務を契機に、在宅勤務を広く認めるコンサルファームが増えてきています。

コンサル業界での給料・昇進

コンサルタントの勤務実態・休暇の程度に関しては既に他の質問で回答しましたのでそれを参照して頂ければ幸いです。

昇給は基本的に毎年5%~15%程度アップし、2-3年(早い人で1.5年)ごとに次のランクに昇進することで、20%~40%の昇給が望めます。初任給500-600万、マッキンゼーでは次のランクに上がれば1300万、MBA後のトップファーム入社で、国によって違いますが一番くれるスイスなどではMBA卒のプログラムで約2000万スタートの国もあります。パートナーになれば売上、利益に連動するので、スターパートナーだと2億、3億稼ぐ人もいます。(ごくまれなケースですが)

ここで朗報は、MBBなどグローバルトップファームでは、人事評価に対する納得度が極めて高いということです。

これは、社内政治がはびこり、年功序列か上司からの覚えめでたさ一発で決まることの多い、不透明・不公平・悪平等感が強い日本の大企業で耐え忍ぶ優秀な若手にとって、非常に大きなポイントだといえるでしょう。

コンサル出身の政治キャリア:コンサル出身だからと言って大して活躍できないことも多い

なお政治に関するキャリアに関しましては、実際に存在しますし、企業経営をトップマネジメントの視点で幅広いセクター・経営機能を経験することは、市場やビジネスの実態を理解するうえで、政治キャリアのための良いトレーニング機会を提供することでしょう。

ただし、意外なことに(安倍内閣末期のマッキンゼー出身某閣僚を除いて)たいして活躍しているひとがいないのです。

これはコンサルや市場の”あるべき論””効率的にはこう”という論理ではなく、様々な既得権益者との関係やそれこそ何世代も遡る地元の選挙組織の有無、後援者の有無、ネットワークの有無など、能力とは関係ない要素が重要だからでしょう。

某投資銀行の東京支店長をつとめた優秀なバンカーなども、結局一兵卒に成り下がってまったく活躍せずに次の選挙で消えた人の例などからもわかるよう、ビジネスの経験は実務的にはプラスになっても、政治の世界での出世の魔法の杖にならないのは確かです。

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