
理系学生さんの、マッキンゼー志望事例と講評を解説します。どこまで具体的に話してようやく相手に伝わるのか、この実例を交えて共に考えましょう。
なぜこの会社を志望していますか?
候補者回答
私は理系なので、今までは研究者になるつもりでした。しかし、研究というのは目に見える成果が出るのがとても遅いし、世界が狭いことに気付きました。
人と接する事が好きな事もあり、人と接する仕事で自分の成果が目に見えるような業種に就きたいと思い、経営者の悩みを解決するコンサルティング業界に興味を持ちました。
御社はコンサルティング業界で、顧客の満足度一位の会社であり、また様々なバックグラウンドを持った人達が集まっているので、そのような環境で仕事がしたいと思い、また自分の成長にもつながると思ったので、御社を志望しました。
その会社に活かせる、あなたの強みは何ですか?具体的にお答え下さい
候補者回答
私は大学4年間バドミントン部に所属していました。
そのおかげで、辛い練習も耐えてきた根性と強い精神力があります。コンサルティングはとても忙しい仕事ですが、私は最後までやり遂げることが出来る強さを持っています。
また、一つの目標に向かってチームをまとめ、一丸となって結果を出してきたので、仕事でもチームをまとめ、最良の結果を出すことが出来ます。
解説: 中身の説明がなく、イメージがわかない残念回答例
平凡な事例で、短絡的で安直な印象を受けてしまう。
「辛い練習に耐えた根性と精神力」や「最良の結果」とか、原体験に紐づく具体例の説明がないので、一般論の上滑り感がある。
本人は「バトミントン部での辛さ」と聞いて諸々イメージが湧くのだろうが、体験していない人にとっては普通の浅い平凡なイメージしかわかず、ピンとこない回答になってしまっている。
このような癖がある人は、他の質問への回答でも同様のミスを犯しがちである。
実際に”一丸となって結果を出してきた”など、中身不明の回答を連発してしまっている。
あなたの弱みは何ですか?
候補者回答
好奇心旺盛で一度にいろいろな事に手を出してしまうところだと思います。
学部時代には研究の他に部活でバドミントン、サークルでアカペラサークル、アルバイトで塾講師と予備校講師と家庭教師、語学勉強で英語と中国語など様々な事にチャレンジして、実りのある生活をしていました。
とても忙しく家にいることがほとんどありませんでした。
解説:いろいろ手を出して、何も実現しない人だと思われるリスク
好奇心旺盛アピールは非常に多いが、そのダウンサイドは”何も実現できず、つまみ食いを重ねただけで終わる”と思われがちな点だ。
その点彼は、まさに全て中途半端に終わってしまいそうな書き方をしてしまっている。
仕事を尋ねて、「たくさんいろいろやっている」という人に限って、まともにやっているのは一つもないことが多いのと、同様の状況と思われるか、誤解を受けかねない回答内容である。
いままでの人生で、最も大きな達成事項は何ですか?
候補者回答
バドミントン部に所属し、関東学生リーグで5部から4部に昇格したことです。
1年生からレギュラーでしたが、1年生の時に私が負けてしまったせいで、5部から4部に上がることが出来なかった事がありました。とても悔しく、それから毎日のように練習をしてきました。
しかし、団体戦で優勝することはとても難しく、まずはチームが一丸となることだと気付きました。
目標を設定し、同じ目標に向かうことで皆の意識も変わり始め、4年生の時に優勝し4部に上がることが出来ました。4年間の想いが叶ったとき、とても達成感がありました。
解説: ここまで具体的に説明して、ようやく他のところで何を言っているのか伝わるケース
これを先に言え、といいたくなるくらいだが、そのようなパターンは多い。
バドミントンに打ち込んだのも、達成感があったのも、全て”自分のせいで皆が上に上がれなかった”という原体験を説明してこそ、伝わるストーリーである。
これが伝わったうえで、チーム一丸にするために何をしたらいいのか、同じ目標に向かうにはどうしたらいいのか、皆の意識を変えるにはどうしたらいいのかといった、コンサル的な志望動機に繋がってくるのである。
いままでの人生で、最も難しかった決断は何ですか?
候補者回答
母の病気についてです。今年始めに母が病気になりました。
しかし、母は手術することを拒みました。私は母に手術を勧めましたが、母は手術してもしなくても、生存率にあまり変わりはないことを理由に拒み続けました。
お母さんっ子の私としては、少しでも長く生きてほしいので手術を希望していましたが、母とじっくりと話し合ううちに、母の考え方に従うことにしました。
なぜなら、母には母の人生があり、考え方があるからです。
とても辛く悲しかったですが、母の意志に従うことにした時、大きな決断をしたと思いました。
解説:母の死ほど大きな困難はない~皆親孝行に励んでください
大変な経験であり、お悔やみ申し上げたい。是非立派に生きて、天国のお母様にその雄姿をお見せしてほしい。
こういう実の親の死レベルの困難なパーソナルストーリーを出されると、それが面接対策になっているかどうかといったセコイ話はしてはいけない。
これは余談だが、就職活動や職場での出世争いなんかより、日々の親(毒親で、お世話してくれたのが他の人の場合はその人へ)への感謝を抱きながら生きることの方が、よっぽど大切だとここで強調させていただきたい。
10年後は何をしていますか?
候補者回答
10年後は、コンサルタントとして様々な経験を活かして、プロジェクトをまとめられるようになっていたいです。
また、現在中国語を勉強しているので、英語だけではなく中国語を話せるグローバルな人間になっていたいと思っています。
常に自分の成長を考え、自分の設定した目標を達成する人間になりたいです。
解説:「どのような人を目指しているのか」もコンセプトレベルで説明できるように
志望されているマッキンゼーが最も重視する価値観の一つが成長志向であり、それを自身のビジョンとして打ち出しているのは志望先と整合性が高い。
かつ彼の場合はそれを口で言っているだけでなく、実際に何を実行しているかを行動で語れるので、強い。
他にどのような会社/業界を志望していますか?
候補者回答
グローバルな仕事が出来る外資系の金融会社や、商社などに興味はありますが、現在はコンサルティング業界に入って、仕事をしたいと思っています。
コンサルの会社もたくさんありますが、やはり業界トップの御社に入りたいと思っています。
解説:他の志望業界を聞かれても、一応答えつつ第一志望はコンサルトップのマッキンゼーだと強調
他の志望業界は面接でよく聞かれるが、それへの回答はハンコを押したように、同じようなことを言う人が多い。
やれコンサル、やれ金融、やれ商社、やれスタートアップ、、、重要なのは、自分が志望する業界、企業をどのような軸で選んでいるのか、そしてその軸は、これまで自分の判断で実際に重視してきた軸なのかを自問する必要がある。
あなたを弊社が、雇わなければならない理由は何ですか?
候補者回答
私には、部活で鍛えた精神力や根性があり、チームワークの大切さを知っています。
また面倒見の良い先輩として後輩から慕われています。
御社に入れば、人一倍働き成果をあげることが出来ると思いますし、グループでも良いチームワークを作り出す事が出来ると思います。
そして、部下が入ってきた時には、良き上司となれると思います。
解説:人から好かれる性格と、チームワーカーであることをアピール
彼はマッキンゼーが社内で重視する価値観を、きちんと事前に把握し、それに対応する自己PRを巧みにしている。
仮に対策せずにこう答えているのであれば、彼はナチュラルにマッキンゼーにフィットがあるということになる。
ともあれ、マッキンゼーに限らずコンサル各社は特にチームワークが重視されるので、< strong>賢いけど攻撃的で人とうまくやれないタイプではなく、EQやソフトスキルも高いことを自然に伝えると、面接官を安心させる効果に繋がる。
最後に何か、質問はありますか?(会社にどのような質問をしていますか?)
候補者回答
・中国が発展してきて、これからますます中国がアジアでの主要国になると思われますが、現在御社では、中国に関係するコンサルティングはしていますか?
・(ケースの後にコンサルタントに)もし、このケースを解くのであれば、どのように解きますか?
解説:ケース面接への回答フレームワークを聴くのはリスクが高い
彼はこの「質問をする」という自分でテーマを設定できる分野で、主導的に自分の賢さ、適性をアピールする機会を無駄にしてしまった。
最後の質問タイムとは本来、自分の問題意識の高さ、思考の深さ、重要な情報を収集する姿勢、どさくさにまぎれて自分の力をアピールする絶好の機会なのである。
さて、まずケース面接に関して、回答アプローチをコンサルの面接官に聞いてみたくなるのはわかる。
ただ相手も実はわからず、困らせる可能性があるので、あくまで「相手が気持よく話せそうか」空気を読めとしか言えない。
かつ自分が出したケース面接への回答を自分で考えるのは、知的に楽しいことでもなく、面接の時間を最大限有効活用しているとも思えないので、基本的には避けたい質問である(何事も空気次第ではあるのだが)。
ちなみに実際のプロジェクトで本当に困ってる分野から聞いてきているか、今まで繰り返しお題にしたケースを聞いてきてるかの場合、面接官のコンサルは賢げなことをすらすら言えるだろうが、即興でつくったケースだと面接官が困ってメンツがつぶれる恐れがあることに留意しよう。
あと、中国関係のプロジェクトを聞くのは、他の環境系のプロジェクトや政府系のプロジェクトを必死に聞いて「、、、実はそんなケース、あまりないので、彼がやりたいことは的外れか?」と思われるリスクに似たものがある。
海外案件が多いベインでもない限り、ほとんどは基本的にドメスティックなプロジェクトだと思っておこう。
(たまたま中国支社に常駐するケースとか、クライアントの中国進出ケースとかシニアがとってきてたら別だが、恒常的にあるものではないだろう。)
「自分の長所・短所(400文字)
投資銀行/戦略コンサルに提出しているエントリーシートに提出した書類から、一つエッセイを選び添付してください。
私の長所は誰とでも仲良くなれることだと思います。OBとして高校の部活の指導に行くと、年の差が8つ以上あるのに、お互いに冗談が言える程に仲が良いです。
後輩からは「話しやすい先輩」と良く言われます。大学生になってからアルバイトで塾の講師をして、たくさん人と接してきました。
アルバイトをしていく中で、その人の目線にたって話を聞いてあげたり、話をしたりすることが重要だと知りました。
友達に「同じ目線で話をしてくれるから嬉しい」と言われて、とても嬉しかったです。会社に入ってもこれらの経験を活かして、クライアントとの関係をより一層良いものにしていきたいです。
私の短所は、一度にいろいろな事に手を出してしまうことです。学部の時も、研究、知的財産法の勉強、バドミントン、アカペラ、英会話、中国語会話、塾講師、家庭教師などをしていました。
すべてを両立することがとても大変でしたが、とても充実した日々を送れました。
解説:相手の目線に合わせる、親しみやすい人物像アピールで無難なしめくくり
誰とでも親しく友人のように打ち解けられる性格を具体的に伝えられている。
それが「相手の目線にたって話を聴き、話をするのが重要だ」と学んだからであり、それを仕事にも生かすと自然につなげることができている。かつこの教訓はコンサルをするうえで本質的に重要なポイントであり、効果的な自己PRになっている。