
プライベートエクイティファームに転職すると、確かに投資銀行や戦略コンサル出身者が多数いるのですが、他にも官僚・メーカー・弁護士出身と、多彩な人材が働いています。そんな彼らが他のエリート候補者との選考競争を制してめでたくPE業界に転職できたのは、その背景に共通の資質が見て取れます。以下ではコンサル・投資銀行以外の経歴でもプライベートエクイティ業界転職に成功する為の、普遍的な教訓を解説致します。
未経験PE転職~未経験からプライベートエクイティ転職を果たした3大教訓!
「いろんな会社を経験できるプライベートエクイティに転職したいけど、自分はどうせマッキンゼーやゴールドマン出身ではないので無理だ。」などと、最初からあきらめモードになってはいないだろうか。
転職は恋愛と同じく、ある意味「交通事故みたいな出会い」がきっかけとなって起こる場合もあり、その時にお互いの準備ができていれば、やや異色のカラーであっても結ばれる。
事実、プライベートエクイティファームにはいると、投資銀行やコンサル出身が多数いるにはいるのだが、他にも官僚・メーカー・弁護士出身と多彩な人材に出くわす。本コラムでは、1つの実例を検証することで、コンサル・投資銀行以外の経歴でもプライベートエクイティ転職に成功する普遍的教訓につき述べる。
文系の道を歩んだ私の知人
筆者の知人には、大学からアメリカ留学して国際政治学を専攻した人物がいる。卒業後彼は外資系証券会社に就職するが、部門は投資銀行ではなく株式売買をするマーケット部門だった。なので、プライベートエクイティ実務に関連する、M&A経験は身につかない。財務モデルも、構築どころか読み方さえ大半を分かっていない。
外交官を目指していたこの知人は、数年トレーダーを経験したあと再度渡米し、MBAではなくロースクールにいってしまう。そして現地で弁護士資格をとり、5年ほど大手法律事務所で勤務するが、午前10時から午前6時まで仕事させられるウォール街大手事務所のアソシエイト生活に嫌気がさし、日本に舞い戻ってきて転職活動を始めたのだった。
背水の陣で強引に語った「転職ストーリー」
彼はプライベートエクイティ転職を希望するが、話てみるとその動機は極めて浅はかだった。「もう弁護士の生活は耐えられない。そもそも自分より優秀な弁護士はごまんといるし、5年間奴隷みたいに小難しい書類をつくってよくやった。自分は大家族の末っ子で育ったので、人に懐いて好かれる技を体得している。これは、人間力が重要とされるプライベートエクイティ業界でも役立つはずだ」というのだ。
もちろん、こんな話をプライベートエクイティ面接ですると、速やかに出口のエレベーターまで案内されていただろう。しかしこの彼は、このストーリーを「自分なりの新しいチャレンジ」と評し、見事に大手プライベートエクイティファンドの投資チームに入社を果たしてしまった。
彼の経歴なら、普通でいけばせいぜいコンプライアンス部門だっただろう。ではなぜ投資チームにはいれたのか。このケースでは3つの要素があった。
第三言語
まず一つ目に、彼は日本語・英語以外に第三か国語に堪能で、このプライベートエクイティが偶然、その言語地域に新規ファンド起ち上げの準備をしていた。新規ファンドを立ち上げる以上、ファンド組成から資金調達交渉、そして日本本社のLP投資家によるデューデリジェンスのアレンジやローカル案件開拓が必要になり、信頼できる内部アソシエイトのトリリンガル力は頼りになる。
プライベートエクイティ創業パートナーでも、英語では本当に言いたい事の7割しかコミュニケーションできない人は多い。本社が日本のファンドなら、現地との日本語による橋渡しがとても役立つのだ。
ファンドレイズ時期に重宝された国際法務実務家の素養
2つ目に、このファームがグローバルで資金調達準備をしていたことも手伝った。アングロサクソン圏で資金調達する場合は大抵が英米法(ケイマン含む)準拠の複雑で膨大な契約書類が伴う。
米国大手ローファームを経験し、語学にも堪能な彼の経験が、ファンドレイズチームの一員としてもファームのニーズを満たし得たのだ。
エリート候補者を制した人懐っこさ
3つ目に、彼の言う「末っ子ならではのチャーミングさ」も役立った。実際彼の場合、同じく面接選考をうけていたもう一人の候補者は、名門大卒で投資銀行出身、バリュエーション・モデルも得意で非常に聡明な候補者だったそうだ。
がしかし、「あのエリートをとるくらいなら、何ができるかわからんが何かやりそうなあいつ(著者の知人)を採ろう」という創業パートナーの一言で採用が決まったという。そして、彼はチーム全員に愛されながらプライベートエクイティ投資家として貢献していく。
スペックも大事だが、それは履歴書に目を通せばわかる。面接でよりはるかに重要なのは相手に「この候補者と一緒に働いてみたい」と思わせることなのだ。
自分のハンデを「差別化ポイント」に変えよ
このエピソードは、異例ながら実話である。そして読者全員に適用できる教訓もある。プライベートエクイティ転職を考える誰しもが、(1)常にグローバル志向で語学力と文化的感性を磨き、(2)エリート生活に安住することなく、信じる道を切り開いて常に自分ならではのスキルセットを磨きつづけ、(3)相手が誰であろうと、損得勘定ではなく、その人と敬意と親しみをもって接するべきなのである。
その結果、投資銀行やコンサル出身でないあなたにも、狭きプライベートエクイティ転職への道はいずれ開かれる。