
PEファームからスタートアップへの転身者が続出
先日日経新聞で、カーライル人脈やユニゾン人脈、アドバンテッジパートナーズ人脈など、主要PE各社の出身者がスタートアップで活躍しているという記事がありました。そこで紹介されていた人々は、私の知っている人が大半でフェースブックにもほとんどつながりがある方々です。
中には全く活躍していない人も紹介されてしまっていましたが、それでもスタートアップにPE出身者が大挙押し寄せているのは、その通りです。
最近も某ダブルユニコーン企業(1000億ではなく、2000億水準にまでバリュエーションが上がった企業)のCFOとして300億近くのファンドレイズに成功した時の担当者が某PEファーム出身であることは、周知の事実です。
他にもビザスクなども古巣から同僚(正確には元上司)を雇い、チームを拡大していきました。スタートアップにプライベートエクイティ業界から投身するにあたって、以下では、プライベートエクイティ業界から幸せなスタートアップCFO転職を遂げるための教訓を書かせて頂きます。
プライベートエクイティプロフェッショナルへのインプリケーション①:PEファンド在職中に、ファンドレイズを経験しておく
CFOというと、なんだかすごい印象を受けますが、最も大切な役割は資金調達です。そんな中、PEファンド時代のファンドレイズ側の仕事は、将来のCFOとしての転職に大いに役立ちます。
これは多様な投資家と折衝し、どのようなレベルの議論を(意外と大まかで、信頼される投資家が入っていたら、その名前を見て入ってくるところも多いのですが)、どのくらいすればいいのかが分かるからです。私が知るPEファーム→スタートアップのCFOは、ほぼ例外なくファンドレイズの経験が活かせたと口を揃えます。
そもそも、まだ投資先もなく、「このような戦略で投資します」とファジーな説明しながら、過去のファンドのトラックレコードを持って資金調達するファンドレイズより、既に売り上げも利益も一流VCのバックアップもあるレイトステージのファンドレイズは、PEファンド時代のファンドレイズよりよっぽど楽なのです。
プライベートエクイティプロフェッショナルへのインプリケーション②:社内では極力、誰とでも仲良くしておく
PEファンドから有力スタートアップを立ち上げた人は、古巣のPEファンドから優秀な人材を引き抜いていきます。
言い換えれば、PEファーム在職中は、極力社内の人々と仲良くしておくことが重要です。
振り返ってみれば、PEファームの中では必ずしもトップパフォーマーでなかった人の独立→大成功が目に付くようです。
これは、PEファームの中で高く評価されていれば、居心地が良くてそのまま居座る蓋然性が高いのに対し、順調に昇進できなかった場合は見切りをつけて、他業界に転出する蓋然性も高くなるからです。
よって、社内で多少パフォーマンスが低いからと言ってバカにせず、「こういう人に限って、外に出て大化けするかも」と、全方位善隣外交に努めましょう。
プライベートエクイティプロフェッショナルへのインプリケーション③:古巣とは仲良くしておく(たとえ、多少気まずくても)
PEファームからの幸せな転職をするうえで忘れてはならないのが、古巣との良好な関係です。
これは独立時の資金を提供してくれることもあれば、独立後に様々なネットワークを使いビジネスを助けてくれることもあれば、独立した立場で古巣のファンドと共に協業する人もいればと、何かとコラボレーションの余地が大きいからです。
PEファンドは退職した人を集めて年に一回などアルムナイパーティ(最近はオンラインに移行してきましたが)が行われますが、退職後もアルムナイパーティなどで古巣との関係維持に熱心な人は、何かと他方面での人脈マネジメントが上手いものなのです。
実はこのようなアルムナイ繋がりで、紹介してもらったスタートアップのCFOになり、そこが順調にユニコーンとなり、30代前半でストックオプションで一丁上がりというケースも実在します。
PE業界に入ったのち、キャリアの現在価値最大化の方法は必ずしもPEファーム内での出世ではないと重々心得たうえで、御自身にあった次の一手を考えるようにしておきましょう。