
まじめな技術者の技術力で、自由闊達で愉快な理想工場をつくる―聞いているだけでワクワクするソニー創業者のビジョンですが、90年代の総花経営から黒字回復したとはいえ、横行するリストラや賃下げ、事業売却で一時の輝きを失っているとの批判もチラホラ。優秀な若手に様々なチャンスを与える半面、出世が遅くマネジメントに入れるのは40代下手したら後半で、野心的な若手の流出が続く事態に繋がっています。そんなソニーでのキャリアが向いている人、いない人のポイントを以下に論じます。
愉快な理想工場ソニーの不愉快な現実~優秀な若手ほど、コンサルなどにスグ転職!?
1.若手満足度の高い優良企業~優秀な若手に機会が与えられる
ソニーは総じて優秀な新卒を大量に採用することで知られており、日本の大企業にしては珍しく上下関係・ヒエラルキーも厳しくありません。
高い役職の人にも「~さん」付けで呼ぶことが決められており、年齢によらず若手にも幅広い主体性発揮の機会が与えられています。
働き方改革も比較的進んでおり、フレックス制度も浸透。
ワークライフバランスも改善しており、総じて20代の若手には働きやすい優良企業として定評があります。
2.日本企業にしては珍しく、部門移動に関して希望が通る
部門配属リスクは日本の大企業特有の心配事ですが、ソニーは(配属された部門に2年はいなければならないという縛りはあるものの)異動希望先の部門長との面接で認められれば、多様な部門移動も比較的容易にできる会社です。
主体的に社内キャリアを切り開いていきたい人には、望みが比較的聞き入れられやすいコーポレートカルチャーです。
3.20代、30代前半までに希望者はほぼ、海外勤務可能
グローバルブランドで世界市場で高く認知されているソニーは、希望者はほぼ全員、海外オフィスで勤務する機会を得ることができます。
これは、外資系戦略コンサルや外資金融の日本オフィスが総じて東京オフィス勤務で、海外は1年のセコンディーや出張ベースが大半なのに比べ、実は海外経験の機会が大きいことを意味します。
4.同業他社最高水準の報酬と、人を育てる姿勢と豊富な研修
メーカーなのでもちろん、投資銀行やコンサルのような給料にはなりません。しかしそれでも、30で800、30中盤で1000、順調に昇進すれば40で1400前後という給与体系は、日系メーカーの中では最高水準の給与となります。
また「年寄」には厳しいものの、若手向けの人材育成には熱心。多様な研修制度が用意されており、中には海外留学支援プログラムも存在します。
5.利益回復の源泉は、ほぼリストラ~長期安定キャリア志向にはリスクあり
90年代の総花経営がたたって赤字転落で世界市場シェアを一気に失ったソニーですが、近年は利益もV字回復し、再びブラビアなどでも世界市場で存在感を見せるようになってきました。
しかしV字回復は新たな成長エンジンの賜物ではなく、総じて解雇・減給・早期退職制度・事業売却といった、リストラの成果が大きいです。
日系企業にしては珍しく(取締役に外国人が多いからか)、40を超えた後のリストラリスクと隣り合わせの緊張感がある会社と言えるでしょう。
6.競争と変動の激しい業界~エレクトロニクス・ハードウェアは将来、市場シェアを失う一方?
日本のエレクトロニクス産業全体がアジア各国のライバル企業に押しやられる中、中長期的な一段のマーケットシェア低下は避けられない趨勢です。
市場パイやポストの減少と詰まり気味の上司たちを鑑みて、「どうせベテランに薄情な会社だから」と、ソニーから他社に転職する人が数多くいます。
7.日本の巨大企業特有の、上司による内申評価と意思決定の遅さ
優秀な若手ほど、評価に公平感や納得性がなければ、転職を考えてしまうもの。
ソニーは実力主義をうたうものの、上司による「内申点」に大きな裁量の余地があります。
そして結局は有力者にかわいがられている人が、仕事もしていないのに出世するという、どこの大企業でもよく見られる光景が問題視されています。
またこれも日本の大企業特有の問題点ですが、社員が大きく上が詰まり気味で、調整時間とコストがかかり、スピーディーな意思決定が阻害されていることに失望して、ソニーからの転職を考える若手社員が数多く存在します。
ソニーからコンサル転職を目指す人の特徴とは?
以上の論点を鑑み、ソニーから戦略コンサル転職を志す人の特徴は、
①ソニー新卒特有の高学歴若手社員で
②20代、30前半でマネジメントを経験したいのにソニー内部では40代まで待たざるを得ないことに問題意識を抱き、
③自由闊達で愉快な理想工場という理念を離れ、利益志向・株主志向が強まったことに疑問を抱き、
④ソニーの市場シェアがアジアのライバルに蚕食されていくので御先は暗いと思っており、
⑤どうせ40以降はリストラと隣り合わせなのであれば、若いうちに社外でも通用するプロフェッショナルスキルを磨きたい
と思って転職を志望する人が、少なからずいらっしゃいます。
以上、ソニーでのキャリアや、ソニーからの転職を考えられる際に、ご参考いただければ幸いです。