
外資系金融機関として、三菱との提携後、投資銀行部のポジショニングが大いに上がったモルガンスタンレー。ゴールドマンサックスやメリルリンチと比べたときの数点の特徴を論じます。
モルガンスタンレーの5大特徴
モルガンスタンレーは伝統的に外資系証券のBIG3の一角として認知されてきました。外資系証券会社を志望する方はまずゴールドマンサックス、モルガンスタンレー(三菱東京UFGモルガンスタンレーですが、便宜上以下モルガンスタンレーと表記)、メリルリンチ(バンクオブアメリカメリルリンチですが、便宜上以下メリルと表記)の面接を受けることが多いでしょう。
ではモルガンスタンレーを他社と比べたときの特徴はどこにあるのでしょうか?以下に解説いたします。
1.三菱との資本提携が功を奏し、日本市場で好調
モルガンスタンレーは投資銀行部門など伝統的に外資系トップ3でしたが、ゴールドマンサックスの後塵を拝してきました。
しかし金融危機以降の三菱との提携が功を奏し、三菱グループを通じたディール流入で、M&Aの案件数・取り扱い金額数共にトップクラスに躍り出ました。
これはバンカメに買われてブランドがどちらかといえば低下し、社内政治の激しさで勢いが削がれがちなメリルリンチに、”買われ先”で差がつく結果となりました。
2.強いグローバルブランド~ゴールドマンサックスに次いでナンバー2
グローバルでモルガンスタンレーのブランドは強く、IBD,株式部門などフロント業務は総じて、投資銀行業界でトップティアのタレントを引き付けることができます。
これら部門で働く際は、優秀な同僚、上司、部下に恵まれることでしょう。クライアント企業からも、トップティアのカウンターパートとして認識されています(たまに傲慢なMDもいますが、偉そうで有名だった債券部のAさんもついに去りました)。
あと会社のブランドが強いため、あまり活躍できずにすぐに放出されることになった人でも、「元・モルガンスタンレー」と堂々と称して、実際はブティックファームなど経営していないのにしていることにして、メディア業界で生きている人もいます。
会社のブランドが強いので、一度はいればそれを印籠に、ハッタリが効くメディア業界などでたくましく食べていく人も結構いるのです。
3.順法意識が強く、コンプライアンスに厳しい
たまに従業員がインサイダー取引で捕まり紙面をにぎわすゴールドマンと異なり、メディアで不正・不祥事でモルガンスタンレーが取り上げられることはあまりありません。
以前よりコンプライアンスが厳しい、順法意識の強い会社として知られており、こういう「守りの強み」に、モルガン家の「ファーストクラスの仕事を、ファーストクラスのやりかたで行うのだ」という、有名な格言が思い起こされます。(2019年末に、トレーダーが100億円以上の損失を隠蔽したニュースが出ましたが、これも別に規制当局から指摘された話ではありません)
4.日本市場での長期的コミットメント
投資銀行業務、株式、債券、資産運用など40年にわたって日本で業務を展開し、外資系金融機関の中で最大級の規模を擁しています。
また伝統的に株式調査部や株式営業部、不動産投資やプライベートエクイティ投資チームも、高いパフォーマンスを上げてきました。
5.(他社と共通)アジアで東京オフィスのプレゼンスは低下中
これは日本の金融市場の相対的縮小と経済成長率の低さ、およびグレーターチャイナ圏の巨大化と高成長により仕方がないのですが、他社同様、ニューヨークのみならず香港・シンガポールオフィスの位置づけの方が、東京オフィスより重要になり、機能や部門別に香港などに移管されています。
以上を鑑みたとき、モルガンスタンレーを目指す人はどのような人が向いているでしょうか?
第一に、会社のブランドや、優秀な人と働き、自分もその一員とみなされることが重要な人は、「激務でもこの会社の一員でいたい」と思って頑張る動機になります。
第二に、グローバルな環境で働きたい方は、外国人機関投資家相手に働けるマーケット部門を選び、ドメスティックな債券営業などは再考しましょう。ないし英語に自信があれば、業務拡大中のシンガポールや、最近は少し不安定化していますが、香港オフィスなどで勤務しましょう。(パフォーマンスが良ければロンドン、ニューヨークを含め、海外武者修行もさせてもらえます。)
第三に、三菱との連携がうまくいっていて仕事も多く、また日経カルチャーも融合しているのか他社に比べ解雇も少ないです(実際私の友人も多くが、他社を数社経験したのち、モルガンスタンレーで長年働いています)。
総じてセルサイド金融業務を志望されるならば、上記特徴へのフィットがあれば、満足度の高いキャリアを歩めるでしょう。