
外資金融は好況時も不況時も、常に解雇とは隣り合わせの特殊な職場です。特に2020年のように”実体経済の景気後退局面での株高”が続き方向感が見えない環境ですと、年末のボーナスシーズン前に大ナタを振るう投資銀行が続出するもの。特に米大統領選が終われば相場が一服するため、これまで無理矢理中央銀行がお金を擦って資産を買い上げるという不健全な相場は、早晩終わることでしょう。そしてある日突然、上司に日頃使わないフロアでのミーティングを入れられたが最後、いよいよ年貢の納め時です。さぁ貴方は、どう振舞いますか?
外資系投資銀行で解雇される人の3パターンと、解雇後の対応3パターンとは?
2020年初頭に、クレディスイス証券の営業の方が解雇された法廷闘争に関し、なんと不当解雇判定が下り、これまでの給料と解雇無効が命じられました。
これは、「外資金融で解雇されても泣き寝入りが当たり前だった業界慣行」を打ち破る、画期的な展開です。
このように外資金融といえば激務と高給と解雇で知られていますが、そんな外資金融で解雇されるときのパターンと、その対応パターンはどのようなものがあるのでしょうか?
解雇される人3パターンとは?
まず第一に首になるのは、パフォーマンスが低い人です。どうみても基本的知識がなかったり、書類がミスだらけだったり、遅刻しまくっていたり、まじめに働いている雰囲気が無かったりと、仕事のフィットがない場合は、周囲からもあまり同情されない「順当解雇」にあたります。
第二に解雇されるのが、政治闘争で敗れた人および、敗れたボスについていた哀れな部下たちです。
外資金融ほど社内政治がはびこる業種もありません。特に合併が繰り返されて海外から進駐軍が入ってくると、どの上司につくかで命運が分かれるので、熾烈な社内闘争が始まります。
こんなとき、仮に仕事が優秀でも、より力のある上司に気に入られていなかったり、自分の潜在ライバルになるとみなされると、なんだかんだパフォーマンスが悪いといちゃもんをつけられ、やがて解雇されることになります。
第三に解雇されるのが、チームごと吹き飛ぶケースです。金融は景気に敏感に反応する業態なので、市場が下降局面になると、部門を閉鎖したりチーム丸ごと解雇したり、酷いときは日本支社全体をクローズしたりします。
最近は投資銀行業界のニュースといえば、やれバークレイズが20%人員削減した、やれドイチェがボーナス大幅削減を発表した、といった、「好況期であるにも関わらず、悲壮感溢れるニュース」ばかりです。
まだブルマーケットが続いているのにこのありさまですから、いざオリンピックと米大統領選挙後に不況が始まったら、どのような凄惨な首切りが待っているか、恐ろしい限りです。おそらくチームごと解雇、支店ごと撤退といった首切りニュースが飛び交うことになるでしょう。
解雇後の対応、3パターンとは?
さて、解雇後の対応策ですが、最も多いのは従順に振る舞い、次の転職先へのレファレンスだけはよろしくお願い、と現実的にふるまうパターンです。
怒りを晴らしたり「社会正義」を貫くことに優先順位を置くのならばまだしも、再就職を優先される際は、ここは現実的な対応を冷静に行う必要があります。
第二に多いのが、訴訟をちらつかせて戦闘モードにはいり、しかし会社側もそれはブラフ(はったり)だとわかっているので脅しあいの神経戦を繰り広げ、バトルの結果さらに後味の悪い退社になってしまうケースです。
会社もこれまで長年にわたって様々な「解雇通告を受けた社員の典型的反応」を熟知しているため、下手なブラフは相手を硬化させるだけなので、気を付けたほうがいいでしょう。(退職パッケージを数か月上乗せする程度で争うなら、ここは人間関係を重視して数百万くらい目をつむる、というのも、場合によっては大人の判断です。)
第三の「最近増えている解雇対応」が、復讐の鬼、資本市場の巌窟王と化して、徹底抗戦を貫くパターンです。
最近では冒頭のクレディスイスの株式営業の方や、同じく三菱モルガンスタンレーで解雇された株式営業の方が「パタハラ」という文脈に繋げて会社と長期闘争に入っておられます。
退職コミニュケーションで会社側が不当な脅しをいうのを虎視眈々と待ち、それをレコードに録音して法廷闘争を有利にすすめたり、メディアでぶちまけて記者会見までしてしまった人もいます。
解雇されるときは、「解雇されるマナー」を守ろう
人生それぞれ、解雇されたときの対応方法もそれぞれですが、一般的には同じ業界に残るつもりなら、不正義でも目をつぶって現実的に次の転職先探しに全力を傾けることが多いです。
どのようなオプションをとられるにしても、くれぐれも転職後もその会社でお世話になった人たちとは良好な関係を保てるように、戦う相手を限定し、戦線を拡大しないように気を付けましょう。
間違っても機密ファイルを持ち出そうとしたり、データを持ち出そうとしてその痕跡がすべてITチームに突き止められて、社内規定違反で懲戒解雇に持ち込まれるような事態だけは避けなければなりません。
解雇されるときにも、「解雇される大人のマナー」というものがあることを、心得ておきましょう。