PE投資失敗パターン:経営改善できないのに金があるだけで買収するのは犯罪行為?

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プライベートエクイティ投資に失敗する原因は、そもそも資金があるだけで経営改善できない買い手に、資金を供給するLP投資家に責任の一端があります。そもそも日本のPE市場は優良案件の数より、それに投資したいファンドの数のほうが多いので、成長ポテンシャルのある会社が、バリューアップ能力のないファンドに買われると、社会の様々な資源が無駄になってしまうのです。つまるところ、他のファンドのほうがバリューアップできる案件には手を出さない事が、社会の全体最適を考えたPE投資家の「広義の規律」だとも言えるでしょう。

経営改善できない企業買収は、資本市場への犯罪行為?

金融で働いて思うのは、お金があるだけで経営改善できないファンドは、資本市場に大迷惑をかけている、ということです。

まず投資される企業にとって、お金は問題ではありません。というのも、大塚家具のように手が付けられない案件でもない限り、大抵コントロールバイアウト案件は複数の買い手がいるので、対象企業にとってはお金の出どころはいくらでもあるわけです。

問題は、買収後の企業をどのように経営改善し、成長させていくかです。多くのファンドは別に経営のプロでもなければ、経営のプロを抱えているわけでもないので、バリューアップの能力を持っていないケースも散見されます。しかし、問題はそのようなファンドが、お金だけは持っているときです。

お金だけは持っているので買収合戦に勝利して高値掴みして、その案件への投資家に損失を与えます。しかし、買収後の会社をろくに経営したり、良い経営チームをリクルートできるわけでもないので、買収先の価値をさらに落としてしまいます。この時、得するのは高値で買ってもらった売り主だけで、買主への投資家および、対象企業のステークホルダーは皆損してしまうのです。

これはさらにビッグピクチャーで考えれば、バリューアップ能力のない”買い手企業”に資金を提供する投資家がいけないわけです。この意味で”市場に貢献するバイアウトファンドを選び育成する”という役割が、LP投資家にはあるのです。