
プライベートエクイティ転職後の仕事内容・業務内容とは具体的にどのようなものなのでしょうか?プライベートエクイティの様々なアセットクラスの種類やPE業界での働き方のポイント、事業承継・カーブアウトといった多様なアングルのディールソーシングや、PE業界でのバリュエーション、ハンズオンの実務、ファンド会計に関する全体像の概観を、長年PE業界で働く、ストロングキャリア講師が解説致します。
プライベートエクイティの仕組みとビジネスモデル
プライベートエクイティは、文字通り私的な株式投資である。
PEの特徴は切り口によって違うが、以下では読者層を鑑みて、PE業界に転職志望するコンサルタントやバンカー、資産運用プロフェッショナルが知るべき特徴を書き綴ろう。
第一の特徴は、公開株のように不特定多数の投資家が公開市場で買うことができないということだ。
公開株はインサイダー情報禁止だが、プライベートエクイティはインサイダー情報の取り合いで戦う。
第二の特徴は、投資時の契約もプライベートな交渉で様々な条項を入れることができるということだ。
だからこそ、同じ対象企業への投資でも、条項次第でリターンやリスクが大きく変わってくる。
第三の特徴は、コミットメントピリオドの驚異的な長さだ。
公開株は1年単位、ヘッジファンドなどは3か月単位で投資家が資金を引き出せるが、プライベートエクイティは一度PEファンドに投資したら、10年間は預けっぱなしである。
そして毎年、マネジメントフィーがたっぷりはいってくる(投資期間中の5年間は2%、それが過ぎれば1.5, 1%などに逓減)。
これが、プライベートエクイティファンドでの仕事が安定的で、実は結構時間に余裕のあるライフスタイルが実現するビジネスモデル上の要因である。
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プライベートエクイティファンドへの投資家とは?
プライベートエクイティ業界には、二種類の人がいる。GP(General Partner)か、LP(Limited Partner)だ。
GPとは皆さんが思い浮かべるカーライルやKKR、アドバンテッジパートナーズやユニゾンキャピタルなどの、PEファームだ。
彼らは企業へ投資するわけだが、その投資資金を誰かから引っ張ってこなければならない。
つまりPEファンドへの投資家が必要なわけだが、そのPEファンドへの投資家をLP投資家と呼ぶ。
LP投資家は主に年金(公的・企業)、国富ファンド、エンダウメント(大学基金など)、ファミリーオフィス、ファンドオブファンズなどである。
プライベートエクイティと個人投資家
では、プライベートエクイティに個人は投資できるのか?
もちろん出来るわけだが、よいPEファンドへの個人投資家のアクセスは、資金規模とネットワークの観点から難しい。
逆に、誰も投資しないような駆け出しの怪しげなPEファンドへは、個人からしか資金調達できないので、「月末までなら特別アロケーションを!」などの怪しげな文句で、たまに皆さんも持ち掛けられることもあるかもしれない。
PEファンドに投資する最低ロットサイズは、ファンドサイズにもよりけりだが、例えば500億のPEファンドであれば、大体25億円くらいが最低限必要なサイズだ。
戦略的理由で、他のビジネス(たとえば今後のファンド投資の際にもっと大きな額が見込めたり、そのLPの名前が入っているだけで信用補強になったり)理由があるなら別だ。
しかし基本的にLP投資家数が増えると、LP投資家基盤が分散化して安定する半面、情報提供などでテイクケアしなければならない投資家が増える(しかも10年を超える長いお付き合い)。
したがって、「変な投資家、タチの悪い投資家の資金は扱いたくない」というのが、「資金調達に困っていない人気GP」の本音である。
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プライベートエクイティの種類を解説
バイアウト投資とは?
プライベートエクイティにも多様な種類がある。
企業の成長ステージや投資規模、投資時に獲得する持分の%などで、ベンチャー、グロース、バイアウト、ディストレスド(スペシャルシチュエーションとも呼ぶ)などがあるが、日本は伝統的にバイアウト市場である(近年はベンチャーキャピタル市場も大きくなってきたが)。
その理由は、✔PE黎明期がバブル崩壊期のBSリストラ期間だったので、大企業カーブアウトが多かったこと、✔コーポレートガバナンス不在の、経営陣に食い物にされている大企業が多いこと、✔コーポレートガバナンスコードの強化で政策的な後押しがあったこと、✔安定志向の強い投資家が多いので、PEの中ではコントロールが効く(経営陣を変えることができる)分、ダウンサイドリスクに対応できること、などなどが挙げられよう。
PE転職志望者様へ:なぜ、いまバイアウトファンドなのか、わかってますか?
ベンチャーキャピタルとの違い
ベンチャーキャピタルもバイアウトも、広義のプライベートエクイティである。
両者の違いは、第一に投資サイズの違い(ベンチャーキャピタルはシードラウンドであれば数千万から1憶、これに対しバイアウトファンドは数十億~数百億、たまに数千億)が挙げられる。
第二に、コントロールの有無の違い(前者はせいぜい10%、後者のバイアウトは過半数から100%、ないし最低でもボードシートを取れるSignificant Minority。結果的にバイアウトであれば投資先の経営に参与できるが、ベンチャーであればお金出したらあとは基本的に、リードインベスターでないかぎり、”見てるだけ“の人)が大きい。
そして第三に、御存じの通り創業期の会社か、既に出来上がっている会社かという企業ステージの違いがある。
投資信託・ヘッジファンドとの違い
プライベートエクイティと投資信託やヘッジファンドの違いだが、これは冒頭で少し触れた通り、第一に非公開株か公開株の違いがある。
第二に、プライベートエクイティは取締役会をコントロールし、経営陣も変えられるが投資信託やヘッジファンドは、株を売るか買うこと(ちなみに上限は15%)しかできない(株主総会や投資家ミーティングで文句を言うことは出来るが、経営陣はそれを聞く義務はない)。
第三に冒頭でも述べたが、コミットメントピリオドの違いが大きい。PEは基本的に10年間、安定的に募集した資金を使える。
これに対し投資信託やヘッジファンドは、四半期の運用成績、契約によっては月次の運用成績で、投資家に資金を引き揚げられてしまう。
逆に言えば、PEファンドは現在運用しているファンドを成功裏に終えて次のファンドレイズをしなければ資金は増えないが、公開株はパフォーマンスがよければそれこそ、四半期、月次でファンドサイズが巨大化するということである。
不動産ファンドとの違い
不動産ファンドでも、プライベートエクイティファンドは存在する。
上記のLP投資家から資金を募り、オフィスやレジデンシャルの物件を買い、再開発して、不動産会社やREIT(近年はREITが大きなエグジット先に)に売却する。
実物資産と利回りの裏付けがあるので、安定リターンを求める年金の資金属性と相性が良く、ワールドクラスのオルタナティブ投資マネジャーの多くが不動産ファンドも運用している。
ちなみに不動産ファンドは実物資産そのものを買うのに対し、バイアウトファンドが不動産投資をするときは、実物資産ではなく、実物資産を開発・運用する不動産デベロッパーや不動産開発・リース会社、また不動産アセットマネジャーに投資する。
(ただ、景気変動の波を受けやすいので、不動産デベロッパーに投資するとエグジットタイミングが悪ければ一気に減損されやすい。)
プライベートエクイティとプリンシパル投資の違いとは?
よく同じような文脈で使われるこの2つの単語であるが、プライベートエクイティファンドは、第三者から資金を集めてGPが投資する形態をとる。
これに対しプリンシパル投資は、金融機関などが自社のバランスシートを使って投資する。
プライベートエクイティのプライマリーとセカンダリー投資の違いとは?
プライベートエクイティのプライマリー投資とは、プライベートエクイティファンドが企業を事業会社や創業社長から買い取ることを指す。
これに対しセカンダリー投資とは二種類ある。
一つ目は、どこかのPEファームが所有している投資先を、他のPEファームが買うこと。たとえば、あきんどスシローはユニゾンキャピタルが保有した後、欧州系大手ファンドのペルミラが買収したのは有名な事例である。(その後ペルミラにより上場を果たす)
二つ目は、PEファンドに対するLP投資家の持ち分を、他のLP投資家に売ることである。 これは例えば、某年金基金がアドバンテッジパートナーズが運用するファンドへのLP持ち分を、他のLP投資家に売ることを指す。
プライベートエクイティファンドでの働き方
プライベートエクイティの業務内容・仕事内容とは?
これまでの解説で明らかになったよう、プライベートエクイティはコミットメントピリオド10年という、息の長いビジネスだ。
PEファームでの本質的な仕事内容を3つに大別すると、✔資金調達し、✔それを投資し、✔それをバリューアップ(そしてファンド期間内に売却)するわけである。
よい投資リターンが無いと資金調達はできないし、資金調達できないと投資もできない。
よって資金調達と投資の両輪をこなせて初めて、一人前のPEプロフェッショナルになれると言えよう。
なおPE業務内容は期間も幅も広いため、到底自分ひとりで全部こなせるようになるビジネスではない。
むしろ、自分が全く知らない業界に投資することも多いため、どれだけ多方面の一流のプロフェッショナルをプロジェクトごとに集め、アウトソースして管理するかが、PEプロフェッショナルの腕の見せ所となるのだ。
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プライベートエクイティ投資では、ディールソーシングが最も大切
上記で説明したプライベートエクイティプロフェッショナルの3つの仕事のうち、最大級に重要なのが、エクスクルーシブ優良案件の発掘である。
よい会社、ないしよくなりうる会社を、オークションで吊り上げられない、相対価格で割安で買ってくる。
これが投資のリターンを決める決定的なファクターであるため、PEファームの力もPEプロフェッショナルの力も、ディールソーシング能力の強さで決まることが多い。
もちろんPE採用時も、投資チームへの応募であれば、優良案件をエクスクルーシブに持ってこれるPEプロフェッショナルに成長しそうかが見られるのは、言うまでもない。
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プライベートエクイティ投資における事業承継
日本のバイアウト投資における案件創出で、最も数が多いのが、この事業承継案件である。
特にスモール・ミッドキャップ領域では、大半が事業承継案件となる。
企業を我が子のように大切に育ててきた中小企業のオーナー社長にとっては、売り先を決めるのは我が子を嫁がせること同様に、思い入れが強い出来事となる。
そして我が子を託せるかどうかで重要なのは、もちろん我が子を「いくらで買ってくれるか」だけではない。
我が子を大きく育て、将来の魅力的な成長の絵を描き、それを実行できる説得力ある体制とトラックレコードを備えている必要がある。
そしてなによりも、「あなたに我が子を任せたい」というチャーミングで信頼できる人柄が、事業承継案件のディールソーシングでは特に重要なのである。
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プライベートエクイティ投資における大企業カーブアウト
事業承継案件と並んでプライベートエクイティのディールアングルで多いのが、コーポレートカーブアウトである。
正確には、スモールキャップは事業承継案件の方が多いのだが、ミッドキャップからラージキャップに領域が移れば、自然とコーポレートカーブアウト案件が多くなってくる。
それこそ時価総額数千億の企業で、どうみてもシナジーの無い複数のビジネスを有している企業が、本業回帰でノンコアビジネスを売るのが一般的なパターンだ。
また経営陣が変わって前任者との違いをアピールするために、新社長が自分はしがらみのないビジネス部門や子会社を売却するとき。
そして期末までに不採算事業閉鎖を完了すべく、やたらと急いで経済合理性を無視して売却に出す時等々、事業会社の子会社カーブアウトは、自分で手塩に育てた子供のような会社ではないため、お付き合いの仕方も変わってくる。
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プライベートエクイティでの投資実行~投資委員会とは?
苦労して案件獲得してきた貴方は、はやる気持ちを抑えきれない。
「これは間違いなく、MOC3倍とIRR25%間違いなしの優良案件だ。おれのトラックレコードにして昇進してパートナーになるか、実績をひっさげてファンドレイズして独立するぞ!」と。。
しかし通常、多くのPEファームは年間、数百件の検討をする。
実際のところは箸にも棒にもかからない瞬殺案件が大半なので、真面目に見るのは20件そこらなのだが、年間に投資を実行するのは実は多くて2~3件である。
そもそも5年の投資期間中にトータル10件くらい投資するのが一般的なバイアウトファンドなので、年間投資実行をするのは大体、2件くらいなのだ。
では、どのような基準で、数ある案件候補の中から、その2件が選ばれるのか?
基本的にはLP投資家がバイアウトファンドに求める、✔3倍のグロスMOCと25%のIRRを期待できる案件かつ、✔投資テーマ/バリューアップテーマが、自社の戦略と一貫性のあるものが選ばれることになる(内情を言ってしまえば、長期間投資できない期間が続くと、LP投資家に文句を言われるので投資委員会で大甘最低のダメ案件が通ったりするのだが)。
この投資委員会がPEプロフェッショナルにとって、社内での自分自身のプレゼン大会になっていることを覚えておこう。
日ごろ案件チームとしかやりとりのない大半の投資チームのメンバーにとって、年に一度の360度評価で一緒に働いたことが無い人からもらう評価は、往々にして「投資委員会での自身の発言」に紐づいていることが多いものなのだ。
プライベートエクイティ転職後の実務・投資委員会編~赤っ恥3大要件はコレだ!
プライベートエクイティ投資のバリュエーションとは?
さて、投資委員会でよく紛糾するのが、バリュエーション水準である。
投資委員会の責任者、つまり代表パートナーは、なぜこの案件に投資したのかをLP投資家に説明しなければならない。
日ごろ「弊社はエクスクルーシブ案件が大半で、8倍がいいとこ、2桁EBITDA倍率は出したことが無いです」とかLP投資家に対して言っておきながら、投資委員会で血気盛んな若手ディレクターが功を急いで「プロジェクション上は毎年30%売り上げが上がる15倍案件」を押し込んでくるとき、Price Disciplineの観点から押し返さなければならないのだ(稀に、16倍で買って、それでも3倍のMOCを出す案件もあるので、一概に言えないのだが。)
ここで、より後先の大局的なことを考えているデキルPEプロフェッショナルは、その案件で出したバリュエーション水準は、未来永劫そのPEファームのトラックレコードとして残り、将来のLP候補に説明しなければならないことをわかっている。
したがって、いくら自分の案件を押し通したくても、LPに説明しにくいバリュエーション水準や投資ストーリーの案件は、投資委員会でごり押ししないものである。
プライベートエクイティ投資失敗3大パターン:バリュエーションが高すぎる局面
プライベートエクイティ投資時のレバレッジドローン水準とは?
プライベートエクイティ投資におけるバリュエーション水準と密接に関係しているのが、LBOローンの水準や条件である。
LBOローンと言えば、一昔前は4倍から5倍(EBITDAの)シニアローンで、それにメザニン1倍でのこりエクイティ、出来上がり8倍水準のバリュエーションが一般的であった。
しかし金融緩和が続き、銀行がローンの貸出先を求めて超アグレッシブに貸すようになると、下手したらシニアで8倍から10倍、実に2桁越えのLBOローンがつくようになってしまった。
おまけにスプレッドは、本来リスキーなローンであるLBOローンに上乗せされる800BPSなどの時代は、今は昔である。
今では200BPSから、あれよあれよという間にリファイナンスで100BPSを切るような条件も出るようになった。
この銀行の貸し出し態度が、PE投資のバリュエーションを、加熱した水準に押し上げる。
これに加え、世界的な低金利と中でも日本の超金融緩和の継続により、(2020年頃まで)バリュエーション高騰の局面が長く続いてきたのである。
プライベートエクイティでの法務の重要性
プライベートエクイティ投資が公開株投資と異なるのは、投資の条件をそれはそれは長大な契約書でデザインすることである。
これは、面倒くさがり屋の人には非常に不利で、ほとんど不可能な仕事だ。
逆に契約書を読み込むことを苦としない、相手に気付かれないようしれっと自分に有利な条項を入れたり、「そんな発生確率が低い時のリスク対策の条項にこだわってどうするのさ!」という、一件起こりそうもなく些末に見えるポイントでも自分に有利に書き込むことにあくなきこだわりを見せられる人は、強い。
ちなみに契約書作成などは、ビジネス判断のところはPEプロフェッショナルが自ら交渉するが、そうでないところはカークランドエリスやリンクレーターズ、長島大野や森濱田などの、実績豊富な弁護士事務所にお願いする。
なおPE投資で一番けちってはいけないのはベストの弁護士を雇う費用だと言われるくらい、経験豊富な弁護士に契約書を作ってもらうことが重要である。
プライベートエクイティのハンズオンとは?
晴れてプライベートエクイティ投資をエクセキューションすることが出来たら、向こう数年間で、投資委員会で議論したバリューアッププランの実行に回ることになる。
ところでバリューアップに関して、✔ハンズオン、つまり手取り足取り自分たちが投資先に入っていって会社を回そうとするタイプと、✔基本的に経営陣を選んだあとは任せて月次の取締役会で、どちらかといえば「ぼーっと」受け身でモニタリングしているだけのファンドもある。
ちなみに意外なことに、ハンズオンアプローチをとっているからと言って、必ずしもリターンが高いわけではない。
それは第一に、PE投資のリターンはそもそも、魅力的なバリュエーションで投資出来ているかどうかが、より重要なことが多いことが挙げられよう。
第二に、有能でフィットの高い経営陣がいれば、逆にその業界素人のPEファンドの介入など、邪魔以外の何物でもない事が挙げられる。
第三に、コンサル上りの人が腕まくりしてMECEアプローチしたところで、「頑張った割に、そこ注力しても意味ないんだよね」というところに時間とリソースをかけすぎて、「ハンズオンバリューアップ」ではなく、「ハンズオンバリュークラッシャー」になっていることも、少なからずあるのだ。
PE転職後、プライベートエクイティバリューアップで重要な「要所の見極め」とは?
プライベートエクイティ転職前に考えたい、バリューアップ/ガバナンス構築パターン
プライベートエクイティ投資先のバリュエーションと会計処理~基本的に時価評価
さて、プライベートエクイティ投資後のポートフォリオ企業に関し、そのバリューアップの経過をどのような頻度で、どのようにLP投資家に報告するのだろうか?
プライベートエクイティでは、投資先のバリュエーションをフェアバリュー(あらかじめLPA=Limited Partners Agreementで定めたバリュエーション方法)で、四半期ごとにLP投資家に開示する必要がある。
昔は投資してからエグジットするまで、MOC=1、つまり「いまのバリュエーションは元本と同じです」という適当な説明がなされていたものである。しかしその後、PE業界のスタンダードとして、時価評価が求められるようになった。
ところで、実際の業績は悪化しているのに割引率を適当な理由でいじったり、比較対象企業をなんだかんだ言って変えてバリュエーションを高めたりと、バリュエーションは「お化粧」が可能である。
よって、四半期ごとに変動するバリュエーションの理由をGPはこねくりまわして作ることがある。
それに対して経験豊富なLP投資家は、「ほんとにそんな理由でバリュエーション変えていいの?」と納得できないときは、社内共有用の独自バリュエーションを行い、社内及び投資家に共有するのである。
プライベートエクイティの仕事は激務か?
これまでプライベートエクイティの仕事内容について解説してきたが、PE転職志望者が関心があるのは、果たしてどのくらい激務なのかということだろう。
特に前職の投資銀行やコンサルティングファームが激務過ぎて、ワークライフバランス向上もPE転職の志望動機の一つである人にとって、間違っても「ブラックPEファーム」に入って、こき使われるわけにはいかない。
もちろんこれをお読みの皆さんは、PEファンドでの仕事が、GSやマッキンゼーの仕事に比べて、比較的楽であることはいろいろな情報源から入手されていることだろう。
しかしながら、ファンドによってはマッキンゼーもびっくりの長時間労働だと聞く。
では実態はどうなのだろうか?
結論を言えば、ズバリ暇である。こう書くと、PEファンドに投資しているLP投資家に睨まれるから、皆“汗水流して馬車馬のように全力で走り続けています”というファイティングポーズを見せるのだが、私が複数のPEファンドで実態を見てきた限り、これは時間的余裕と、自由度が極めて大きいビジネスだ。
より正確に言えば、どれだけ仕事に費やすか、どれだけプライベートに費やすかの選択も自由にできる余地が大きいので、結果さえ出していれば長期間、極めてプライベートタイムが充実した人生を送ることができるだろう。
逆に投資をさせてもファンドレイズをさせても、バリューアップのチームワークをさせてもダメな場合、貴方は容赦なく解雇されることになる。
つまり野球でいうところの打てず、守れず、走れずの3重苦だった場合は、優秀な若者が常にハイレベルなレジュメを大量に送り付けてくる有力ファンドであるほど、まもなく代替されてしまうのは言うまでもない事である。